第3話 Pー3
ダンジョンを進んでいったら豪華で巨大な扉にたどり着いた。
少し押したら扉が動いた。カギは掛かっていないようだ。
この先に待っているのは宝の山か、それとも強大なボスか……。
正解は後者だった。
牛頭の巨人が青龍刀のような武器を持ち仁王立ちしている背中が見えた。
すぐに扉をそっと閉じた。
「うん、ここはダメだ」
ここに来るまでに三度ネズミと遭遇して戦闘になった。あいつら突進しか攻撃方法がないみたいで、狭い通路で壁を背に戦えば勝手に壁に突き刺さって動けなくなるのでそこを手に入れた角でトドメを刺せば一般人の僕でもなんとかなっていた。
今の所他のモンスターには遭遇していないので、この階にはネズミしかいないのかもしれない。
少し話がそれたがともかく、攻略法の確立されたネズミならともかく明らかにボスですって主張している牛頭モンスターを相手なんて、いくら回復と強化の効果があるペンダントがあっても無理だろう。
だから逃げる。扉の先に行かなくてもまだ他に別の道や上りの階段もあるしね。
そんなわけで来た道を戻り別の道へ行く事にした。
「キュ?」「キュキュッ!!」「キュゥ~」
通路でまたネズミに出会った。しかも今回は前後を挟まれる形で。
やばいと思ったので前方のネズミの中を無理やり通り過ぎて目の前の部屋へと飛び込んだ。
その時に左ひざに角を受けてしまった。
ペンダントの力が発動したのを感じる。痛みが飛んで問題なく足は動く。すぐに血も止まるだろう。
袋からネズミの角を二本取り出して双剣のように構える。
逃げる僕を追って部屋にやってきたネズミを突き刺す。次に飛び込んで来たネズミの角う片手の角で弾き、もう片方で反撃。
ネズミの動きに慣れてきたのと、ペンダントの身体強化のおかげで戦える。
「おっと」
瀕死のネズミを踏んずけてしまった。戦闘の邪魔なので蹴り飛ばしておこう。
ちょうどいいので向かって来るネズミに向かってシュート。
蹴られたネズミの胴体が串刺しになる。
「キュッ!!」
頭を振って串刺しになったネズミを飛ばす。
――ガシャン!!
飛ばされたネズミが棚に、そしてそこにあったガラス瓶が割れる音が響いた。
そっちは無視して元気なネズミを攻撃。
まだまだ数が残っているので身体強化が消える前に数を減らしたい。
残り五匹、四匹、三匹。
「これで終わりだ」
持っていた角を投げて残り二匹に当てる。
よし、強化がネズミを倒せる程度まで効いている内になんとか終わらせられた。投げた角を回収したら移動しようか。
「キュ!」
そう思った僕のお腹を貫きネズミが現れた。
後ろから?
でも部屋の中に生きているネズミはいなかったはず。
一体何がと部屋の中に視線を動かす。
「けほっ」
咳に交じり口から血が吐き出された。
さすがにペンダントの回復能力でもお腹を貫かれたらダメなようだ。
そういえば、ネズミの中にもお腹を貫かれたヤツがいたな。そいつは何かの液体の入ったガラス瓶の中に突っ込んでいたような……
でも僕の腹を貫いた奴には傷一つなかったぞ。
ネズミが突っ込んだガラス瓶、もしかして回復のポーション?
棚の前の地面に出来た緑色の水たまり。あれが回復ポーションだとしたら、しかも瀕死のネズミの傷を塞ぎ元気にするほどの効果の。
「キュ」
ネズミからの追撃、ネズミの動きを全く気にしていなかったので左足の太ももに攻撃を受けた。
バランスを崩して倒れこむ。方向を上手い事水たまりに合わせられたのは奇跡だろう。
割れたガラスが顔や体に刺さり、水たまりで顔や髪が濡れる。
ま、いまさらこの程度の負傷誤差程度だけど。
もし予想通り、これが回復ポーションなら。
一か八か、水たまりを吸って液体を飲み込む。
ドクン――
骨が、肉が、血管が、失われた部位が再構成されていく。
ドクン――
戻った体で立ち上がる。今回の傷だけでなく前にやられて指も修復されている。
急激な変化にかゆいような、痛いような不思議な感覚だ。
ドクン――
体に刺さったガラス片が押し出され地面に落ちた。
かゆみが収まる。
緑の液体を飲んでから数秒での出来事。
「キュッ」
修復の驚きでネズミの事忘れてた。結果、背後から胸を刺された。
棚のガラス瓶に手を伸ばす。コルクを抜いて中身を飲む。
危なかった、心臓を微妙にズレていたことと、回復ポーションがまだ残っていたおかげでまだ生きている。そうでなかったらこれで二回死んでるな。
ポーションの効果で突き刺さったネズミも外れた。ちょうど手に持っていたのでポーションを飲んで空になったガラス瓶でネズミを殴る。
ガシャン――
ガラスが割れ、ネズミは壁まで吹っ飛ぶと赤いシミを作り破裂した。
「あれ?」
ペンダントの身体強化はもう切れている。それなのに今まで以上の力が出たような。
もしかして落ちて割れたポーションは回復だけでなく強化系のものもあったのかな?
全部回復だと思い込んでいたから胸を貫かれた時に適当に手を伸ばしてすぐに飲んだけど、回復じゃないと危なかった?
改めて残った瓶を確認する。中身は緑の液体ばかり。
「液体の色は同じだけど、効果は違ったりとかしないよね? これからのために持っていこう」
袋にポーションを三本入れて次へ出発だ。
もともと上履きが入っていた袋だしそんなに余裕はないのだ。ポーションの変わりに天井の破片はおいていく。鈍器として振り回して使おう計画は角のおかげで大丈夫になったからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます