青年期 第十五話 本日嵐ノチ天気晴朗ナレ共波高シ

永仁6年 (1297) 8月 足利氏行


夜と見まがうような暗く激しい荒波にもまれながら船団は尾張、伊勢の沖に沿いながら進んでいた。


「そろそろ伊勢から出るぞ」


「どれくらいはぐれた?」


「思ったよりは多くない、精々3隻くらいだ」


「そうか、でも60人減ったのは痛いな」


利一水軍は小早船という小型船を主力としており、乗員20名での運用をしている、その数46隻、それとそれよりも大きい関船を乗員80名で指揮船として一隻所有している。


この数は決して少なくはないが総勢47隻、乗員約千名、ただし三隻嵐の中ではぐれた。


「谷行のおっちゃんはこのまま船団の指揮を執ってくれ、守時は偵察を任せる、波行は俺についてこい甲板に行く」


桑名谷行、桑名郡で海運をしていたおっちゃん、最初に海賊狩りをしたときに船を貸してもらった人、それ以降経験豊富なおっちゃんに船団をまとめてもらっている。


甲板に出ると依然として空は暗く、ザーザーと滝のように降る雨に打たれながら、南西の方角をじっと見つめた。


「さぁ、始めるか」


貞行は声を張り上げる


「やぁやぁ、音にこそ聞け、近くば寄って目にも見よ!我こそは、一色公深の長男であり、足利貞氏の養子、足利貞行なりぃ!お前ら、腹の底から声上げろおぉぉぉぉぉ!」


太鼓の音と〘〘おぉぉぉ!〙〙というこの数か月で海の男となった者たちの声が雨の音を切り裂かんとするほどの轟音が響き渡る。


「お前らぁ、今回は俺らは海賊の拠点を襲う、奴らはいつも人から奪ってばかりのカスどもだ、だがこれから奴らは全てを奪われる、俺らの手によってだ!」


〘〘おぉぉぉ!〙〙とさっきよりも憎しみが籠った声が響く


「お前らは何を欲しここに来た!

あいつらが何を持っているか私は知らないし、興味はない!

諸君らは後数刻おれの命令に耐えれば諸君らは自分が欲するものを手にしているだろう!それは奇跡でも何でもない!だ!私は今一つ願う!

嵐よ去れ!」


それは奇跡としか呼ぶことでしか、形容することは難しいだろう。

まるでモーセの海割り、キリストの肉体的復活とその場にいた者たちの中では同じようなものであったろう。


それまで暗い暗い黒に覆われていた空が隙間から光が荒波を照らしはじめ、ゆっくりとだが着実に黒い雲の面積が減っていき、ついにはちょうど真上にキラキラと光る太陽があった。


もともとの士気が高い集団ではあったのだが、所詮は烏合の衆、数日間嵐の中で雨風にさらされて平気でいれるはずもなく、実は空元気で声を上げていたのだ。しかし、この奇跡はそんな鬱屈とした心情を嵐とともに吹き飛ばした。


「敵は志摩国地頭十三衆だ、我々こそが海の覇者だ!」


その声とともに、船団は志摩の入り江に突入する。


敵は完全に気を抜いており、奇襲を仕掛ける。


「船に矢を放て、奴らに船を動かせるな!」


敵は弓に当たりバッタバッタと倒れていく。うちの連中は弓の達人たちに教育されているから、武家に比べれば弱いがそこら辺の雑魚どもとは話にならない。


「海賊の襲撃だぁ」と叫ぶ奴に内心「お前のことだろ」と思いながら、そいつの頭を射抜く。


船団は上陸し始めて、海賊の屋敷へと入っていく、しばらくして、関船も港に寄せて降り、屋敷の中に入ると、屋敷の主らしき人物が捕縛されていた。


脂ぎった汚い髪にここからでも匂うほどの酒の匂い、歳特有のものかはわからないが、でっぷりと太った体、如何にも悪いことをしていますみたいなやつがそこにはいた。


「まっ待ってくれ、俺らは海賊じゃない、俺らは海ノ神様が支配する海、海上を通行する人は捧げ物をする必要があって、それを取り立てる役目がおいらたちなんだよ、嘘じゃないよ」


あまりにも意味不明な発言に理解できなかった。


「その捧げものをお前らはどうやって神様に渡してるんだ?」


「そっそれは、年に一度神様に奉納する祭りがあって、そこでちゃんとやっているんだ。」


プツンッ


「人から奪ったもので祭りとは、たいそうな頭をお持ちなようで」


「それほどでも」


汚いおっさんが照れていた。


「よし、切れ」


そういって、関船へと踵を返し、三歩ほど進んだところで一言命令を出す。


「ここからめぼしいもの奪った後は屋敷は焼け」


「「「はっ」」」


「まっ待ってく…」


ザシュッ、、、コトンっ


「後十二個か早くしないとな(ボソッ)」


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こんにちは梟町です。

今回は海賊退治のお話でしたね。

まだまだ話は続くのでお楽しみに。


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