第9.0章:黄色と緑の対話
第9章:黄色と緑の対話
ショウテデニィの繁殖行動で慌ただしく騒いだ日から、
私、福原彩花——ふくの毎日は、
ますます楽しくなっていた。
水槽に顔を近づけ、
ショウテデニィが泳ぐ姿を見つめていると、
部室の埃っぽい机の間から差し込む夕陽が
水面をキラキラと揺らした。
「ねえ、凜さん!
アクア部の活動をもっと盛り上げるために、
新しいフグを増やしませんか?」と
目を輝かせて提案した。
すると部室のドアがガチャッと開き、
「遊びにきたよ」と小さな声が聞こえた。
美咲ちゃんだった。
ショートカットの髪が夕陽に揺れ、
部室の空気が一瞬だけ明るくなった気がした。
「美咲ちゃん、ちょうどいいところに来てくれたね~。
ベトナムで見た淡水フグってどんな場所で採れるの?」と
目を輝かせて尋ねると、
美咲ちゃんが
「うーん…小さいのは川の上流にいて、
大きいのは川の河口かな?」と、
少し遠慮がちに答えた。
「ええっ!
川の上流と河口!?
ってことは、いろんなフグがいるんだね!
ねえ、美咲ちゃん、
前に市場で見たフグって、
ショウテデニィだって言ってたよね?
もう少し詳しく教えて!」と
勢いよく詰め寄ると、
美咲ちゃんがちょっと引き気味に
「え、うーん…。
黒いスポットがいっぱいあって、
ショウテデニィみたいに可愛かったよ…。
でも私、フグには興味ないから、
よく覚えてないし…」と目を伏せた。
「うぅ、でも!
それ、すごく気になるよ…ねえ、凜さん!
アクア部の活動をもっと盛り上げるために、
ベトナムのフグを調査するプロジェクトをやりませんか?
もし新しいフグを輸入できたら、
アクア部がもっと賑やかになりますよ!
それに、海月先輩との約束——
サリバトールを採りに行く夢にも
近づける気がするんです!」と
私の声が部室に響き渡ると、
凜さんが
「お前、少し落ち着け」と嗜めつつも、
「まあ、悪くないアイデアだ。
ふくにしては上出来だな」と
フードの下で口元を緩めた。
私は嬉しくて、
「ええっ!
凜さんに褒められた!?
やった!
じゃあ、プロジェクト開始ですね!」と
跳ねるように喜び、
部室の埃っぽい空気を舞い上げた。
「ねえ、美咲ちゃん。
フグの輸入ってどうしたらいい?」と
勢いよく尋ねると、
美咲ちゃんが
「え、輸入!?
でも…私、フグには興味ないし…」と
困ったように目を伏せた。
私は
「うぅ、でも!
美咲ちゃんがベトナムのフグの話を教えてくれたから、
私、すごくワクワクしてるんだ!
手伝って!」と
目を潤ませて手を合わせた。
美咲ちゃんは小さく溜息をついて、
「仕方ないなあ…。
ふくのお願いだから、
少しなら手伝ってもいいよ」と、
言ってくれた。
「やった!
ありがとう、美咲ちゃん!」と
勢いよく抱き着くと、
美咲ちゃんが
「うわっ!
ふ、ふく、離してよ!」と
少し慌てた顔で笑ってくれた。
「よーし!
美咲ちゃん、凜さん。
このプロジェクト、絶対成功させよう!
アクア部、もっとフグを増やしますよ!」と
宣言し、
胸の奥が希望で燃えた。
「ところで、ねえ、凜さん。
輸入ってどうやってやるんですか!?」と聞くと、
凜さんが
「お前、そんな事知らずにやろうとしたのか…。
まずはベトナムのアクアリウム業者を探すところからだ。
ネットで調べてみろ」と
呆れるように答えた。
私は
「はい、やってみます!」と
早速、スマホで検索。
英語やベトナム語のサイトにたどり着いたけど、
謎の言葉で埋め尽くされてて、
まったく読めなくて…。
「うう…何!?
