取引3
巨大なドームの入り口にモノレールは近づいた。
最後の危険物検査が待っている。立ち入り審査にパスした乗客はくつ
ろいだ雰囲気で座席に座っている。
ドーム入り口に金色のトンネルが見える。モノレールは速度を落とし、
ゆっくりと金色のトンネルに突入していく。
透視 トンネル内部では強力な磁気微粒子を出してモノレールごとスキャン
して武器や爆弾などの危険物をチェックしている。
一瞬、斜め前に座る女性の髪がふわりと数センチ浮き上がった。俺は
のどの奥が締めつけられる感じがし、軽くせき払いをした。
世界最大の巨大資本が集まるネオシティのビルが間近に迫っていた。
俺が乗ってきた外部とつながるモノレールはネオシティの南北を横断、
ネオシティ内に駅が四つある。
広いドームの中をカバーする為に各駅から東西にコミューターと呼ば れる列車が走っている。モノレールとコミューターが交差する四つの キーステーションは、白、赤、黒、そして青白の駅名がある。
ネオシティを設計したテリー・ジョン・カーネギーがその駅名を命名
した。彼は、自らを現代の聖ヨハネと称賛する癖がある。 John
そして、四つの駅に四人の騎士名をつけた。ちなみにジョンはラテン語に
変換するとヨハネになる。
ヨハネの黙示録にこれら四色の騎士が登場する。勝利を意味する白、
剣を意味する赤、飢餓を意味する黒、そして黄泉を意味する青白だ。
勿論、人類を現世から死への道を少しでも遅らせる仕事をする世界 ハデス
最大の人工臓器のThree Leaves株式会社、それは黄泉の駅の前に地上 九十九階建でそびえ立っている。
そして、俺はその前に立っている。この99階ビル全てがこの会社
だ。100階建はこのドームには存在しない。
このビルが最高層というわけだ。
ここまで来たか。俺は三つの手持ち札に運命を託す。
(1)ブツは確認済み......だが、まだ確保はしていない。
(2)パティが味方だ......これもまた未確認だがそう思いたい。
(3)逃げ足は任せろ......これもカードに入るのか?
巨人が楽々と通り抜けられるエントランスを抜け、俺は Three Leaves 社に入った。とてつもなく大きな緑色の三つ葉模様のオブジェ が前方の20メートル以上ある壁に掲げてある。
遥か遠くに見えるレセプションに向かって俺はゆっくりと真っ白な大 理石の上を歩きだした。左右の衝立には、Three Leaves社の歴史が豪 華な油絵で色とりどりな極彩色で描かれている。
だが多分、その裏ではここの警備員とネオシティ軍のフル装備をした
男達がきっと銃の照準を、俺の頭に合わせている事だろう。
やっと、受付嬢の顔を判別できる距離まで近づいた。一本の大きな樹
を縦に切りそれを受付用にしている。
少し内側にカーブをしているのがわかる。表面は滑らかで光沢がある
極上品だ。
樹齢は軽く1,000年以上はたっている本物の杉だ。目の前には三 人の若くて美しい受付嬢がいる。中央の一番背の高い娘が椅子から立ち上がり俺を見て微笑んだ。そし てこう言った。
「ようこそ、Three Leaves社へ、ミスター・ヒョウ。我々は貴方様を 歓迎致します。会長付き執事のエリック・マクガイヤーの紹介で本日は 当社の見学でございますね。ありがとうございます。今、案内の者が参 りますので、少しお待ち下さい。
俺は言った。
「いや、あんたには悪いが俺は、見学をしている時間も余裕もない。
エリック・マクガイヤー氏に今、直ぐに会いたいのだが。それも緊急で重
要な用件で」
受付嬢は、真っ青な顔をして、目の前の電話を取った。
その時、右から一人の女性が近づいてきた。
「お待たせ致しました。本日ご案内をさせて頂く者です。どうぞ宜しく
お願い致します」
なんと、そこに立っているのは、緑の制服に包まれたパティだった。
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