第十六話 編集は奥が深い

なんとかMeTube1本目となる、自己紹介動画の撮影を終えた。あとは編集をするだけだ。ちなみに僕は中学生の頃、学年が一つ上がる時に、担任の先生にお別れムービーを作っていたので、編集作業は少し自信がある。

「編集どうする?」

と僕はいうと、霞は自分のリュックをガサガサし始めた。そしてノートパソコンを取り出し、ドヤ顔をしながら僕の前に立った。僕の頭の上に疑問符が浮かんだ。

「?」

と僕は顔で訴えるが、霞は察せと言わんばかりにまゆをくいっとあげ拳を胸に当てている。

「進撃の大臣?」

某アニメの、自分の思いを捧げるシーンのモノマネかと思ったが、首を振るので違うようだ。

「あ、私に任せとけってこと?」

「そう!私に編集は任せて!」

「編集は奥深いぞ」

「なんとかなるって」

かなり自信満々だな。ということで編集はかすみに任せることにした。


〜30分後〜

「やばい。難しすぎる!このままじゃクソみたいな動画が出来上がってしまう」

霞は少し困ったような、焦ったような顔をして、僕に助けを求めてきた。

「ちょっと私にはよくわからない。馨、ちょっと見てくれん?」

「わかった」

僕は霞作の動画を見た。

見終わると

「どう?」

と霞は少し不安そうな顔をした。先程までの自信は何処へやら。

「まあ、率直な感想はごちゃごちゃしすぎて、よくわからないって感じかな。少し編集が雑というか」

「どのあたりが?」

「いくつかある。まず1つ目。動画のカットが荒い。なんか切りすぎているというか、少しの間とか大事な間も全部切っちゃってるから、ブツブツしすぎてよくわからない。もう1つは字幕の付け方。ここ字幕必要だろってとこに字幕がなくて、ここ必要ないだろってところに字幕がある。あと字幕の感じが小学生が作ったプレゼンみたいな色と配置になってるから、ちょっとダサさが垣間見えてる。あとSE(効果音)が多すぎる。もうちょっと減らしてもいいかも」

あ、いかん。言いすぎた。プロでもないのに指摘しすぎだ。ダサいとか言っちゃったし。

「なるほど。参考にさせていただきます」

少し声が暗くなっていた。

やってしまったぁ。

「ごめん言いすぎた。ほんとごめん」

「いいよ気にしてないから」

それ気にしてるやつですやん。

そこから1時間霞はパソコンと向き合っていた。僕も自分のパソコンと向き合い編集をしてみる。しかし腕がかなり鈍っていて、少しの編集も手こずっていた。SEとか専門用語使ってイキった自分が恥ずかしくなってきた。


〜さらに30分後〜

「馨、これでどうだ?」

霞は僕に動画を見せた。

すると先ほどの動画からは信じられないほどの成長を、僕に見せつけてきた。間の取り方、BGM、SE、字幕、全てが良くなっている。とても見やすい。

「すごく見やすくなってる」

僕はこの信じられない成長を前に感動した。

「とりあえず、今の私の集大成って感じかな?」

そういう霞の顔はドヤっていた。集大成ってこれが初めてなのでは?まあそんなことはさておき、かなりクオリティが高くなって、小学生感が消えている。やはり人は成長するんだ。変なプライドを捨てて、アドバイスを参考にし、それを自分の技として磨きあげる。そこが霞のすごいところなんだと思った。

「やっぱり編集は奥が深いな」

「霞もわかったか?」

「なんとなくね」

編集の奥深さを知ってもらえて、編集のプロでもないのに、なんか嬉しくなった。

「この動画で行こう」

「そうしよう!」

あとは投稿まで。と思ったが、井川社長やその他偉い人に見せてからじゃないと投稿できない。果たして酷評されるのか、それともスタンディングオベーション並みに褒め称えてくれるのか。それはまだわからない。

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