英雄譚の終わる日、戦鬼は風に消えた

近衛真魚

第1話 それぞれの出会い

英雄ラグナの冒険譚 ― それぞれの出会い

英雄と呼ばれるまでの道程は、孤独なものだった。

だが、彼は一人ではなかった。

血と泥にまみれた戦場の中で、あるいは運命の交差点で、彼はかけがえのない仲間たちと出会った。


1. 聖女アリシアとの出会い ― 戦場に降る光

ラグナが16歳のとき、王国軍と異民族の連合軍との激戦に巻き込まれた。

名もなき傭兵として戦う彼は、仲間を失い、深手を負いながらも剣を振るい続けていた。


戦場は死と絶望に満ち、負傷者の呻き声が響く。

しかし、その中にあって、一筋の光が降りた。


白き衣を纏った少女が、兵士たちの間を歩きながら癒しを施していたのだ。


「…もう、大丈夫です。あなたは、まだ生きていける」


透き通るような翠の瞳を持つ少女――アリシア・フォン・ブレイウッド。

彼女の手が触れた瞬間、ラグナの傷が驚くほどの速さで塞がっていった。


「……聖女、なのか?」


「はい。でも、今はただの癒し手です」


彼女の笑顔は、戦場の中ではあまりにも場違いで、そして――救いだった。


その日、ラグナは初めて「守りたい」と思った。

自分の命をつなぎとめた少女を、戦場の闇から守り抜こうと心に誓った。


2. 魔導士リサとの出会い ― 孤独な天才

ラグナが旅の途中で訪れた小さな村。

そこでは、「魔女狩り」が行われていた。


村人たちが、ひとりの少女を杭に縛りつけ、火を放とうとしていた。

彼女は銀髪に紫の瞳――「呪われた証」とされる特徴を持っていた。


「魔族の血を引く呪われた娘だ!王国に災厄をもたらす!」


ラグナは剣を抜いた。

何のためらいもなく、彼は村人たちを制して少女を助けた。


「助けてくれるの?理由は?」


煙の中で、彼女は強がるように笑った。


「うるさい。理由なんて要らない」


「……ふうん。バカみたい。でも、ま、いいか」


彼女――リサ・ノルンフォートは、村を離れた後もラグナの後をついてきた。

「どうせ暇だから」と言いながら、彼女はラグナと共に旅をすることを選んだ。


「勘違いしないで。私は別に、あんたを認めたわけじゃないんだから」


強がりながらも、その旅の中で、彼女は少しずつ心を開いていくことになる。


3. レンジャー スレイとの出会い ― 死の境からの救済

ある夜、ラグナたちが戦場跡を通りかかったとき、荒野に一人の男が倒れていた。

彼の体は傷だらけで、意識は朦朧としていた。


「……へえ、命の恩人が、こんなガキとはな……」


助けられた男は、スレイと名乗った。

もとは傭兵団に所属していたが、敗戦で仲間を失い、瀕死の状態で放置されていたらしい。


「死んでてもおかしくなかったな」


「だろうな。けど、そう簡単にくたばる気はねえよ」


軽口を叩きながらも、彼はラグナたちと共に旅をすることを選ぶ。

「気が向いたら離れるさ」と言いながら、その後も彼は彼らのそばに居続けた。


そして彼は、仲間たちの兄貴分となり、時に冷静な観察眼で彼らを導く役目を担っていくことになる。


4. 戦鬼との出会い ― 影に生きる者

それは、とある戦場での出来事だった。

ラグナたちは絶望的な戦いの中にいた。


敵の奇襲により、味方は次々と倒れ、もはやこれまでかと思われたその時――


漆黒の鎧を纏う男が、戦場に現れた。


「……ここより先に進むな」


その声は冷たく、響くようだった。

剣が閃き、盾が敵の攻撃を弾き、圧倒的な力で敵を屠っていく。


その姿は、まさに"鬼"だった。


戦いが終わり、ラグナが彼に名を尋ねた。


「……俺に名はない」


「だったら、何と呼べばいい?」


しばしの沈黙の後――彼は、静かに答えた。


「戦鬼でいい」


そうして、戦場の亡霊のような存在は、ラグナの旅に加わることとなった。


終わりなき旅の始まり

彼らの出会いは、決して幸福なものばかりではなかった。

戦いの中で、傷を負い、孤独を知り、それでも彼らは共に歩み続けた。


「英雄」などと呼ばれることを望んではいなかった。

だが、彼は剣を握り、仲間と共に前へ進む。


それが、ラグナ・リンウッドの"冒険譚"の始まりだった。


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