八章 新党躍進(2)

「定刻になりましたので、今から曙新党の不定例記者会見を始めさせて頂きます。最初にお願いでございますが・・会見の模様もようを我々のSNSを通じてライブ配信はいしんさせて頂きたいので、質問のある記者の方はマイクを通してご発言をお願い致します。それでは、渡辺代表、よろしくお願い致します」

進行役の東田幹事長が、最初に発言した。

「曙新党代表、渡辺吾郎です。我々の活動についてマスコミの方々にも理解を深めて頂きたいと考え、不定例ではありますが『記者会見』をさせて頂くことに致しました。今回は、初めての記者会見ですので、まず最初に、日本の現状とその状況に対する我々の考えについて 少しお伝えさせて頂き、その後 皆さんからのご質問にお答えさせて頂きたいと思います」

渡辺は、そう発言したあと、スライドを使って『日本は25年以上不景気ふけいきが続いていること、それは政府のあやまった経済政策によるところが大きいこと、そしてそれを解決かいけつするための曙新党が考える政策せいさく』について、15分程度で簡潔かんけつに述べた。


渡辺は、以前イベントなどの進行を長年にわたってつとめていたことがあった。最初は結婚式場の司会進行などがおもであったが、ウィットに富んだ語り口やなごます話術が評判ひょうばんになり、やがて大きなイベントやショーの進行をつとめるようになった。一時いちじは、テレビなどのショーでも進行を務めることがあったので、ある程度ていど国民にも知られるような存在となった。それゆえ、渡辺は人前で分かりやすく簡潔かんけつに話すことにはれていた。


民間大手の毎度まいど放送の記者が、質問した。

「日本の不景気を解決するためにいくつかの政策を提案されていましたが、それを実行するための財源が必要だと思います。財源は、どのように考えておられますか? また、そういう提案について、国会内ではどのように議論されているのでしょうか?」

「ありがとうございます。まず『財源』の話ですが、『国債こくさい発行』を考えています。我々の提案は、現在の国家予算には入っておりませんので、実現するためには別途予算が必要になります。今の日本は不景気(デフレ)なので、ある程度国債発行してもインフレを加速することはありません。そのことは、衆議院調査室にシミュレーションを依頼して確認もとっています。国債を発行して国民にお金が行き渡るようになれば、個人消費が増えて景気回復につながると考えています。

次に、『国会での議論』です。我々は国政政党こくせいせいとうですが・・

我が党のメンバーは予算委員会の委員に選出されていないので、残念ざんねんながら予算委員会で直接質問する機会きかいがありません。なんとか本会議の野党の時間枠内わくないで質問する機会を頂けるよう 野党第一党にご相談しているのですが、少数政党ですので機会も少なく短時間の質疑に限られています。よって、本提案に対し十分な議論ができないまま今日にいたっています。

改めてお伝えしますが‥我々は、少数でも国民から負託ふたくを受けた国政政党こくせいせいとうです。国会で十分な発言の機会をいただきたいと思っているのですが、現状はこのような状況です。

マスコミの皆さんからも『少数政党にも国会での発言機会を均等きんとうに与えるよう』うったえて頂けないでしょうか。よろしくお願い致します」

すると、フリーの記者がすかさず発言した。

「報道の世界でも『報道会ほうどうかい』というのがあって、大手マスコミなどしか参加できない組織があります。そして、時には報道会に加盟する企業しか参加できない記者会見があったりするのです。我々フリーの記者は参加できず、情報を入手できないんですよ。不公平ふこうへいですよね。

曙新党さんの記者会見は、我々も参加させて頂けるのでありがたいです。渡辺党首の思いは、私も記事にさせて頂きたいと思います」

「ありがとうございます。思わぬ形で賛同者さんどうしゃが現れたので、私も心強こころづよい思いです。他の報道機関の方々も、取り上げて頂けるとうれしいです。ご検討、よろしくお願い致します」

最初の記者会見は、なごやかな雰囲気ふんいきの中で終了しゅうちょうしていった。

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