第二十話 戦闘態勢
今日はMeTubeの動画撮影日。撮影場所は僕の家。この日はバッサーが見学に来る日だ。
「バッサーって人、いつ来るの?」
霞はまだバッサーに会ったことがない。だからどんな人が来るのかわからないのだ。
「もう少しで来るよ」
そういった矢先、突然玄関の扉が開いた。
「え、なんか勝手に入ってきた!?戸締りしてなかった?」
と言い、ビビりながらも戦闘態勢に入る霞。
僕はこの時、バッサーが合鍵を使って入ってきたとわかったが、霞は僕がバッサーに合鍵を渡しているなんてことを知らないので、泥棒が入ってきたと勘違いしているようだ。
廊下を歩いてくる足音が聞こえる。僕はのほほんとしてるが、霞は怪訝な面持ちで〝その時”を待っている。僕は霞と僕の温度差に、笑いを堪えるので精一杯になっていた。そして僕はスマホを取り出し、録画ボタンを押した。
部屋の扉が開かれた。そしてちょうどバッサーが部屋に入った瞬間、戦闘態勢に入っていた霞がバッサーへ渾身の右ストレートをかました。しかしバッサーはベストな瞬間を撮影するカメラマン特有の反射神経で、右ストレートを舞うようにひらりと避けた。避けられた霞はすかさず左ボディーブローを決めにいく。バッサーは扉を盾のようにして、自分の身を隠した。結果的に扉を殴ってしまった霞はとても痛そうにしていた。傍観していた僕は流石にまずいと思ったので、レフェリーストップをかけた。
「2人とも落ち着け!」
僕は2人を落ち着かせ、椅子に座らせた。そして霞が退治しようと思っていた人がバッサーであること、霞は普段好戦的ではないことを2人に伝えた。
「あなたがバッサーだったのね。ごめんなさい泥棒だと思ってしまって」
「そうだったんですね。だから右ストレートが飛んできたのか」
よかったなんとか仲直りしたようだ、と僕が勝手に安堵していると突然バッサーがこんなことを言ってきた。
「そもそもこの出来事が起きたのって馨のせいじゃない?」
僕は納得がいかないのでは?と返した。
「いやいや、だって事前に萩利さんにこの人がバッサーだよって言ってくれれば、萩利さんが戦闘態勢に入ることなかったんだよ?しかも呑気にゲラゲラ笑いながら、動画撮ってたじゃねぇか」
あっ確かに。
「まあ結果オーライだし良くない?」
僕がそういった瞬間、目の前に二つの拳が飛んできた。その後の記憶はない。
気がつけばそこは自宅の天井だ。よくわからない。周りの音もよく聞こえない。そういえば霞の右ストレートからの左ボディーブローの流れ綺麗だったなぁ。将来は男装モデルから、ボクサーに転校するのかな。
「あ、バッサーさん!馨の目覚めました!」
「じゃあ動画撮るか」
まだ頭がぼーっとしていてよくわからないが、2人が動画について話している。
「馨さ〜ん。わかりますか〜?あなたは私たちに殴られて気絶していたんですよ」
その言葉を聞いた瞬間、曇っていた視界がパッと晴れ、頭の中がスッキリとした。そのおかげですっかり忘れていたことを思い出した
「ちょい、霞!」
「何?そんな面食らったような顔して」
「僕の活動、姉にバレたかもしれない」
「え?」
僕の言葉を聞いて、2人は固まってしまった。
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