③
「ばぁばは、間違っていたね!」
小さい手で、器用にビーズを動かしてうさぎを作ろうとしているまなちゃんが、突然そんなことを言った。
どうやらアクアビーズとは、”水でくっつくビーズ”という意味らしい。
「間違っていたって、何が?」
僕は慣れない手つきで専用のペンを使ってイラストシートにビーズをのせながら、視線はそのままに聞き返した。
「あのね、ばあばが、ママはお馬鹿さんだから、悪い男の人に捕まってパパと別れたって言ってたの。」
聞き捨てならない言葉にピタっと手を止めると視線をお姫様に向けた。
あいちゃんは僕にコーヒーをいれるために、キッチンに居るから、聞こえてないと思うし、そこは良かった。
「そんなこと言われたの?」
「うん。でもね、ままって、まなのしらないこと、なんでもおしえてくれるんだよ。だから、おばかさんじゃないの。それに、ひろくんはやさしいよ。わるいひとなんかじゃないよ。」
「うん、そうだね。ままは、賢いからね。」
以前、中学生の漢字ドリルを買ってあげようなんて思っていたことは死んでも言えないな。
それより、元義母がそんなことを言っていたとは。
しかもまなちゃんに?
ありえないなあ。
どうせ愛ちゃんのことだから義実家へのツメが甘いことはわかっていた。
実は離婚時に僕が動こうかななんて思っていたのを、さすがに義実家にまで手を下すのはやりすぎかなあと思ってやめていたけど…。
まなちゃんにまで被害が出てるのだから、やっておけば良かったと後悔。
義実家の住所なんてもちろん知っている。
興信所はお金さえ払えばなんだって調べてくれるから。
まあ一応僕は愛ちゃんが離婚した後に恋人になる予定だったことを興信所に伝えていたからだけど。
結婚前に”婚約者の過去の恋愛経歴”を調べることはよくあることみたいだし。
何はともあれあの時、動いといて正解だったな。
「ひろくん、パンダ上手にできたね!すごいね!かわいいね!」
まなちゃんはこんなおじさんが作った作品を褒めてくれた。
無垢で心の綺麗な優しい子だ。
まさに、愛ちゃんが育てた子だ。
元旦那に似ているわけがなかった。
めちゃくちゃ可愛かった。
「宏、ケーキありがとう!コーヒー淹れたから休憩しよ!まなちゃんもジュースあるからね」
「やったあ!」
まなちゃんは作ったうさぎを持ち上げると愛ちゃんに見せに行った。
「まま見て!うさぎできたよ!」
「え?これ、まなちゃんが作ったの!?うそでしょ!?お店で買ったのかと思うくらい上手なんだけど!」
大袈裟に褒める愛ちゃんを自然と目を細めて見てしまう。
褒められて喜んでいるまなちゃんを見るだけで、幼少期の自分が救われたかのような錯覚を起こすのは何故だろう。
微笑ましいはずなのに、心臓を掴まれたように息が止まってしまう。
やっぱり愛ちゃんは、良い母親だなあ…。
汚れ仕事は、代わりに僕が請け負わないと。
*******招待状編終わり*******
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます