十一章 連立政権の誕生(1)

内閣解散総選挙が終わった。あっという間の12日間であった。

責任党は、石川派がけた後の雪崩なだれ現象を何とか食い止めて137議席を確保したが、大惨敗だいざんぱいに終わった。

自立党は、選挙前から離党りとうが続いた影響で36議席と、野党第一党の影も形もない状態になった。

責任党との連立のうわさもあった新主党は、元々議員のスキャンダルが多かったこともあり、18議席と半分以下の議席数に激減げきげんした。

一方、新党の一新党は73議席、新自党は70議席、有志党は50議席を確保し、曙新党は34議席と大躍進だいやくしん、共調党も18議席と議席を増やす結果となった。共闘を表明していた一新党、新自党、有志党、曙新党、共調党を合わせると245議席となり、過半数を超えた。 野党側の圧倒的勝利であった。

「私も含め、野党共闘をした党は、すべてきみ首班指名しゅはんしめいするはずだ。5党連立による『連立政権』の誕生たんじょうだな」

石川は、大きな声でそう言うと、田中の背中をドンとたたいた。

「その件なんだが‥少し私に考えがあるんだ。少しだけ時間をくれないか」

田中の発言に、石川は少し怪訝けげんな顔になった。

「何か問題でもあるのか?」

「いや、問題ということではないんだが、かく少しだけ時間をくれ」

そう言いのこすと、田中は足早あしばやっていった。

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