狐の唄
長月将
プロローグ
意識が遠くなりそうだった。
呼吸は荒く、体がふらふらする。立っているのもやっと。
もう間もなく終わりが訪れようとしていた。
そんな中、思い出すのは、あの日、彼と過ごした日々。
前を見つめる。いつの間にか私の前に彼の影が立っていた。
彼が私の前を走る。ふらふらとした足取りで、彼の影を追いかけた。
好きになった男の子。好きになるべきではなかった男の子。でもこの想いを抑えることが出来ない。
彼が遠くなる。どんどんと遠くなる。
彼の影との距離が離れていく。
そして彼が見えなくなった。
私は立ち尽くした。
――いつの間にか大きな木の前にいるのに気付いた。
その場で蹲る。
もう体は氷のように重く言う事が聞かず、瞼も重くなった。
意識が途切れそうになる。
そんな時だった。
『あなたはもう間もなく寿命を迎えようとしています』
声が聞こえてきた。
『最後にあなたの願いを叶えましょう』
願い、私の願い……。
私の願いは、ただ一つだった。
私は願った。
どうか……――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます