ローズの受難
ラットマン
第1話紅い獣
私はある人物を殺す為に人工的に産み出された。
完璧な調整を経て産み出されたデザイナーベビー、それが私。
私は多くの技術を習得した。
10歳の頃から五年間紛争地域に実戦練習の為投入される様になった。
いかに効率良く人を殺すことが出来るか、いかなる状況にも適応出来るかを研鑽した。
これも全て可能な限りターゲットを殺すことができる確率を上げる為だ。
私のターゲット……「紅い獣」は伝説の殺し屋だ。
「紅い獣」の逸話にはこと欠かさない、十万殺し、紅い逆さ吊り事件、B2爆撃機を投石だけで沈めたなんて話もある。
とにかく「紅い獣」は規格外の化け物だ。
しかし私はそれを殺す為に産み出された。
ならば使命を果たすだけだ。
幸い「紅い獣」がどこにいるかはわかっている。
日本……予玖土町に「紅い獣」はいる。
武器の整備は完璧だ。
接近戦になっても問題ない様に仕込み刃も用意した。
これ以上ないくらい下準備はした。
あとは殺すだけだ。
◇◆◇
日本 予玖土町
「あれが「紅い獣」……ただの女じゃないか」
そんな言葉が口から漏れる。
情報通りならアレが「紅い獣」だ。
蒼葉邸の館に住み、紅い髪、血の様な眼、白い素肌。
身長と年齢も大まかだが一致している。
が、あまりにも無防備すぎる。
昼間っから酒を飲んで酔っ払っている。
ただの飲んだくれにしか私には見えない。
あんなものが本当に「紅い獣」なのか?
まぁ、どうだっていい。
幸い遠距離からのスナイプで殺せる位置にアイツはいる。
一撃で仕留める。
ビルの屋上でライフルをセッティングし、スコープから「紅い獣」を覗く。
全くの無防備、風はない、ならば外すことはない。
ライフルのトリガーに指をつける。
瞬間、「紅い獣」がこちらを見る。
気づかれた?
この遠距離から?
しかし「紅い獣」は動かない。
気のせいか?
とにかくトリガーを引く。
弾丸が一発放たれる。
そして「紅い獣」に着弾する……はずだった。
弾丸は「紅い獣」を貫通しなかった。
外した?
いや違う。
アイツは弾丸を爪で弾いて弾道を変えたんだ。
すぐさま二発目を装填する。
しかしスコープの先に「紅い獣」の姿は既にない。
気づかれた。
一旦体制を立て直す為にその場から離れる。
しかし……
「アンタだろさっきアタシを撃ったの?」
後ろから声が聞こえる。
振り向くとそこには「紅い獣」が立っていた。
「……」
「返答なしかよ、まぁいいや、アタシを狙ったってことは覚悟はできてるんだよな?」
「紅い獣」は静かに近づいてくる。
だが、接近戦なら仕込みナイフがある分こっちが有利だ。
近づいてきた「紅い獣」の首を狙って切りつける。
しかし「紅い獣」はまるでわかっていた様に指二本でナイフを掴む。
「仕込みナイフか、いいセンスだけどアタシには意味ないかなぁ」
「……」
だがもう一本仕込んである。
蹴りと共に靴に仕込んだナイフで「紅い獣」の腹部を狙う。
「あっぶねぇ! 足にも仕込んでるのかよ! 器用だなぁ」
「紅い獣」はそれすらものともせずもう片方の腕で蹴り上げた足を掴む。
そして……
「とりあえず折るか」
そう言って「紅い獣」は指だけでナイフを板チョコみたいに折ってみせた。
「……!」
こうなると体術戦に持ち込むしかない。
しかし「紅い獣」は掴んだ私の足を起点に私を道具みたいに地面に叩きつける。
「アンタみたいな女の子殺すのは気が引けるけどまぁ、アタシを殺しに来たんだったらしょうがないよね? 精々くたばってくれや」
そう言って「紅い獣」に何度も叩きつけられる。
まるで人間ヌンチャクだ。
幸い致命症になりそうな一撃はガードできてる。
けど……これじゃジリ貧だ。
「んー、技術は中々だけどイマイチだなぁ。うーん……」
「紅い獣」の攻撃が止む、正直こっちはもう攻撃できない。
的確に骨を折られた。
四肢が動かない。
私は完全に敗北した。
生殺与奪の権は「紅い獣」にある。
「決めた。お前アタシの弟子になれ。アタシを殺せるくらい強くなれ」
「……は?」
想定外すぎる言葉に思考がフリーズする。
「アンタ、殺しの技術だけで言ったらかなり上位に入るよ、ちょっと面白くなった。だから弟子になれ。あとアンタデザイナーベビーだろ?
どこの国が作ったかは知らないけど報復はしないといけないからその情報も吐け」
「……言わない。国は裏切れない」
「おぉ、この状況でそう言えるのは中々骨があるねぇ。ますます気に入った。てことで弟子になれ。えーと……」
「ローズ、私の名前はローズだ」
「じゃあローズ、これからよろしくな。精々アタシを殺せる様になるんだな!」
こうしてどういうわけか私は「紅い獣」の弟子になった。
だが考え方を変えればいつでも殺すチャンスができたと思えば良い。
そう考えれば悪くはない。
ただ当分は傷の治療が最優先だが……
「じゃあとりあえずアキルに連絡入れてっと」
「紅い獣」は蒼葉邸の家主に連絡を入れる。
この日から私の運命は大きく変わり始めた。
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