第2話
「今日は宇野と弁当食わねえの?」
凌くんは長身で、人当たりの良さそうなやわらかい表情をいつも浮かべているいわゆる優男だ。
凌くんの言葉ではっとしたあたしは慌てて鞄から貴重品と二人分のお弁当箱を取り出した。
「そうだった。行かなきゃ」
「律儀だな。毎日お弁当作ってくるなんて」
「いや、そ、それでほどでもないよ」
謙遜はしてみたものの、毎朝弁当を作るというのは意外と辛い。
前の日の夕食を詰め込んだにしても、冷凍食品に頼らないと時間は結構かかるものである。
自分の苦労を分かってもらえて、じーんときた。
だがしかし、友達の彼氏。
「間保、最近ずっと疲れた顔してんだ」
弥穂ちゃんがあたしのことを凌くんに相談する。
「言われてみれば、確かに」
凌くんが優しい表情をわずかに曇らせた。
「何かあったら俺たち二人にできることあるかもしれねえし、相談しろよ」
彼女でもないあたしにまで優しくしてくれる凌くん。
さらに、その様子を見てもあたしに嫉妬しない男前な弥穂ちゃん。
きっとその二人の間には確かな信頼関係があるからだろう。
あたしの理想のカップルだ。
「ありがとう」
あたしは両手にお弁当をひっつかんで、去り際にお礼を言って教室を飛び出した。
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