第4話 知識の国②

「おねいちゃん、何か探しているの?」


振り返るとそこには青い瞳の綺麗な少年が立っていた。

私はその綺麗な瞳に映る自分が、目の前の少年よりもずっと幼く見えた。

少年の胸には銅色のバッチがきらりと輝いていた。


「この国のパブルを探しているのだけど、さっき来たばかりでどこをどう歩いて良いのやら困っていたところなの。

もしよければ、パブルまで案内してもらいたいのだけど、お願いできるかしら?」


青い瞳の少年はその綺麗な瞳をきらりと輝かし

「おねいちゃん、外の国から来た人だね!もちろんパブルまでは僕が案内するよ。

その代わり、おねいちゃんがいた国のことを僕に教えて!」

青い瞳の少年はとても無邪気な笑顔でそういった。


「ありがとう。実は私初めての旅でここが初めて来た国なの。

だから道中一度も休まずにここまで歩いてきたからもうクタクタで、

お腹もぺこぺこなの。

よければこの国の美味しいご飯を一緒に食べながらお話しするのはどう?」


「それなら僕のお家でご飯を食べるといいよ。

僕のママもパパもきっと君の国の話を聞きたがるに違いない!」


青い瞳の少年はそういうと、私をパブルまで案内してくれた。


「ここがパブルだよ。また夕食どきになったら僕が迎えに来るから

それまで旅の疲れをゆっくり癒してね」

青い瞳の少年はスキップしながらその場を後にした。


パブルに着くと目の前にきちっとしたスーツを着た男女が

カウンターに並んで立っていた。

二人の胸元には金色のバッチが付いていた。

私が2人に近づくと、女性が口を開いた。


「こんにちは。訪問者様。

こちらは訪問者様専用宿泊施設のパブルです。

滞在期間は最大3年、それまでの期間は自由にこの施設をご利用ください。

空いているお部屋は目の前のタブレットからお好きな部屋をお選び頂き

訪問者登録をお済ませください。」


私はその説明を聞き終えてから目の前のタブレットで空いている部屋をみて

初めての旅の宿に相応しい部屋を選んだ。


部屋のベットで横になると一気に疲れが押し寄せ、目が覚めた頃には外は暗くなっていた。


「もうこんな時間!少年とご飯の約束をしていたんだった。」

窓から外を見ると、少年は入り口で私が出てくるのを今か今かと待っていた。


慌てて支度をして少年の元へ急いだ。

パブルにいる他の訪問者たちの胸元のほとんどは緑のバッチが付いていた。


「本当にみんな最初は緑なんだ」

白髭のおじさまの言ったことが慰めではなかったと知り、少し安心した。


「やっときたね、旅の疲れがベットの誘惑に朝まで負け続けるのかと心配したよ」


少年の家までの道ですれ違う人たちの胸のバッチは、金や銀がほとんどだが

たまに緑や銅色の人を見かけた。


広場の女「知識は財産だー!人の感情からしか生まれない知識もあるはずだー!」


そう広場で叫んでいる女性の胸には今日初めてみる赤いバッチが付けられていた。


通りすがりの人A「また騒いでいるよ。これだから頭の悪い人は嫌なんだ」


私「彼女はよくあそこで今日みたいなことをしているの?」

少年「そうだね、彼女は完璧な知識を得ることに前向きじゃないんだ」

私「完璧な知識?」

少年「そう、それより僕の家はもうすぐだよ。

パパもママも君の話を聞くのをとても楽しみにしているんだ。

今日はご馳走だよ〜」


私は完璧な知識を得るということがどういうことなのか気になったが

お腹がぺこぺこだったので、ご馳走という言葉を聞いてご馳走のことで頭がいっぱいになった。


少年の母「いらっしゃい旅のお嬢さん。今日はあなたの国のお話を聞けると聞いてとても嬉しいの。

さぁ、早く入ってちょうだい。もう食事の準備は出来ているの」


私は小さい頃に聞かせてもらった童話のお姫様たちが暮らしているような

お城のような立派な家の廊下を歩き、たくさんのご馳走が並ぶテーブルに座った。


私「こんな豪華なご馳走初めて見ました。」

少年の母「お気に召して下さったようでよかったわ。

ささ、早くあなたの国のお話を聞かせてちょうだい」

私「はい、もちろんです。

ただ、、、お二方はお食事されないのですか?」

少年「おねいちゃんは面白いことを言うんだね。ママとパパに食事はいらないよ」

私「食事をとらなくても平気なの?」

少年「平気も何も、ママとパパは完璧な知識を得たロボットなんだから、食事を取る必要がないんだよ」

少年の母「そうよ、私たちは完璧な知識を得るために、この子を産んでしばらくして人の体を捨てたの。人の脳や体は劣化していってしまうでしょ?」


私には目の前にいる二人が人にしか見えず、とても驚いた。


少年の母「人間の劣化を止めることはあらゆる知識を束ねても止めることができない。

知識は財産なの、人類はたくさんの知識を未来の人類に繋げるべくたくさんの知恵を絞ってきたわ。

例えば本。本は最高の過去の偉人たちからの贈り物よ。

でも、その本は知識の全てではないし、読む人によってはその伝えたかった知識が正しく伝わらないこともある。それはとても悲しいことだわ。」


少年の父「だから私たちはこう考えたんだ。

自分でその知識を未来の人たちに伝え続ければ良いと」


私「それでこの国の大人は人の体を捨てて、ロボットになったと言うことですか?」


少年の父「この国の人全てがそうしているわけではない。

ただ闇雲に知識を残しても、情報が錯綜して正しい知識が埋もれてしまう

なので私たちの国では最低でも銀のバッチをつける知識レベルに到達している人に、この完璧な知識を得る権利を与えられているんだ。」


少年「僕もいつか完璧な知識を得るためにたくさん勉強をしているんだ」


私「では、この国で金のバッチをつけている人たちはみんなロボットなのですか?」


少年の母「そうよ、ロボットになることで人間には到達できない完璧な知識を得る事に成功したの。私たちは日々進化し、常に正確でクリアな知識を未来に自分の手で残していけるのよ。」


少年「ねぇ、もう僕たちの話はいいでしょ?

そろそろおねいちゃんの国の話を聞かせてよ」

足をバタバタと揺らしながら、早く話を聞かせてと駄々をこねるこの少年が、いつか人でなくなってしまうのかと少し悲しくなった。


私は目の前のご馳走を食べながら自分の国でのことを話した。


私「今日は美味しいご馳走をありがとうございました。」

少年の母「いいえ、久しぶりに外の国のお話が聞けてとても楽しかったわ」

少年の父「そうだな、この体になって実質永遠の命を手にしたわけだ。

そうなるとどうも時間はいくらでもあるからと外の国に旅行に行くのを先延ばしてしまうもんでね」


私は時間がありすぎると逆に行動しなくなるものなのかと不思議に思った


つづく

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