第15章: 少しだけ、気になる変化

ティアは街の一角で立ち止まり、周囲をキョロキョロと見回していた。その目には焦りが色濃く浮かんでおり、まるで何かを探しているかのようだった。いつもの明るさや元気さが失われ、どこか不安げな様子を見せている。


「カイル!」ティアは急にカイルを呼び、駆け寄った。普段のティアなら、もっとのんびり歩きながら話しかけてくるのに、今日は様子が違う。呼ばれたカイルは驚きつつも、すぐにティアに駆け寄る。


「どうした?」カイルは彼女の様子に気づき、すぐに尋ねた。


「カイル、お願い…ちょっと聞いて!」ティアは息を切らせながら、焦った表情で言葉を紡ぐ。「街で知り合って仲良くしてた子供が病気なんだ。すごく重い病気で、治療が必要なんだけど、どこに行けば治るか全然わからなくて…!」


その言葉を聞いたカイルの表情が一変する。彼女の焦りようと必死な様子に、ただ事ではないことを感じ取った。ティアはまるで自分を責めるように続けた。


「薬屋で聞いてみたけど、薬は手に入らなくて…だから、少し難易度の高いクエストを受けようと思ってるんだけど、どうしてもカイルに手伝って欲しくて!」ティアは荒い息遣いのまま、カイルを見つめた。


「難易度が高いクエストか…。」カイルは少し考えるように頷き、その後すぐに言った。「わかった。お前がそんなに心配しているなら、俺にできることなら何でも手伝う。」


ティアはその言葉に、ホッとした様子で一瞬息を吐く。「本当に?ありがとう、カイル!」彼女の表情には感謝の気持ちが溢れていたが、依然として不安そうな面持ちは消えなかった。


カイルはティアの背中を見守りながら、彼女が何を心配しているのか、少しでもその不安を和らげるために全力を尽くすことを決めた。


二人はギルドで情報を集め、必要なアイテムや材料を揃え、ティアが言っていたクエストを受けることにした。そのクエストは、危険な魔物が潜む場所にある珍しい薬草を採取するもので、難易度は高いが二人なら問題ないだろうとカイルは判断した。


クエストが始まると、ティアはいつも通り前へ前へと突き進んでいく。カイルは彼女の後を追いながら、周囲に注意を払い、冷静にサポートしていく。魔物たちとの戦闘は激しく、何度も危険な状況が訪れたが、二人は息の合った連携で次々と敵を倒していった。


目的の薬草を無事に手に入れた二人は、その足で街へ戻り、すぐに子供のもとへ向かった。ティアは薬草を使い、子供に治療を施す。その薬草の効果で、子供はみるみる元気を取り戻し、顔を明るくした。


「よかった…本当に良かった…!」ティアは涙を浮かべながら、その子を抱きしめた。カイルはそんなティアの姿を見守り、少し微笑んだ。「お前が心配していた子供が回復したんなら、それで十分だ。」


ティアはその言葉に顔を上げ、感謝の気持ちを込めて言った。「ありがとう、カイル。あなたがいなかったら、きっとうまくいかなかった…!」


「俺はただお前をサポートしただけさ。お前が頑張ったからこそ、こうして子供が助かったんだ。」カイルは照れくさそうに言いながら、ティアに微笑みかけた。


二人はその後、子供の回復を喜びながらも、少しの間静かな時間を過ごした。しかし、その夜、ティアの様子に少し違和感を覚えたカイルは、次の日になってようやくティアの変化に気づくこととなる。


翌日、ティアの様子がいつもと違うことに、カイルは気づいた。


普段なら元気に笑っているティアが、今日は少し静かで、どこか元気がないように見える。言動にもいつも以上に慎重さがあり、目を合わせるのを避けることも多くなった。


「おい、どうしたんだ?」カイルは心配そうにティアに声をかけた。「昨日まで元気だったのに、今日はなんか違うぞ?」


ティアは少し驚いたように目を見開き、すぐに明るく笑顔を作ろうとしたが、その笑顔はどこかぎこちない。「な、なんでもないよ!ちょっと疲れてるだけだから大丈夫!」


カイルはそれでも納得できなかった。ティアがこんな風に自分の様子を隠すのは珍しい。いつもならもっと自分をさらけ出すように、元気に振る舞うのがティアの良さだったからだ。


「無理しないで、休んでもいいんだぞ。」カイルは優しく声をかけたが、ティアはすぐに元気な笑顔を見せて答えた。


「ううん、大丈夫!カイルと一緒にいられるから元気だよ!」そう言って、ティアは元気を振り絞るように、カイルに微笑んだ。


その笑顔に、カイルは少し心配しながらも、ティアを支えることを決意した。ティアがどんなに元気で、どんなに頑張っていても、彼女を守るのは自分の役目だということを、改めて感じたのだった。


その日、カイルはティアの様子に注意を払いながらも、いつも通りに二人の冒険を続けることにした。そして、ティアが本当に無理をしていないか、気を使いながら彼女を支えていくことを誓った。

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