奇奇怪怪の放課後

伊佐 隠

第1話 日記的な語り

 放課後、その過ごし方は十人十色。人によって全く別の過ごし方がある。部活動、生徒会活動、アルバイト、友達や恋人と過ごすなど様々だ。それぞれに、特徴があり良いも悪いもない。ただ違うってだけの話。だけれど、たまに多くの人が理解に苦しむ過ごし方をしている人たちは一定数いる。まるで大量生産品のなかの不良品のように。かくいう私も、その不良品の仲間だ。私が放課後に向かうのは、今にも崩れそうなビルである。廃墟巡りにきたわけではない。信じられないがここには探偵事務所がある。探偵事務所としての役割を全うしているところはまだ見たことがないけれど。ビルのひび割れたコンクリートの階段を登り2階にたどりつく。蝶番がおかしな声で鳴いている扉を開けば想像通りの部屋がひろがる。整頓とは無縁で、なにかしらの資料があたりに散らかり放題知らない人が訪れたら強盗の仕業と勘違いすることだろう。私が毎日掃除をしてるおかげでホコリ、シミ、カビなどがないので、かろうじて人が住める状態になっていると思う。いい加減にしてほしい。。ここは、依頼がないからこんなふうなのか、こんなふうだから依頼がないのかその因果関係はわからない。私がここを見つけたときにはすでにこの状態だったからだ。ここの所長は、部屋の真ん中においてある依頼人用のソファでいびきをかきながら寝ている。実にこの部屋が似合う男だ。名前は、ひふう かたる。漢字では緋風 結琉とかく。年齢は、おそらく20代後半から30代前半で身長は170後半、だらしないという言葉がよく似合う男である。こんな仕事もなく、部屋の整頓すらできないどうしようもない人のところに私が通う理由は彼の趣味が関わっている。本人はそれが本職と話しているが。彼の趣味は、世の中に漂う怪談奇談を収集することである。なぜそんなことをするのかは、それらを保管するためと言っていたが、本当のところはよくわからない。私は昔、そんな怪談奇談に巻き込まれたときに彼に世話になったのだ。はじめは礼のつもりでここに来ていたのだが、彼の収集してきた怪談などを聞いていくうちに何となく、通うことにしていたのだ。今日はどんな話が聞けるのかを考えながら彼のはなをつまんでおこした。

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