ボクと彼

なかひと

ボクと彼

 ボクの好きな人はなんでもできる。成績優秀だし、スポーツも万能だ。

 でも、まだ片思い。ボクは凡人だ。成績も悪くはないけど中間だし、スポーツに至ってはからっきしダメだ。そんなボクが彼を好きになるなんて・・・。資格がない。同じ教室なだけで、十分だった。

 だったのだけど・・・。

 

 数時間前、体育の授業があり、更衣室で体操着に着替えていると、ふと彼の姿が視界に入った。とてもスタイルがいい。筋肉もほどよくついており、ボクは着替えている途中なのに、彼に見とれてしまった。その時、バチッとボクと彼の視線が合ってしまった!素早く目を逸らすボク。しかし、彼はボクに近づいてきて彼の影がボクの影と重なる。

「なーに、見てるんだよ。」

 怒られてしまった。

「ご、ごめんなさいっ!あ、あの、その・・・。」

「別に怒ってるわけじゃない。今日の体育、ダンスだろ?一緒にやらね?」

「え!」

「嫌か?・・・うーん、それなら別を当たってみるか・・・。」

「や、やるよ!!ボク、君と一緒にやる!」

 かなり食い気味に言ってしまって思わず赤面する。

「お。さんきゅーな。じゃあ、着替え終わったら、一緒の場所に座って先生の話聞こうぜ。」

 これがボクと彼の初の会話だった。


 そして今に至る。

 放課後、一人で帰ろうとすると、彼が話かけてきた。

「おーい!一緒に帰ろうぜ!」

「え!?」

 い、いつの間にボ、ボクとそんな親しくなったの?ねえ、神様教えてください!嬉しすぎて背中から羽が生えて、飛んでいってしまいそうです!

「オレら、ダンス仲間じゃん!今日はツレが用事あってさ、一緒に帰るヤツいなくて。」

 ”ツレ”。その言葉に、すこし胸がシクシクする。でも、誘ってくれるだけでも嬉しいので、その胸の痛みも、すぐに無くなった。

 そして、ボクはこう答えた。

「よ、よろしくお願いします・・・。」

「あはは!改まって何それ!よし!行こうぜ!」

 それから、ボクと彼ふたりでファストフード店に入って、お喋りしながら食事をした。まるでデートで、ボクは益々彼のことを好きになる。でも、彼はボクのことどう思ってるんだろう。

 そんなことを思ってふと窓の外を見てみると、雲行きが怪しい。

「やべ!オレ、今日午後から家に一人なんだった!洗濯物干しっぱなしだ!雨が降る前に帰ろうぜ!」

 すると、ボクの手を握って引っ張るようにしてお店を後にした。

 そのまま彼は走っていく。

 ボクはドキドキが止まらない。

「あー、これはまずいかな。布団も干してるんだよな。」

 空模様を見ながら彼が言う。

「雨いつ降るかわからないから、オレの家一緒に行ってもらってもいいか?お前んちも一人か?」

「ううん、お母さんがいるからボクのところは大丈夫だよ。」

 手を握られつつも動揺を隠しながら応えるボク。

「そっか。なら行こうぜ!」


 そんなわけで、彼の家に着いた。とても今風のオシャレな一軒家だった。流石に、もう手は離れていた。彼は鍵を開け、中に入る。入れよ、という言葉に甘えて、お邪魔します、と言いながら靴を脱ぎ、玄関を上がる。

「それにしても、はああああ。間に合った。雨まだ大丈夫そうだな。今のうちに取り込もう。」

「ボクも手伝うよ。」

「さんきゅー!あのさ、布団、親のダブルの布団干してあるんだよね、大きいから手伝ってくんない?」

「ボクは構わないけど・・・。」

「助かる!端っこ持ってくれ。」

 そして、お互い布団の端を持ちながら、よいしょ!と一緒に布団を部屋の中へ入れる。すると、ドジなボクは、干した布団を床に置いたと同時に、布団に躓いてしまって、布団の上に乗っかる形になってしまった!それを見た彼は笑った後、ボクの上に被さってきた。

「ドジだな、お前。」

 と言いながら、ボクの髪をかきあげてくる。

 赤面しながらボクは、ご、ごめんなさい、と言う。

「そんなところが可愛いけどな。」

「え・・・。」

 突然、彼の顔が真剣になる。ただならぬ様子にボクは息をのむ。

「なあ、男が男を好きになるって変か?」

「え。」

「あはは!そうだよな!変だよな!今のは忘れてくれ!」

 笑って誤魔化す彼。

「そ、そんなことない!ボ、ボクだってその・・・その・・・!」

 次の言葉がなかなか出てこないところに彼が言う。

「もしかして、オレのこと、好き・・・?」

 顔がどんどん近くなる。ボクの答えも聞かず、彼はボクにキスをしてきた。それを許したボクがその答えだ。


 その出来事があったあと、ボクと彼はいつでも一緒にいることになった。

 ボクの学校生活はとても楽しいものとなっていくのだった。

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