恋する香水はその手に想い人を手繰り寄せられるのか〜あなたはとりあえず落ち着いてほしい、焦れば焦るほど自爆していくから〜
リーシャ
第1話恋をテーマに香水を
恋をテーマにしている香水を作り始めた時は、そのネーミングの良さに自画自賛していた。
しかし、噂が噂を呼び、なぜか「恋を叶える」香水という触れ込みに変貌していたのはびっくりしたものだ。
誇大広告過ぎる。
あまりにも、言い過ぎ、過言にも程がある。
その噂を楽しげに言いに来る男は王都で同じく薬屋をしている者で、辺境の地へわざわざ来ていた。
知れば王宮で働けるほどの力を持っている。
有り余る魔力を使い、こんな田舎にせっせと通ってきているのは多分自分しか友達が居ないからであろう。
可哀想だし、ロアマリヤも友達だと思っているのでなにも言わないけど。
「どう思う」
「どうもこうも、酷いような、酷くないような?」
男に聞かれたが、あまりロアマリヤに関係のない話な気がする。
勝手に一人歩きしているだけだ。
この辺境では、遠すぎて遠い国のお話レベルだ。
「お前の香水でボロ儲けできるチャンスだ。というわけで。くれ」
「買ってくれるんならいいよ。お金落とすのならなんでもね」
次のテーマは小さな恋だ。
他のものも作りたくて、すでに制作の終わった香水のことに割く時間はない。
「ただの甘ったるい香水なんだろ?なにがそんなにあいつらに流行った?」
「うーん。多分香水を買った時についてくるメッセージカードがなにか関係してるのかも」
「メッセージカード?」
メッセージカードには、ラッキーカラーとか、恋に関するエピソード。
恋は云々の文章が添付しているのだ。
彼は話を聞くと、そんなものあったか?と言うので、あったんだよと言う。
占いも商売には密接に関わっている。
そういった意味では、香水に付加価値がついてしまったのだろう。
なにかあったとて、値をあげる真似もするつもりはない。
とにかく己はなにか作りたいだけなので、お金などにはあまり頓着しなかった。
あれは、お前が考えたのかと聞かれた。
「え?当たり前じゃん。この店は私だけしか居ないし」
「それにしては恋心に詳しすぎないか?」
「あー……ま、コツがあるの、コツが」
誤魔化しが下手だけど、言えることはないんでね。
無作法に、顔を横に向ける。
ナグレスはムスッとした顔で、また聞こうとする。
「もう、聞かないでってば。女には秘密にしたいものが一個や百個はあるんだから」
「お前にそんなものがあるのか?」
顔を近づけてくるナグレスは、グイッとこちらへ寄ることに、ビクッとなる。
「たく!もう、邪魔っ」
ロアマリヤは男の顔を魔法のスティックで当てて、遠ざける。
「やめろ、おれの顔に跡が付くだろうが」
「つけばいいんじゃない?それより、さっさと香水買っていって、帰れば」
ロアマリヤは香水を用意して、彼へ押し付ける。
押し付けられたものを手にして、男はそこから動こうとしない。
「なぁ。聞きたいことがあるんだが」
「ん?」
ナグレスは手に香水を持ったまま、椅子を出して勝手に座る。
いや、帰って欲しすぎて座らないで欲しいんだけど。
ロアマリヤは帰って欲しいという顔を浮かべているにも関わらず、全く動じない鋼のメンタルの持ち主。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます