ガバガバすぎて魔剣とは思えません!スクラップにしてやろうかしら?

 そうこう考え事をしながら歩いていると……着きました。

 さあ、ご両親と感動の再会ですわね。


 小娘は両親のもとへ駆けていきました。

「うう、よかった、よかったようエリシア」


 ご両親は小娘との再会を涙して喜び、わたくしにこう言いました。


「あなたは命の恩人です。なんとお礼を申し上げていいのか」


 笑顔を添えてお答えします。


「娘さんはよ〜く頑張りました。ご立派な少女でしたわ」と。



 ですが、ああっ、また我慢が……限界っ!ですわ。


 子供から目を離すなネグレクトのくそ親めがっ!

 と、喉から出かかるのを必死でこらえましたのですわ。


 まだ死にたくないっ。


 その後ろに立っていた村長さまが言いました。

「何とお礼を言っていいやら。何か私たちからお返しをさせていただけませんか」

 あらあら、神か仏様でも見るような目で見つめられてしまいました。


 違うのです、誤解なのですわ。

 

 ……私はこれまで富と名声と美貌を使い、悪行のかぎりを尽くしてきた悪役令嬢でございますの!


「見返りなどお求めいたしません。そもそも、わたくしの勝手な都合でおこなったことですの」


 顔で笑って心でキレる。

 財産なら腐るほどありますよ貧民共めがいらぬわ馬鹿たれめがっ!

 軽く見てんじゃねえですよオホホホ!

 っと、わたくしの中のゴーストが囁きました。高笑いを添えて。


 ええ。わたくし、根っからの性悪なのです。

 このような田舎のど底辺共なぞ虫ケラ同然。存在価値など無。

 そう思っておりました。この時は──。


「やれやれですわね」


 そして村を後にしたのでした。

「はあ、なんでわたくしがこんな目に……」


 もったりした動きで路肩の切り株に腰をおろすわたくし。

 鈍い輝きを放つ赤黒い刀身を見ながら、深〜い嘆息をつきました。


 そもそもこのような面倒ごとに駆り出されているのはこの剣の呪縛のせいなのです。ご説明いたしましょう、それはとある舞踏会での出来事でした——。


 

 あれは、生まれながらにして富と名声と美貌全てを手に入れ、完璧なる人生を歩んでいた我が人生の唯一の汚点、大大大失態でございましたわ。

 由緒ある公爵家の生まれであるわたくしは、高貴な者たちが集まる舞踏会に出席していました。それはその余興での出来事でした。


「さあ、皆様ご注目。これが、これこそが! かの有名な魔剣レヴァンタイン。古の終末戦争で魔王を封印したとされる、伝説の宝剣でございます!」


 参加していた貴族達は皆、驚きの声をあげて光輝く剣に見入っておりましたわ。


「それでは本日の余興のご説明です!」


 司会の男は言いました。この剣を抜ける者は世界でただ一人、神の祝福を受けた者のみだと。その資格があるとなれば、これはその者に差し出すのだとも。


 剣は大きな魔石の台座にガッチリと、そして奥深く刺さったままに見えました。

 次々と挑戦するものの、誰が引っ張ってもびくともしません。

 たとえ筋骨隆々の大男であろうと、すっぽ抜ける気配など一切ございませんでしたわ。


 全く、頑固な剣ですこと……。性格を疑います。



「どなたか勇気のある方はおられませんか〜? おやそこの美しい御令嬢、試してみてはいかがでしょう」


 こんな時に良くも悪くも悪目立ちしてしまう、罪なわたくしでした。

 ここで断るのも興が覚めるというもの。そんな野暮なことはいたしませんわ。


「お名前は?」


「カトレア・カトリアーヌでございますわ」


 名前を聞いた貴族達は皆、私の高貴な家柄にざわつきました。


「おお!カトリアーヌ公爵家の、なんと気品に満ちたいで立ちであろうか!」


「なんと美しい青の双眸、宝石のように透き通った瞳とはこのことだ!」


「皆様、ご静粛に。カトリアーヌ家の御令嬢、これはおいそれ致しました。快くお受けいただいたことに感謝の意を」


「良きであります。わたくしめも賑やかな舞台に興じることができ、大変光栄であります故」


 さっそく柄に手をかけます。

 世界に1人など、よもや非力な婦女子ともあろうこのわたくしが。



 ──スポンッ!

 抜けた、抜けちゃいました。あっけなく。



「ぎゃあっ!」


 勢い余ってお立ち台から後ろに転げ落ち、ドスンと尻餅をついてしまうわたくし。


 ……スカートが捲れ上がり、不覚にも乙女の乙女たる場所が丸見えでございました。立派な台の影でなんとか隠れていたものの、司会の男の鼻の下が伸びているのはわかりました。


「黒……ガーターですと!?」


「イヤっ!見ないでくださいまし」


 後でぜってーぶち殺しますわ。拳をグーで握りしめます。


 ——その時、どこからか声がしました。



 【次回、悪役令嬢の転落人生の始まり、かも?】

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