全然わかんないよ…!」と
頭を抱えた。
凜さんは淡々と、
「輸入するには現地の業者と連絡を取る必要があるな」と
言った。
すると美咲ちゃんが、
「私、ベトナム語なら少しできるよ。
通訳、手伝えるけど」と
嬉しい提案をしてくれた。
「ええっ!
美咲ちゃん、すごーい!
どんどん話が進んで行くね!」と
テンションが上がった。
美咲ちゃんはモニタを覗き込み、
サイトをスクロールしながら、
「うん…これ、ベトナムの市場の業者のサイトだね。
フグも扱ってるみたい」と呟き、
ベトナム語で埋め尽くされたページを
スラスラ読み、
必要な情報をメモしてくれた。
私は、そんな美咲ちゃんを
尊敬の眼差しで見つめた。
凜さんが
「でもな、輸入には検疫証明書や輸送許可が必要だぞ。
ちゃんと調べろよ」と、
嗜めるように言った。
私が
「えっ…検疫?
何!?
全然分からないよ…!」と
またまた頭を抱えると、
凜さんが
「しょうがないな。
検疫は私が調べる。
あの時みたいに失敗は許されないからな」と、
淡々と答えた。
「やった!
さすが凜さん、頼りになります!
美咲ちゃんや凜さんがいてくれれば、
アクア部は無敵ですね!」と
勇気が湧いて来た。
次の日。
美咲ちゃんが持参してきたノートパソコンで、
業者とのビデオ通話を始めた。
画面の向こうからベトナム語が聞こえてきた。
美咲ちゃんがこそっと
「フグって、ベトナム語で『カー・ノック』って言うんだよ」と
説明してくれた後、
業者さんに
「カー・ノック、プクー!」と
身振り手振りで説明する姿に、
私は
「美咲ちゃん、すごい!
でも、プクーって何!?」と
笑ってしまった。
美咲ちゃんが
「え、”膨らむ”って意味だよ。
ほら、こういう風に…」と、
頬を膨らませて見せると、
部室に笑い声が響いた。
凜さんが
「お前ら、少し静かにしろ」と
呆れた顔をしたが、
その口元も緩んでいるのを見て、
思わず笑っちゃった。
「ふふ、凜さんも笑ってるじゃないですか!」と
突っ込むと、
凜さんは何か言いたげに口を尖らせたけど…。
「ほら。
アクア部、こんな楽しい雰囲気なんですから。
このプロジェクト、絶対に成功しますよ!」と
勢いよく言うと、
凜さんは
「まあ…悪くないな」と
フードの下で小さく笑った。
美咲ちゃんが、
ちょっぴり弾んだ声で口を挟む。
「えっと…私が前に市場で見たフグのこと、
話したよね。
黒いスポットのフグのことだって言ったら、
写真を送ってくれるって!」
「やった!
美咲ちゃん、すごーい!
もう写真が見れるの?」と
目を輝かせた。
凜さんが
「お前は声が大きいな。
まあ、確かに黒いスポットのフグは、興味あるな。
輸入する価値あるかもな」と
淡々と答えた。
「はい!
それに、小さいフグもいるんですって!
両方、輸入しましょう!」と、
胸の奥に希望の火が燃えた。
数日後、
ベトナムの業者から写真が送られて来た。
美咲ちゃんが写真を指差し、
「えっと…これが市場で見たフグの写真だよ」と
呟きながら、
ノートパソコンの画面を見せてくれた。
そこには、
緑色で黒いスポットがたくさんあるフグが映っていて、
確かにショウテデニィにそっくりだった。
声を上げそうになると、
美咲ちゃんが何かに気付いた。
「うーん…このフグ、よく見ると…
ショウテデニィとちょっと違うね。」
私もそのフグがショウテデニィではないことに気が付いた。
「ショップにいる、あのフグだよね」って
解っちゃった。
画面を覗き込んだ凜さんが、
突然
「ぷっ、ハハハ!」と笑い出した。
美咲ちゃんが
「え!?
