クララとルーネの絆
江藤ぴりか
プロローグ:ユルゲンからの旅立ち
クララはルーネの門前に立ち、ユルゲン村の記憶を胸に深呼吸した。――墓守のハーフエルフ、セルゲイ。彼にこの留学を告げた時、ひどく驚いていた。彼女も彼にしばらく会えなくなるのは寂しいと感じたが、自分の信仰を確かめるため、ここに来たのだ。
修道服の袖が埃にまみれ、彼女の手には祈りの温もりが残っていた。手持ちの服でほつれがマシなものを選んだが、道行く人と比べると粗末なものだ。周りの目が少し気になったが、みなクララを気にしてはいない。
門の向こうでエルフの弓使いが歌い、風がその旋律を運んでくる。セルゲイなら色鮮やかに見えているのだろうか。ハーフエルフの特性ではなく、彼だけが魔力を色のついた風として認識しているらしい。さぞかし美しい光景なんだろう。彼のことを羨ましく感じる。
クララには魔法の適性がなかった。魔法書――教会には禁書とされている――を何度読んでも、理解しても魔法が発動されることはなかった。だから人々のために『女神の奇跡』で役に立てたいと思ったのだ。
クララは一歩踏み出し、新たな絆の始まりを感じた。
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