二度目の転生でハーレム学園に! 最強はもう卒業して、貞操逆転のクズ男から美少女たちを助けます
佐々木直也
第1章
第1話 生きてて良かった……いや二度死んでるけど
二度目の転生を果たしたオレ──
「お前が、新入生イチの美少女っていう篠崎リオンだな?」
「………………」
「お前、男のオレを無視とは、いい度胸してるな?」
ひとけのない校舎裏で、いかにも柄の悪そうな男子生徒と、その取り巻きらしき女子生徒数人が、たった一人の少女を取り囲んでいる。
本来なら会話が聞こえるような距離じゃないのだが、前世から引き継いだ魔法により、オレの耳は、二人の会話をしっかり拾えていた。
だがオレに聞かれていることなんて知るよしもない男子生徒は、虫唾が走る台詞で脅しをかけている。
「単刀直入に言うぞ。篠崎リオン、オレのハーレムに入れ」
「………………」
「おいおい、男のオレに対してそんな態度でいいのか? 言っておくが、この学校にオレ以上の男なんていないし、女教師はすでにオレの手の内だ。抵抗できるなんて思わないことだな」
「………………」
「ふん、まぁいい。気の強い女を無理やりというのも悪くないか。たっぷり可愛がってやるよ」
な、なんつー……
コッテコテの展開なのだろう?
今日び、異世界だってあんなテンプレ悪漢は見ないぞ?
これが現代ニッポンの成れの果てとは……貞操観念が逆転しただけで、こうも勘違い野郎が量産されるとは……嘆かわしい限りだな。
(って、呆れている場合じゃない。助けないと)
オレは、久しぶりに学生となったその感動に浸る間もなく、歩き出す。
(まったく……二度目の高校生となったのだから、ちょっとは感傷に浸らせてほしいもんだ。まぁ人生としてはこれで三度目だけど)
つまりオレは、二度、転生を果たしていた。
元々のオレ──前々世のオレは、ヒョロ眼鏡キモオタとして蔑まれ続けた学生生活ののち、ブラックなシステム開発会社に就職。そこで……過労死した。
だが天はオレを見放さなかった。
見た目がキモくて体力もないというだけで蔑まれ続けても、勉強すればなんとかなる……と思って地道に勉強してきたオレ。
女性には「第一印象から嫌いでした」と散々言われても、お金さえあればなんとかなる……と思って必死に働いてきたオレ。
そのあげく本当に死んでしまったオレに、なんと、女神様は転生というギフトを与えてくださった……と、そのときは思っていた──
──おっと、いかんいかん。
悲惨な前世までの記憶がふと蘇りそうになったが、今はそんな憐憫に浸っている場合じゃない。
目の前の、手籠めにされかけている女の子を助けるほうが先決だ。
「ちょっと、キミ達」
だからオレは、校舎裏のその集団に声を掛けたわけだが……
「ああん?」
なんとも知性を感じられない顔つきで、男子生徒がこちらに視線を向けてくる。ガン付けのつもりなのだろう。
異世界では、散々向けられてきた視線ではあるのだが……
なんとも可愛らしいガン付けに、オレは思わず失笑してしまった。
「てめぇ! 何笑ってやがる!?」
「ああ、ごめん。なんだか懐かしくて、ついな」
「懐かしい? 何言ってやがるんだ!」
ガン付けは懐かしくても、何しろまるで殺気を感じられないからな。失笑してしまうのはやむを得ないというものだろう。
少なくとも異世界では、ゴロツキは殺人を
だというのにここでは、手ぶらで、しかも殺気のないガン付け。
もはや、赤ん坊が睨んでくるがごとしの可愛さだった。
でもまぁ、そんなことはどうでもいいか。
もちろん現世で殺人なんて御法度だから、出来る限り、力をセーブしないといけない。可能なら、話し合いで解決したいところだが……
だからオレは、平和的解決を試みる。
「彼女、嫌がってるだろ。やめてやれよ」
「お前、何言ってんの?」
「何って、やめてやれと言ってるんだよ。もしかして、オレの日本語、分からないのか?」
「くくく……男だからって、ずいぶんと舐めた口を利いてくれるな」
あれ、おかしいな?
オレは平和的解決を望んでいるというのに、どうにも相手が応じてくれそうにない。20年ぶりの日本語だったから、もしやと思ったのだが……それも違うようだ。
男は、余裕綽々といった態度でオレを見下ろしていた。190センチはありそうだから、見下ろされるのはやむを得ないが。
「お前のような貧弱な野郎に、たった一人で何ができる?」
ああ、なるほど。
この男は、オレの見た目で油断しているわけか。
だからオレは忠告をすることにした。
「何って、お前を倒すことができるぞ?」
すると男は、何が楽しいのか大笑いをする。
「バカなのか!? お前みたいなガリガリが、オレに敵うわけないだろ!」
確かに今のオレは、異世界にいた頃の全盛期とは、その戦闘能力は格段に劣る。
何しろ体格がぜんぜん違うのだ。
異世界のオレ──つまり前世のオレは、修行につぐ修行、死闘につぐ死闘の果てに、とんでもないマッチョマンになっていた。自分でもドン引きなほどに。
だがその甲斐あって、魔族という武闘派集団にも単身で切り込めるほどの戦闘技能を身につけたのだ。
けどそれは、マッチョマンの肉体あってこその戦闘技能でもあった。
そんな当時と比べて今のオレは、よく言えば線の細い美少年、悪く言えばガリガリのお坊ちゃん、という感じの風体だ。
これじゃあ、舐められても仕方がないか。
とはいえ今世でも魔法は使える。だから、いざとなれば魔法による身体強化で、全盛期の身体能力はいつでも取り戻せたりするのだが……
「筋力がなくなったところで、君みたいな素人に負けるわけないだろう?」
自明の話をしているのに、男はなぜか怒りを露わにする。
「本気で言ってるのか? オレは空手の有段者だぞ」
「それがなんだというんだ? 所詮はスポーツだろ」
「てめぇ!」
どうやら説得には応じてくれないらしい。
一歩踏み出した男に、しかし制止の声は別のところから来た。
「待って!」
ふと、声の方を見る。
「…………!?」
そしてオレは、思わず息を呑んだ。
(な、なんて可愛い子なんだ……!)
