【第1話】迷う営業次長(#トキマチ)

◯ラーメン&チャーハン

私は大理時待〈オオリトキマチ〉57歳独身。世間の流れに従ってきた日本のサラリーマン代表。最近特にいい事なし。某メーカーの営業次長。まあ次長と言っても、タナボタ&ラッキーな昇進だったけどね。その後5年間、出世とはまったく無縁の極楽とんぼ。コレが現実の流れなんだなって、自分でも最近真面目に納得している。


今日も有楽町でいつもの「喜多方ラーメン&肉入りチャーハン」を食べ終わったところだ。この店に来ると本当に幸せを感じるよ。何しろ時間を待つ事が出来なくて、次から次へと結論を急いでいる俺様にとって、有楽町の「中華雷神」は早い、美味い、最高の店だ。自分でも気に入ってるよ。まあ、落ち着きの無い、しがないサラリーマンクズレには癒しの場所だね。


〈今日も仕事で、一発やらかした〉


そしてコケて、公園のベンチで

愚痴り始めた。


「まずもってやってられない

アイツ何様なんだよ!」



取引先であっても、奴には頭来るな!社畜ってああ言う奴のことをいうんだろうな。自分でもわかっているのかね。


「特にアイツだよ!

ああ嫌だ」



〈そして昨夜は接待で遅くなり、

朝早く出社したトキマチだった…〉



トキマチは知らぬ間に寝てしまった。

どのくらい寝たんだろう?



〜しかし今


なぜか気分爽快だ〜



周りを見渡して見ると

いつもの公園ではなく

知らない森にいる。




〜フワ〜ッ目が醒めたぜ〜


「あれっ」


……………………………………



まったくありえない状況だ

そんな自分に今気付いたよ。



「オイ!なんだこりゃ!

マジキモイぞこりゃ!」



「あんな所で寝なけりゃ良かったよ。

クソっ!」



ここは一体なんだって言うんだ!

まさか帰れないって事はないよな。

強気のトキマチは…不安MAXになっていた。



「まあ、深い森ではなさそうだし…

何とか出れると思う…(不安)」



〈トキマチは昔…雑木林で迷子になった記憶が甦った…〉



「しかしコレって…

夜になったらヤバそうな雰囲気だな」



でもなぜか…

どことなく懐かしい感じがするのはなぜだろう。鳥が鳴いている。川が流れてる。まさか、誰か居るのかな?木々がざわめいてる。動物も居るかもしれない。



「まあいいや…どうせ行き詰まった人生だもんな」



相変わらずイキがった自分に酔っていた。そうだ!日が暮れる前に、少し明るいうちに歩いてみるか…



〈トキマチは頭を掻きながら歩き始めた〉




◯愚かな強気

小一時間たった頃、トキマチの不安は的中した。案の定、暗くなってしまった。灯りを持っていない事に気付いた。不安MAX…梟(フクロウ)の鳴き声が、低く、長く響いている。次第に目が慣れてくると言うより〈闇〉が覆って来る感じだ。


でも妙に心地いい感じは続いている…


一時間ほど歩いて、沈んだ夕日の場所を探すのが大変になって来た。オレンジの残像が薄っすらと〈樹木〉を照らしていた。



何もする事が無くなると、トキマチは半ばハメられた感じの、今日の商談を振り返っていた。



「ホント理不尽だったな〜

メーカーって弱いな!

所詮言われた事を

ハイハイって

やるだけじゃん」



トキマチはそんな世界がホトホト嫌になっていたが、別の環境に置かれてもスタンスが変わらない俺って、意外と凄いんじゃないのか!そんな…〈相変わらず〉強気な自分に酔っていた。



◯そう言えば…


〈自分は正しい〉

今までも、そしていつもそうだった。物事の「結論」に対して、絶対の自信を持っていた。予知能力があるんじゃないかって思うこともあった。



〈心の声〉

『トキマチよ、他人の感情には気付いていたのかな?』



「えっ!他人?」



「いやいや、そんな時間なんて、この忙しい時勢にはありませんよ!何言ってんだかね!」



「まず効率良い方向で物事って決めなくちゃね。他人の感情なんて後回しだよ」



〈心の声〉

『勝つか負けるか?

そう言う事か?』


「まあ、それも正しいけど…

もっと複雑な感情が時間の中には埋め込まれているよ」



〜まあ、もうどうでも良かった〜



妙に〈引っかかる言葉〉ではあったが、気にする事では無いとキッパリ結論付けた。


辺りは闇に包まれていた。

トキマチは楡の木の下にあった

〈平たい石〉に腰掛けた。


〜石は冷たかった…しかし、



「思ったより寒くないや

上着を着て来て良かったよ」



〜腕時計は〜


ちょうど午後8時を回ったところだ。


それにしても、

普段から追われている様な、

あの恐怖観念は無かった。



◯有楽町の夕暮れ

〈不思議な時間が流れたもんだよ〉


こんな経験は初めてだ。たぶん疲れが溜まっていたんだろうな!トキマチは勝手にそう思った。しばらく歩いていくと大きな〈楡の木〉が目の前に立ちはだかった。トキマチは木の根元が奇妙に膨らんでいるところに腰を掛けた。


「不思議な森だな。そろそろ帰らなくちゃ」


結論を急ぎ、結果を早く確認したいトキマチにとって、時間が止まった世界は正直あまり好きではない。



トキマチはしばらく物思いにふけていたが、いつしか横になり寝てしまった。どのくらい寝ていたのだろう?



〈なぜか灯りが眩しいな〉



「うん!ここはどこだ?」



ネオンが忙しく光っている。

雑踏のザワザワした騒がしい音が聞こえる。



〈うん!いつもの場所か?〉



楡の葉っぱが

上着の背中に


〈二枚〉貼り付いていた…


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