穏やかな愛情の裏に見え隠れする不穏さが心を揺さぶる続きが待ち遠しい物語

國治さんと嘉火さんの穏やかな日常に、ほんわかした気分になりました。それでいて随所に見え隠れする不穏な空気。國治さんの兄や義姉に纏わる過去、嘉火さんとの馴れ初めなど、あえて語られない部分にぐっと引き込まれました。特に、國治さんが何かに怯えるように嘉火さんの姿を探すシーン、彼の過去に何があったのかと想像を掻き立てられます。

嘉火さんが猫に怯えながらも、どこか慈しんでしまう姿も非常に可愛らしく、そりゃあ國治もここまで惚れ込むだろうなと納得する魅力がありました。最高。「猫に悪口を言われている」と真剣に悩む嘉火さんの純粋さに胸が高鳴り、國治が猫をいじめていると勘違いするシーンは、もうニヤニヤが止まりませんでした。

物語が進むにつれて少しずつ顔を覗かせる不穏さと、それを包み込むようなふたりの日常が絶妙で、ずっと眺めていたいと思ってしまいます。國治さんと嘉火さんには、ぜひとも末永く幸せになってほしい。けれど、過去の影が静かに追っているようで、不安と期待が入り混じってしまいます。

馴れ初めも國治さんの兄や義姉のこと、飛永という名字から別作品の主人公との関係など、もっともっと知りたくなる、続きを心待ちにしてしまう素敵な作品です。

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淙淙惧れよ