凜さん!?
何!?」と
目を丸くして驚くと、
凜さんは
「いや、ミドリフグはショウテデニィにそっくりだからさ。
フグのこと知らない美咲には分からなくて当然だよな」と
笑いながら言った。
美咲ちゃんはちょっとムッとしつつ、
「ミドリフグ…。
でも、写真見たときにすぐ、
ショウテデニィとちょっと違うって気付いたもん!」と
反論した。
私もすかさず、
「そうだよ。
美咲ちゃん、ちゃんと『違う』って言ってたよね」と
フォローに入る。
「私だって、海月先輩や凜さんに教えてもらって
フグのこと勉強したから、
ミドリフグが分かっただけだし。
美咲ちゃんが気付いたの、実はすごいよ」と
付け加えた。
美咲ちゃんは
「え…うん…。
ありがとう、ふく」と、
少し照れくさそうに笑ってくれた。
続けて、
「ねえ、ところでミドリフグってどんなフグなの!?」と
興味津々に目を輝かせて聞いてきた。
私は
「えっと、ミドリフグは東南アジア原産のフグで、
本当は海水魚なんだよ。
でも幼魚のときは汽水や淡水に入ってくることが多くて、
緑色で黒いスポットがたくさんあるのが特徴なんだ」と、
ちょっと得意げに説明した。
凜さんが
「ふく、意外とやるじゃないか。
ミドリフグの生態までちゃんと覚えてるなんて、
勉強したな」と
フードの下で少し口元を緩めた。
「ええっ!
凜さんに褒められた!?
やったー!
これで私、アクアリストとして認められたかな!?」と
声を弾ませて喜んだ。
美咲ちゃんが、
「えっと…じゃあ、このミドリフグも輸入するの?」と、
穏やかに聞いてきた。
私は
「うーん…。
ミドリフグって、日本のアクアショップでも普通に売ってるんだよね」と
腕を組んで少し考え込む。
「ねえ、凜さん、どう思う?」と聞くと、
凜さんは
「まあ、お前が言う通り日本でも買えるんだから、
わざわざ輸入する価値はないな。
小さいフグだけに絞るのが賢明だろ」と、
冷静に答えた。
美咲ちゃんが
「でも…小さいフグって、
ジャングルの奥に行かないと採れないみたい。
業者さんも今は写真がないって言ってたけど、
採れたら送ってくれるって」と
静かに補足した。
「ええっ!
ジャングルの奥!?
すごい!
どんなフグなんだろう!?
絶対輸入したい!」と、
胸がワクワクした。
凜さんが
「まあ、確かにジャングルの奥のフグなら話は別だな。
輸入する価値はある。
その小さいフグだけでいい」と
少し頷く。
「やった!
小さいフグ~!
早くアクア部に来てほしいな!」と
目をキラキラさせて言った。
それから1週間後。
美咲ちゃんは業者との交渉をベトナム語で進め、
凜さんは検疫や輸入手続きの書類を完璧に準備してくれた。
ビデオ通話の画面越しに、
業者が
「カー・ノック、プクー!」と
身振り手振りで説明するたびに、
「美咲ちゃんは本当にすごいな!
それに”プクー”って、いつ聞いても面白いよ」と
笑ってしまった。
やがて…ノートパソコンのフタを閉じた美咲ちゃんが、
「さて…これで全部の手続きが終わったよ。
フグが届くまで、結構かかるって」と、
こちらを向いた。
「やった!
ベトナムの小さいフグがアクア部に来るんだね!
海月先輩、見ててよ!
アクア部、もっとすごくなるから!」と
胸の奥に決意が湧いた。
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