お姫さま 救出作戦

「みんな…… くれぐれも、怪我のないようにね」


 負傷した仲間サキパパに見送られ、勇者パーティーは進む。


「作戦どおりだよ。声かけ合って、頑張ろう」


 リーダー…… 池輝いけてる勇者の言葉に、皆がうなずく。


「な~に 五人ずつさ、よゆう よゆう」


 津宵つよい宣志せんし…… の言葉どおり。

 敵は中央と左右の通路に、五人ずつ配置する布陣だ。いったい…… どこが余裕か?


「さっ 祭壇に、誰かがたどり着けば…… 勝ちだ」


 只野ただの茂武モブ…… の言葉が、勝利条件を再確認させる。

 礼拝室の最奥、その祭壇上で不敵に笑う、悪の総統G。ホント…… ムカつく!


「サキが、お姫様? ……趣味の悪い冗談ね」


 聖女魔女…… が揶揄する

 姫こと巨城おおしろ咲姫サキは、ガムテで拘束されて、祭壇上の椅子に捕らわれの身だ。


「まあ…… なりゆきだよ」


 と言いつつ…… 魔桜まおうこと私も、魔女に同意したい。


 咲姫本人は、無自覚だと思うが……

 お嬢さま気質で高飛車なところが、鼻持ちならないときがあるからね。


 とはいえ、ロリコンの変態爺さんの嫁にされるのは、さすがにかわいそうだろう。


「みんな~ 準備は、いいかな~ 」


 声をかけてくる、黒ずくめのリーダー。

 彼ら十五人は、目出し帽の上から防護面ヘルメットを被り、剣と盾で武装している。


「オーケーです」


 いちど、皆を振り返ってから…… 勇者が返答した。


 私たちもまた、防護面ヘルメットで身を固め、剣と盾を握りしめる。

 手練れの勇者だけが、両手に剣を持つ双剣の構えだ。


「双方よければ、開始する」


 笛を手にする、青Tシャツの審判。


 各通路に五人ずつで布陣する、悪の総統Gが配下たち。

 対する私たちは……


 中央通路には勇者が、ただ一人。右通路に、戦士と魔王の二人。左通路に、聖女魔女とモブ…… 総勢五人のパーティーで挑む。


ピーーーーッ

「試合開始!」


 迷宮ダンジヨンに笛の音が響き、戦闘が始まった。





「やぁああーーー!」

パンッ パシッ ヒュッ …………


 気合い一閃、猛攻をかける勇者。

 双剣を巧みに使いこなして、一度に二人を相手どり打ち負かしていく…… スゴい!


 しかし直ぐに後列の敵が、負かされた二人に代わる。

 中央通路の敵は、左通路から一人増援したようで、六人が三段構えで対処してる。


 二対一の闘いを延々と、くり返しながらも……

 敵をジリジリ後退させる、勇者の猛攻。敵は後ずさりながらも、礼拝室の縦深を上手く利用して、試合終了まで逃げ切るつもりか。


「だーーーっ!」

「えい! えい!」

パパンッ ポン ヒュン パシ …………


 右通路の、私と宣志くん。

 私も、なんとか闘えてると思うけど…… やっぱり、未経験の差は埋められない。


 いっぽうで、さすがの宣志くん。

 素早い打ち込みで敵を翻弄してて、さすがの強戦士ぶり。スゴいね!


 走り抜けを警戒してか……

 こっちでも敵は五人が縦深陣形をとっていて、なんとか突破しても、後ろに控えていた敵に止められてしまう。頑張ってるけど…… ジワジワとしか進めない。


「ゎわぁあーーー!」

「くっ ふっ つっ 痛いわ!」

ビュン ポス パチッ ペチ …………


 左通路の、魔女とモブくん。

 私自身、闘ってるから…… 視界の端に捉えてるだけだけど。


 見た限り、運動が苦手なコンビにしては、四人を相手によく闘ってるようだ。もっとも、敵が意図的に前線を下げてるのかもしれないが。


 中央と左右の均衡をはかって…… 敵ながら、上手い。





「残り、三分~ 」


 青Tシャツの主審が、ストップウォッチを見て宣言。

 ヤバいよ…… まだ通路の半分までしか進めてないのに、残り時間が三分間って。


「ぅおおおおーーーー!」

パパンッ ヒュヒュ パッ パパンッ …………


 勇者が猛攻をかけて、中央通路の陣形が崩れた。

 中央の敵六人が全員で、必死に勇者の突進を抑えてる。


 戦士と私も…… 目の前の敵に、ありったけの攻撃を繰り出す。

 なんとしても、突破しようと……


「なっ?」

「え?」


 中央通路の敵から、戸惑いの声…… ?

 横目でチラ見すると…… 勇者が大きく後ろに下がってて。


 つられた敵も、勢いのままに前進して……


宣志せんしー!」

「おぅ!」


 勇者に応えた戦士が…… 長椅子の間をすり抜け、横移動。

 向かう中央通路では、敵の後ろが…… ガラ空きだ!


「追え!」

「させるなー」


 目の前の敵からも…… 三人抜けて横移動。

 戦士を追って…… あるいは、先回りしようとして。


「こっちこそっ だー!」


 追わせちゃいけないと…… 残る二人の敵に、私も強引に突進した。

 が……


スパーン! パァーンッ!

「ひっ!」


 頭頂部に強打をくらって、クラクラする。


 ヘルメットの上からとはいえ、大人が小学生相手に……

 そんなに強くすることないだろうと、怒りが湧く。


パーン! スパーン! ………… 

(…………プツッ)


 さらに連打され、意識が遠のく中……

 私の中で、何かが…… キレた?


『こんのぉ 無礼者がぁああ!』

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