第4話 第一の魔眼
眼を開けるとそこは一面に広がる草原だった。
目の前では様々な草や花たちが風で揺れている。見ているだけで体が癒されていくようなのどかな景色が続いている。
また、草原の右奥には街のようなものが見えた。大きな門の向こうに中世ヨーロッパ風の建物が立っているのがわずかに見えた。
太陽がまだかなり低い位置にあることや、町周辺にに人気がないことから考えるとおそらく今は早朝なのだろう。
「すぅーーーーーー。はあーーーーーーー」
俺は両手を広げながら、空気を大きく吸い込むとゆっくりと吐いていく。新鮮な空気がおいしい。体の隅々まで広がっていくようだ。少しだけひんやりとした気温がとても気持ちがいい。
空には青空が広がっている。わずかに浮かんでいる雲も風に流され気持ちよさそうだ。とても清々しい朝だ。
「異世界に来たんだな。俺は……」
新しい世界にやってきたという実感が少しずつ込み上げてくる。心臓の鼓動も普段よりも少しだけ早い。これからの未来を考えると子供のようにワクワクしてしまう。
「よし! 楽しむぞーーーーーーーー」
俺は周りに誰もいないことを確かめてそう叫んだ。
俺は自分の服装を確認する。死んだときと同じスーツを着ている。ネクタイも黒のままだ。
「そりゃいきなり異世界の服装にはならないよな。まとまった金が入ったら新調するか。さすがにずっとスーツじゃ動きづらいよな」
俺は次にポケットに手を突っ込んでみる。出てきたのは二つ折りの財布とスマホ。スマホは事故の衝撃でボロボロに破壊されていて使えなかった。財布を開くと千円札が3枚入っていた。
(そうだ。このお金で少し高級なケーキを買って。母さんの遺影の前に備えようと思っていたんだ……)
4日前に亡くなった母さんのことを思い出すと心がしんみりしてしまう。
(だめだだめだ!! せっかく異世界にこれたんだから、思いっきり楽しまなきゃ。いつまでもしんみりしてたら母さんも悲しむぞ! この異世界で俺はやりたいことを全部やって幸せになるんだ!!)
悲しみに沈みそうになる心を何とか救い上げ、俺は瞳に浮かんだ涙をスーツの袖でぬぐう。
「そうだ! さっそくステータスを確認しよう。たしか神様は言っていたな。「開け」と心の中で呟けば。画面が開いて見られるって。さっそくやってみよう」
(開け!)
心の中でつぶやくと、目の前に水色の画面が浮かんだ。少しだけ透けており画面の後ろの景色も見える。
小学生の低学年の時に友達の家でやったRPGゲームのステータス画面に似ていた。
―――――――――――――――――――――
【ステータス】
【所持能力】
【ガイド】
【その他】
―――――――――――――――――――――
画面には三つの項目が浮かんでいた。昔やったゲームとは異なり、アイテムや装備という項目はなかった。どうやらインベントリのような便利なシステムは無く、自分でしっかりと道具を持ち運ばなければいけない世界のようだ。
俺はさっそくステータスと表示されている部分を指でタッチしてみた。するとすぐに画面に文字と数字が浮かんだ。
―――――――――――――――――――――
基本情報
【氏名】 ミトベ=アオ
【年齢】 20歳
【身長】 169㎝
【体重】 63㎏
【レベル】1
ステータス 能力評価
【体力】 17 F
【攻撃力】 23 F
【防御力】 21 F
【速さ】 26 F
【オーラ量】 100000 AA
―――――――――――――――――――――
「へー、ステータス画面を開くとこんな風に情報が出るのか。まだレベルが1だからどのステータスも低いんだろうな。ってあれ? オーラ量だけなんかすごく多くないか? どれくらいが平均とかもまだ全く分からないけど……。10万って」
ステータスを上から順に見ていたら、オーラ量の多さが俺は気になった。
この能力評価という項目が能力の強さを現わしているのであれば、俺のオーラ量はかなり高いことになるな。AAランクって大体結構上の方だよな。
「あれ? 神様がくれたチート魔眼ってステータス画面には載っていないのか」
俺は、ステータス画面から一つ戻った。すると【所持能力】という欄が目に入った。
「ここか。いったいどんな能力なんだろうな。頼むぞ神様。チート魔眼の名にふさわしい奴をください!」
心をワクワクさせながらも俺は恐る恐る【所持能力】と書かれた表示をタッチした。
すると、瞬時に表示は切り替わり、新しい画面が浮かんだ。そこにはこう書かれていた。
――――――――――――――――――――
【能力名】 神の魔眼
第一魔眼 【転移眼】
行ったことがある場所。見えている場所に転移することができる。1mにつきオーラを1消費する。建物の中や密閉空間であっても転移することができる。
――――――――――――――――――――
「おお!! この転移眼ってやつはたぶん瞬間移動のことだな!! すげぇ!! 瞬間移動があればいろいろな技ができるぞ!! 普段使いにも便利だし。まさしくチート能力だな!! これやっばいだろ!! 神様ぁぁああーーーーーーーーーーーありがとうございまあああああああああああああす!!」
転移能力を手に入れた瞬間、俺はあまりの嬉しさに叫んでしまう。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!! 瞬間移動だ!! やったぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
俺は興奮を抑えきれずろくに説明を見ないまま叫び続ける。草原に倒れむと、しばらくの間奇声を発しながら右へ左へ転がり続けた。
「はぁはぁ。さっそく使ってみるか。いや、まだ説明を全部読んでいなかったな。なになに……」
喜び過ぎたためか少し息が切れてしまった。ただの一般人だった俺が突然、瞬間移動なんて能力を手に入れたのだ。めちゃくちゃ喜んでしまうのも無理はないだろう。
「えっ? 1m移動するのにたった1のオーラ消費でいいの? 今の俺のオーラ量が10万だから100㎞も移動できるじゃん!! コスパ良すぎだろ! すげえぇぇぇ!!!」
(さっそく使ってみるか……。んっ?)
【所持能力】画面を閉じようとしていると、転移眼の説明が書かれている文章の下にまだページが続いていることが分かった。俺が表示画面を下にスクロールしていくと信じられない文章が目に飛び込んできた。
―――――――――――――――――――――
【能力名】 神の魔眼
第一魔眼 【転移眼】
行ったことがある場所。見えている場所に転移することができる。 1mにつきオーラを1消費する。建物の中や密閉空間であっても転移することができる。
第二魔眼 【???】 8レベルで開放
第三魔眼 【???】 16レベルで開放
第四魔眼 【???】 24レベルで開放
第五魔眼 【???】 32レベルで開放
第六魔眼 【???】 40レベルで開放
第七魔眼 【???】 48レベルで開放
第八魔眼 【???】 56レベルで開放
第九魔眼 【???】 64レベルで開放
第十魔眼 【???】 72レベルで開放
―――――――――――――――――――――
「……………………………………………………………………………えっ?」
驚きのあまりすぐには声が出なかった。確かに神様は能力は一つではないと言っていた。でも、まさか10種類もあるとは思わなかった。
「神様ぁあああああああああああ。あんた天才だよ!!! あなたこそ最高の男だよ!!! イケおじっ!! いや、イケ神だよ、イケ神っ!! イケ神様っ!! 本当にありがとうございまぁぁぁぁぁす!!!!」
嬉しすぎてどんなにお礼を言っても言い足りない。今すぐ神様の元に戻って思いきり抱きしめたいほどだった。俺は、神様に向かって角度90度の完璧なお辞儀をした。きっと見ていてくれることだろう。
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