第32話 弱々しい泣き声

私は訳が分からないまま手術室に入った。

まだ32週。赤ちゃんを育てるためのステロイドを打たなければいけないのに、もう生れてきてしまういうのだろか。赤ちゃんは大丈夫なのだろうか。


沢山の人が取り囲んで赤ちゃんを取り出す準備をしていた。身体はどんどん寒くなりガタガタと震え出した。

先生達が手術を始める挨拶をしている。私は今までの自分の行動を後悔していた。


何となくお腹の辺りを触られてる感覚はある、そして15分程経った辺りで

「みとしろさん、赤ちゃんが出ますよ。」

と呼びかけてくれた。

「赤ちゃん、生まれました。」

そう聞こえたのだが泣き声が聞こえない。大丈夫なのか確認しようとした時に数秒遅れで

「…ふぇぇぇ…」

と弱々しい鳴き声が聞こえて来た。

「みとしろさん赤ちゃんですよ。」

そう言って見せられた赤ちゃんは身体が紫色をしていてとても小さかった。


「みとしろさん、赤ちゃんは保育器に入るのでお預かりしますね。心配しないで下さいね。」


そう言って小さな小さな私の赤ちゃんは保育器の中に入る為、NICUに連れて行かれた。私はただ自分の行いを悔やんでいた。


赤ちゃんはとりあえず無事に生まれたが私の場合、癒着胎盤があった為に子宮内の胎盤を剥がす作業が残っていた。

上の子の時も癒着胎盤で胎盤を剥がしたのだが、その時は全身麻酔で眠っていたので自分では何も覚えていなかった。

しかし、今回は局部麻酔の為に意識がある。お腹の中をグリグリと掻きまわされる様な感覚で吐きそうになった。

すると手術が始まった時からチャラチャラしているギャル男の様な男の人が私の変化に直ぐ気付いて

「吐き気止め入れますねぇ。」

と言ってくれた。お陰で気持ちの悪さは治まった。見た目ギャル男なのにとてもデキる男だった。


手術は赤ちゃんが生まれた時よりも、その後の癒着胎盤を剥がす方がだいぶ時間がかかり。身体はきつかった。


この時に思ったのは、前回は全身麻酔で眠っていたから気付かなかっただけで、当時の先生達もこんな大変な事をしていたのだ。


そりゃあ、K病院の人がより安全に産める病院をお勧めする訳だ。それなのに私は不満だけをぶつけていた。


断わるにはそれなりの理由があるのだ



だいぶ長い間お腹の中をかき回されている感じがしたが、ようやく終了した様だった。

疲れてしまったし、まだ麻酔が効いてるので身体が動かせないのが辛かった。


術後はMFICUに連れて行かれた。まだ動かせない体で横になっているとついさっき生まれた我が子の事が気になってしまう。

明らかに色が悪く、小さな我が子心配で仕方なかった。

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