第5話

別に焼け木杭に火がついたわけではない。


可愛さで仕事をとっていた美希は25歳を過ぎた頃から仕事が激減し、可愛い顔立ちに見合わない豊満な体つきを狙われAVへの転身を囁かれていた。


浮気して俺を捨てた女だ。

もちろん俺は復縁を迫る彼女を拒絶し続けた。


でも「あなたがモデルになればと言ったんじゃない」と言う美希に罪悪感がわいた。



幼馴染としての情もあった。




冷静に考えれるようになった今なら安いヒロイズムに酔っていたのだと分かる。


モデルになろうというキッカケは俺が与えたかもしれないが、モデルを夢や進路として選択したのは美希で、美希は選択の失敗を俺に押しつけただけ。


でもそれに気づかないヒーロー気取りの馬鹿な俺は「強いから大丈夫」だなんて残酷な言葉を美雨に投げつけた。



俺と別れたあとの美雨がボロボロになって苦しんでいたことを、彼女が渡仏して暫くして共通の知人から知った。


――― お前、カメラマンなのにな。


見る目がないと言外で言う彼の言葉はぐさりと刺さった。

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