萩市立地球防衛軍☆KAC2025その⑤【三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」編】
暗黒星雲
第1話 ビアンカのダンスパーティー
山口市の繁華街にあるダンスホールにおいて、山大某サークル主催のダンスパーティーが開催されていた。そこへ威風堂々と乗り込んで来たのがビアンカである。
今宵こそ素敵な彼氏をゲットせしめんと、ビアンカはビシッと白いドレスを着こんでいた。彼女に付き添っていたのは黒人の青年である黒猫だ。彼もまた、ダンスパーティーにふさわしい黒のタキシードを着こんでいた。
その会場で行われているのは、いわゆる社交ダンスである。主にハイテンポなジルバとスローなブルースを、男女ペアで楽しもうという企画だった。
「さあ行くわよ」
「……何で俺が……」
「つべこべ言わない。アンタだって好みの女の子を見つけてアタックすればいいのよ」
「そんな人はいないって」
「どうかな? ぽっちゃりの爆乳ちゃんがいるかもよ」
「な……何でそれを??」
「みんな知ってるって。さあ、新しい恋を見つけに行こう! 突撃だあ!」
ビアンカは意気揚々と、彼女に首根っこを掴まれた黒猫は渋々とダンスホールへと入って行った。
ホールの中は既に異様な盛り上がりを見せていた。白猫のコスプレをしている大柄で超ぽっちゃりな女性と、三毛猫のコスプレをしている三歳児くらいの女の子が、ホールの中央で見事なダンスパフォーマンスを披露していたからだ。
「げげげっ、アレはハウラ姫と椿ちゃんじゃないの? 何で彼女達がここにいるん?」
「さあ? 正蔵からチケットを買ったのでは?」
そう、ビアンカと黒猫も正蔵からチケットを買ったのである。つまり、防衛軍の皆が正蔵からこのダンスパーティーのチケットを買わされていたのだ。
「そうだとすると……総司令も来ているのかな?」
「ああ、あそこ。長門さんといるみたいですね」
「くっ。あの二人に男が全員取られてしまうわ。早く中へ」
「わかった。焦るなって」
ビアンカと黒猫はホール内に入って待機する。そう。こういったパーティーでは、男性が女性に声をかけペアになってダンスを楽しむものだ。男性はホールに訪れている全ての女性に声をかける権利があるのだが、女性の側は受動的にならざるを得ない。誰と踊りたいとか誰と踊りたくないとか、そんな意思を示すことができないのだ。
スタイルは抜群なのだが、ピンク色の髪とピンク色の狐の耳としっぽをつけているコスプレ少女のビアンカに声をかける男性はいなかった。それに対して豊満な胸元が眩しいミサキ総司令や、金髪スリム美女の長門は常に声をかけられて休む間もなく踊り続けていた。そしてメチャぽっちゃりなハウラ姫と三歳児の椿も、先ほどのダンスパフォーマンスが効いたのか、男性からの誘いは絶えなかった。
ダンスホールの壁の花となってしまったビアンカ。しばらくは男性から声がかかるのを待っていたのだが、元々行動的な彼女はその退屈な時間を過ごすことができなかった。
こっそりとダンスホールを抜け出したビアンカは、市内を散歩し始めた。商店街は閉店した店が多く閑散としていたが、何人かの男たちが集まっていた。そこでは喧嘩しているかのような怒声が飛び交っている。
ビアンカはニヤリと笑い、その集団の中へと入っていった。
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