声を上げたのは、襲われそうになっていた女子生徒で……
男子生徒は、その子のことを『新入生イチの美少女』と言っていたが……その点に関してだけはまったくの同意だった……!
大きな瞳は力強い意志を宿している感じだし、肌も透き通るように美しい。もちろん髪の毛も艶やかで、さらにはスタイルも抜群だ……!
(い、いかんいかん……年下の女の子に、何を見惚れているんだオレは……!)
オレは小さく頭を振る。
何しろオレは二度の転生をしているから、今や足かけ56歳の中年もいい所なのだ! それが女子高生に見惚れているなんて……もはや犯罪だぞ!?
し、しかし……オレの身体は16歳のギンギンなわけで……
くっ……ほ、本能が……!
鍛え抜かれたはずのオレの理性を……本能が侵食してくる……!
だいたいオレ……56年もの間、女性とはまるで縁が無かったし! だとしたらその辺はぜんぜん鍛えられてなかったのではなかろうか!?
そもそも「やったー! これで最強チート無双だ!」と思って喜び勇んだ最初の転生は、最強もチートも無双もない、ただの一般人男性だったし!?
だというのに戦場のど真ん中に叩き落とされて!!
(そりゃあ本物の戦場なら……チートもなけりゃ女性なんているはずないよな!? 魔法はあったのにな!)
そこでオレは、ただひたすらに延々と、魔族との死闘に明け暮れたのである。
最強も無双もチートもなければ、女性の影すらなく。
20年間、ずっと。
はっきり言って、前々世ニッポンでのブラック企業の上司のほうが、ブラックどころかブラッティ天界の女神より断然マシだった……
というわけでオレは、足かけ56年も女性にまったく縁が無く、故に耐性もない。
だから年甲斐もなく、女子高生に見惚れてしまっても……致し方なくない!?
などと自己弁明を、魔法『超高速思考』を回して無駄に考えていたら、彼女が、少し震える声で言っていた。
「分かった。あなたのハーレムに入るから……」
ん? これは……どういう展開だ?
オレが眉をひそめていると、男が『ヒュ〜』とわざとらしい口笛をならす。
「おいおい。まさか、こんな見ず知らずの男を庇うために、ハーレムに入るってのか?」
「……別に、どうだっていいでしょ」
そのやりとりを聞いて、オレの目は真ん丸になっていることだろう。
いやまさか、そんなことがあるのか?
知り合いでも何でも無いオレの身を案じて、自分が犠牲になると……!?
あんなクソ女神より、このコの方がよっぽど女神じゃないか!
オレが感涙を流しそうになっていると、そのコがオレに向かって言ってきた。
「ねぇキミ……わたしは大丈夫だから、もう行っていいよ?」
くっ……な、なんだその慈愛に満ちた瞳は……!
しかも自分の身を犠牲にしているというのに、オレの身を案じて……!!
オレは今日、初めて思った気がする。
生きてて良かった……いや二度死んでるけど。
だからオレは、颯爽と現れたヒーローのごとく、キメようと思って口を開く。
「ご心配には及ばなにゃ──」
………………噛んだ。
「あーはっはっは! 何コイツ!? 格好付けようとして台詞噛んでやんの!」
スルーしてくれればよかったのに、男はオレを指差して大げさに笑う!
取り巻きの女子たちも、それに釣られて失笑し始めた!
くっ……!
この男、絶対に許さん!
「と、とにかく……心配しなくていいから……」
かろうじてオレがそういうと、一人だけ心配そうだった被害者のコ──確かリオンといった彼女は、ますます心配そうな顔つきになる。
「で、でも……」
「ほんと、平気だから」
そしてオレは、感動と羞恥で涙目になった視線を、男に向ける。
「とにかく……ここで引かないならちょっと痛い目に遭ってもらうからな?」
ようやく馬鹿笑いを終えた男は、蔑みの視線を向けてきた。
「それはこっちの台詞だっつーの!」
そしてなんの前置きもなく突進してくる。
不意を突いたつもりなのだろうが──
──もちろんオレには、止まって見えた。
だがいかに動体視力が優れていたとしても、それに伴う筋力が無ければ、ただただスローに見えるだけで戦うことは出来ない。
とはいえ。
ごく最小の動作を心がければ、筋力はあまり関係ないし。
そもそも、隙だらけの男のみぞおちに、底掌を叩き込むことくらい、目をつぶっても出来ることだった。
「ぐふっ……!?」
そうして、自身の身に何が起きたのか分からない男は、地面に沈んだ。
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