長くなりそうな予感しかしないよね…




ゆったりと座れるソファに腰掛けてるオレと兄。対峙するように、反対側に座るのは例の御令嬢サリエーゼ。リズはメイドである立場から、ソファには座っていない。立ったまま、事の成り行きを見守っている。


先程のやらかしの影響か、誰も何も話さない。

サリエーゼに至っては、穴があったら入りたい気持ちなんだろうな。両手で顔を覆ったまま、俯くその表情は見えないけれど、羞恥心でいっぱいいっぱいなのは分かる。耳がめっちゃ赤いからね。


チクタクチクタク、年季のある時計の秒針が時を刻む音だけが響いていく。


よーし! こうなったら、ちょっと空気を変えてみようか! 強引な気もするけど、話が進まないんだから仕方ないよねえ。


「ええと、改めて自己紹介しようか! 私はリティシア。ギルノールの妹です。ほら、兄さんも!」


「えっ!? あっ、えっと、ギルノールです、よろしく……?」


「はい、よろしく! 次、リズ!」


「お嬢様のお世話を全て担い、尻拭いも常に頑張っております、リズです。メイドの中では古株の方です。宜しくお願い致します」


意外と話の輪を広げたリズは、そう言って45度に頭を下げた。お詫びと謝罪も兼ねてるんだろうな。その所作は美しいもので。ただ、表情筋が動いてないのが残念。でも無表情で凛々しいメイドさんって、良いね。かっこいい。


兄が何やら、次の新作これでイケるか……?とかぼやいてるのが聞こえたけど、オレは何も聞いてませーん!あーあーあー、聞こえないー!!


つか、やっぱり兄め、創作活動やってんじゃねえか!! この問題が終わり次第、締め上げなきゃなんないな……リィタ達を呼び出す用意しとこう。


「次は、お嬢様ですよ」


「は、はい! サリエーゼです!  ロジェワード家の一人娘で、父を何とか正気にさせたい一心で、立ち上がりましたが結局何も出来てません!」


申し訳ありません!と頭を下げるサリエーゼ嬢にオレと兄の動きが止まる。ただリズだけは微かに眉を寄せ、息を吐いていた。


「ちょっと待って。父君を、ロジェワード氏を正気にさせたいって、どういう事?」


兄の指摘にハッとしたサリエーゼ嬢は口元を押さえる。まだ話すつもりがなかった言葉だったんだろうね。言っちゃったよ、どうしよう……って態度がありありと出てる。


リズに助けを求める視線を向けてるけど、リズは素知らぬ振りして佇んでいる。サリエーゼ嬢が勢い良く揺さぶってるのに平然としてるぞ……な、慣れてるのかなぁ……


うーむ、素直に話してくれる筈がないから、やんわりと誘導していこうと思ってたけど。あっちから話してくれたんなら、これは進めやすい。


正気、正気ねえ……?

ちょっと、雲行き怪しくなりそうだねぇ。行方不明者を連れ戻すだけじゃすまない流れだよね、これ。

ウィリアムめ、絶対分かっててオレ達を送り込んだな?


脳裏にそんなことないって〜!と口にしながらニヤニヤ笑うウィリアムの顔が過る。

あっ、何か、すっごいイラッときた。リィタによる制裁人数増やしとこう。


「サリエーゼさん、貴女のお父様は、何者かに操られてるって言いたいんです?」


思考から抜け出したオレは、ゆったりとした口調でサリエーゼ嬢に問い掛けた。


「えっ!? え、と……その……」


やはり話す事に慣れていないのか、口を開くも上手く言葉にならず、もごもごと開閉ばかり繰り返している。掴んだままのリズのスカートが皺々になってるのが、非常に気になるんだけども。リズは慣れてるんだろうね。ピクリとも表情動かさず、視線だけをサリエーゼ嬢に向けてた。


「お嬢様、話し辛いなら私がお伝えしますが」


「ッ、いいえ! 私が言い出した事ですもの。私が、説明しなければ、意味がないです。ええと……信じてもらえないかも、なんですが……父の背後に誰かがいる気がするのです……」


カタカタと震える手をリズのスカートから離し、サリエーゼ嬢は意を決したように語り始める。


「……父が、おかしいと思い始めたのはつい最近の事です。それは、ほんの、些細な切っ掛けでしたーー……」



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