第5話 エルネスタ・アイゼンバーグ
今日も元気に落とし物係としての務めを果たそうと、朝一番に受付を訪れる。
いつもの調子でサンドラに依頼がないか聞いてみるも、なんだか様子がおかしかった。
「きょ、今日は特にありませんね」
なんていうか、妙に落ち着きがないんだよなぁ。
他のふたりもチラチラこっちを見てきて何か言いたげにしている。
そんな微妙な空気が漂う中、俺は我慢できず三人へ声をかけようとした――と、その時、扉を開けてひとりの人物が室内へ入ってきた。
「あなたがレイジ・スプリングリバーですね?」
真っ直ぐにこちらを見つめながら俺の名を呼ぶ美人。
どこかで見た覚えのあるような……すると、サンドラが驚いた表情を浮かべつつ、近くにいる俺にしか聞こえないくらいの声で呟いた。
「エルネスタ・アイゼンバーグ……」
エルネスタ?
それって……昨日アレックス隊長が口にした名前と一緒だ。
この子のことだったのか。
でも、なんでこの子が俺を捜していたんだ?
見たところ、まだ入団して一、二年目くらいの若手のようだけど、俺との接点なんてないはずだ。
ふと視線を彼女の胸元へおろすと、そこには剣の柄を足で掴む鷹が描かれた勲章が。
あれは確か……入団試験でトップ成績を修めた者にしか与えられない物。
言ってみれば若手のホープである証だ。
こうなってくると、ますます謎が深まる。
そんな凄い子が、どうして俺なんかを訪ねてきたんだ?
「えぇっと……初めまして――だよね?」
「はい。こうして顔を合わせて会話をするのはこれが初めてです」
「だよね。なら、どうして俺のことを知っているんだ?」
「あなたの隠された真の実力を知りたいと思いまして」
「し、真の実力?」
何を言っているんだ、この子は。
ただの落とし物係である俺に真の実力も何もない。
この発言にはサンドラ以外の受付けふたりも即座に反応した。
「あ、あの、たぶん人違いじゃない?」
「彼にはあなたが注目するほどの力はないわよ? 入団試験の結果だって――」
「それは表向きの話でしょう」
キッパリと言い切った。
でも、本当に心当たりはないんだよなぁ。
「そっちのふたりが言うように、俺は今年で入団五年目になるが、過去に一度もまともにモンスター討伐さえやっていない雑用係だ。上から期待されている君とは住む世界の違うただのボンクラだよ」
「私にはとてもそう思えません。――これを覚えていますか?」
そう言うと、彼女は身につけていたペンダントを手に取って俺に向ける。
「それは……」
あれに関しては覚えがあるぞ。
確か、今から一ヵ月ほど前だったか。
一番隊が戦場に置き忘れたアイテムを回収に行った際、とある洞窟の入り口付近で偶然見つけて持ち帰った物だ。
まさか彼女の持ち物だったとは。
……けど、それが一体どうだっていうんだ?
「このペンダントは現場近くにあった洞窟――地底竜の住処で落としてきた物です」
「ち、地底竜?」
そういえば、ペンダントを拾おうとしたら洞窟の奥からでっかいトカゲが出てきて食われかけたな。
あれ……地底竜だったのかよ!?
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