第7話:増え続ける魔物と洞窟の異常

 洞窟の異常に気づいたのは、昼間倒したはずの芋虫型魔物が、また現れたことだった。


「……なんで、またいるんだ?」


 俺は警戒しながら、一歩ずつ洞窟の奥へと進む。入口は封鎖した。魔物が外から侵入するはずはない。それなのに、昼間倒したのとは別の個体が、うねるように這いずっている。


「どこから来た?」


 ファシムが静かに洞窟の奥を見つめる。


「調べてみるか?」


「頼む」


 俺は慎重に待機しつつ、ファシムに先行させる。もう1体のファシムは洞窟の入り口で監視を続けさせている。


 ファシムが芋虫型魔物に近づくと、相手もそれに気づいたのか、ぬるりと粘液を撒き散らしながら動き出した。しかし、特に攻撃してくる様子はない。


「討伐する」


「任せた」


 ファシムが魔物の頭を掴み、岩に叩きつける。鈍い音とともに、魔物は痙攣し、動かなくなった。


 その瞬間、いつもの感覚が訪れる。


 俺は特に気にせず、次の行動を考えた。


 ファシムを呼び、試しにもう1体の魔物を討伐させる。同じように、魔物は動かなくなった。


「死骸は……当然残っているな」


 洞窟の地面には、昼間倒した魔物の死骸がそのまま残っている。そして今、討伐したばかりの死骸が加わった。


「死骸は消えない。それなのに、新しい魔物が増えている……」


 俺は洞窟の壁や床を調べる。隙間や巣穴のようなものがあるのかと思ったが、それらしいものはない。


「……どういうことだ?」


 ファシムが洞窟の奥を指す。


「もう少し奥を探索するか?」


「そうだな。魔物がどこから現れているのか、確かめたい」


 俺たちは慎重に洞窟の奥へと進む。


 すると、そこには——


「また……?」


 ついさっき討伐したはずの芋虫型魔物と同じ個体が、壁際でじっとしていた。まるで、何もなかった場所から突然生まれたかのように。


「魔物が外から来ているんじゃない……ここで、発生している?」


 もしそうなら、この洞窟は普通の洞窟ではない。


「ダンジョン……?」


 口にしてみるが、俺はその言葉の意味をよく知らない。ただ、まるで決まったルールのもとで魔物が発生しているように見える。


「確かめる必要があるな」


 俺はファシムに再度、魔物を討伐させた。死骸はまた一つ増え、俺は淡々と次の動きを考える。


 ふと、俺はこの状況をどう捉えるべきか迷う。


「……これ、喜ぶべきなのか?」


 考えてみれば、今までの生活では食料の確保が最も大きな問題だった。狩りが成功しなければ、餓死の恐れすらあった。しかし、この洞窟では魔物が絶えず発生し続ける。もし出現の間隔を把握できれば、安定した食料源になるかもしれない。


 だが、それと同時に別の懸念が生まれる。


 魔物が無限に発生するなら、食料の供給は安定する。少なくとも、狩猟に頼る必要はなくなる。だが、それと同時に、魔物が絶えず増え続けるという危険もある。


「食料が手に入るのはいいが……こんな状況、普通じゃないよな」


 俺は芋虫型魔物の死骸を見つめる。腹を満たす手段を確保できたことは悪くない。しかし、それを安心材料と考えていいのかどうか、判断がつかなかった。


「……時間を測る」


 魔物の発生がどれほどの間隔で起こるのかを知る必要がある。ただ待つだけでは時間の感覚が曖昧になる。


「何か目安になるものは……」


 洞窟の中を見回しながら考える。水滴が落ちる音、火の燃え方、腹の減り具合……正確な時間は測れないが、一定の基準を決めれば、ある程度の目安にはなるかもしれない。


「ファシム、次の魔物が現れるまでの時間を記録する。発生地点や規則性も可能なら確認しろ。」


 次に魔物が発生するまでの時間を記録すれば、何らかの法則が見えてくるかもしれない。


「了解」


 俺はしばらく待機しながら、洞窟の奥を見つめた。


「この洞窟には秘密がある……それを突き止めるまでは、うかつに動けない」


 俺はここを拠点とし、洞窟の謎を解明することを決意した。


《現在のファシム数:3体》


 1体:洞窟の入り口で監視


 1体:洞窟の奥を探索


 1体:討伐と指示に従う

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