エデンの園
中は柔らかな光で満ちた大きな広間。そこにキューブ型の個室が並んでいる。
「磯鴫すずめさんは、こちらの507号室へどうぞ。磯鴫つぐみさんはお隣の508号室です。部屋の鍵は生体認証になっておりますのでドアにタッチしていただけば開閉いたします」
それぞれ自分の個室に入り、用意された部屋着に着替えてベッドに横になる。貴重品や着替えはナンバーロック式のロッカーに入れたから安心だ。
「ご準備は宜しいでしょうか?」
案内ロボットの声に「OK」と答えると頭部分にドーム状の覆いが降りて来た。といっても密閉ではなく、側面は大きく開いているし覆いの部分にも十分な空間がある。ベッドは横たわる人間の体型をスキャンし、心拍、血圧、血中酸素濃度なども計測、その上で硬度や角度を自動調節、最もリラックスできる環境を提供してくれる。
頭部分を覆うドームは大きなモニターになっていて視界のほぼ全てを占めている。その画面に先ほどの案内ロボットが現れ、隣の部屋のつぐみも交えた3者でビデオチャットによる最終確認となる。
「磯鴫すずめさん、つぐみさん共に、旅行中にヘアカットをご希望でしたね。加えてすずめさんはカラーリングとネイルケア。つぐみさんは歯のメンテナンスをご希望との事で間違いありませんでしょうか?」
「はい」
「はーい」
「ありがとうございます。では、仕上がりイメージをご確認下さい。只今モニターに映っているイメージと相違ありませんか? 」
「ええ。これでお願いします」
「はーい。旅行中にヘアカットや歯のお掃除まで出来ちゃうなんて最高!」
このシステムでの旅行が初めてという事もあって、つぐみのテンションは高い。
「お身体の様子は24時間記録されていますのでスマホからいつでもご覧になれます。では、良いご旅行を!」
モニターには「エデンの園って、こういう場所かも」と思わせるような景色が映し出されている。
森林と澄んだ泉。泉に注ぐ小さな滝は木洩れ日にキラキラ輝き、ハーブの音色が心に響く。滝の水音。さざ波。そよ風。
私達は眠りについた。
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