最強探索者を目指して~狂戦士のダンジョン攻略~
戸下ks/トゲカッス
第一章 はじまりはじまり
第1話 プロローグ(P)ー1 目覚めるとダンジョンでした
「いてっ――」
ベットから転げ落ちた痛みで目が覚めた。
って、ここどこだ?
見慣れぬ壁、見慣れぬ天井。ここは明らかに僕の部屋ではないぞ。
雰囲気としては冒険ものの映画とかで見そうな王家の墓地とか宝物庫みたいなかんじだ。
「なんで僕、こんな所に?」
最後の記憶は夜に自分の部屋で寝たという事。
「夢……じゃないか。腕の痛みがリアルだ」
さっきベットから落ちた時の痛みが左半身にじんわりと伝わっている。それがこれは現実の出来事だと訴えている気がする。
「だとしたら、もしかしてここは……ダンジョンの中とか?」
ダンジョン――二世紀前に突然現れた地球上に存在しない謎の金属で出来た柱、通称『オベリスク』に触れる事で入れるモンスターの住む空間。
「でもダンジョンに入れるのは能力に目覚めた探索者だけ。例外があるとしたらダンジョン発生時に巻き込まれて閉じ込められる事故なんだけど……」
探索者――ダンジョンが現れると同時に人々の中から出現した特殊な能力を持つ人達。
この探索者だけがオベリスクに触れるとダンジョン内に入ることが出来る。そうじゃない人がオベリスクに触れても何も起きないのでダンジョンには探索者しか入れないのだ。
ただし、ダンジョンが発生する瞬間、そこにいた場合だけは探索者でなくてもダンジョン内に吞み込まれてしまう事がある。
それが今回僕の身に起きた事なのだろう。
「だとしたら僕の部屋にダンジョンの入り口が出来たのか……。
一緒の部屋で寝ているはずの義弟の姿は無い。アイツはこのダンジョンに巻き込まれていなければいいのだけど。
「朝になれば母さんが気付いてくれるかな?」
慎二が巻き込まれていなければ起きた時に気付くだろうし、そうではなくアイツも巻き込まれていた場合でも学校の時間になっても起きて来なければ義母さんが起こしに来てくれるはずだ。そうすれば部屋の中のオベリスクに気付いて、ハンター協会に救助要請をしてくれるだろう。
「だったら救助が来るまでなんとか生き残らないとな」
幸い今いる場所にモンスターの姿は無い。慎二の姿も無いのはきっと巻き込まれていないからだろうと信じて自分が生き残る事だけ考えよう。
一般人の僕じゃモンスターの闊歩するダンジョン内では自分が生き残る事だけで手いっぱいだし。
「ここにずっといれば大丈夫かな? でもモンスターの巣で、今は食事を探してどっか行っているだけでそのうち戻って来るなんて事もあるかも? だったら移動するかどこかに隠れる事も考えないと……」
助かるためにはまずは何か使えそうなものはないかの確認だ。
なんの力もない僕ではモンスターに対抗するなんて無理だ。生き残るためには使えるものを集めて逃げ隠れする場所を探さないと。
服は寝ていた時のパジャマ姿。僕と一緒に呑み込まれたのはベットのみ。それも一部は呑まれなかったようで左側が途中からなくなっている。そのせいでバランスを崩して傾き、僕はベットから転げ落ちて目が覚めたようだ。
「使えそうなのは避難時用にベットの横に吊るしてあった中学の時の上履きと、それを入れていた袋、充電していたスマホや目覚ましはなし、ベットの下のモノもないか。掛け布団は……この薄いのならマント代わりに使えるか?」
ダンジョンに呑まれたのは僕とベット、後は天井の破片だと思われる木製の欠片もベットの上にある。
ダンジョンが出来た範囲はベットと天井の間の範囲って事?
ベットの下には冬用の服が詰め込まれた箱やおもちゃ箱があった。おもちゃはともかく服があればパジャマ姿より良かったんだけどな。こんな姿じゃ助かった時に恥ずかしいし。
上履きとマントを装備。
袋に天井の欠片を入れておく。靴下に石や硬貨を入れて鈍器にするのも何かの推理ドラマか漫画で見たことがある。今回はそれを参考に鈍器を作ってみたわけだが、モンスター相手に使えるかな?
ま、何も無いよりマシだよね、気持ち的に。
「ベット周りで使えそうなのはこれだけか。次はこの部屋の中で何かあればいいな……」
ざっと今いる場所を見て回る。
岩を四角く加工したレンガのような壁、石の柱。たいまつは無いけど壁の所々に発光する岩がはめ込まれているようでそれが光源となっている。
光る壁を近くで見たが、取り外しは出来なさそうだ。外せたらランタン代わりに使えただろうに残念だ。
部屋に一カ所だけ一段高くなった場所があり、台座が設置してある。なんだか学校の教壇みたいだ。
「ん? 何か光った?」
一瞬だけキラリと光るものが見えた気がした。
台座の上に何か置かれている?
近付いて確認だ。そこにあったのは――
「ペンダント?」
チェーンで吊るされた銀で出来たメダル。そこに剣を構えた鎧の騎士の姿が刻まれていた。
「マジックアイテムってやつかな?」
マジックアイテムはダンジョンで手に入れた素材で作られる人工の物と、ダンジョンで手に入る天然物の二種類があり、どちらも何かしらの不思議な力を持っている。
そしてマジックアイテムは探索者じゃない一般人でも使用可能。
これを装備したら何かしらの力が使えるようになるかもしれない。そうすればダンジョン内での生存率が少しは上がるだろう。
「騎士が刻まれてるから、バリアとかで装備している人を守る力だったりしないかな? な~んてね」
なんとかなれ~。という気持ちを持ちながらペンダントを首から下げる。
するとメダルから藍色の煙が出て僕を包む。
「わ、なんだこれ!?」
手で煙を振り払おうとするが、当然そんなので払えるわけもなく。
「外せば消え……あれ、外れない?」
首からペンダントを外そうとしたが、なぜか途中で体の動きが強制的に停止させられそれを阻止された。
何度か試したけどダメだ。ペンダントから手を離す事は出来るけど、ペンダントを持って外そうとする動きだけが途中で止められてしまう。
「もしかして、呪われた装備品だった?」
ゲームでたまにある一度装備すると外せなくなる呪いのアイテム。このペンダントはまさにそれだったようだ。
やがてペンダントから出た煙は全て僕の体の中に吸収され消えていった。
「特に異常は……感じないかな?」
手をグー、パーとしたりその場でジャンプしたりシャドーボクシングをしたりしたが何も違和感を感じない。
あの煙は何だったのだろうか?
「煙が出て、外せないだけのペンダント? ハズレアイテムだったか……」
自在にあの煙が出せるならタコ墨みたいに逃げる時の目くらましに使えたかもしれないけど、煙の出し方がわかんないし。首にかけた瞬間に出たから再現をするには一度外さないといけないのだけど、外せないんだよね。
つまり現状ただのペンダントでしかないという事。
「ここにはもう何もなさそうだな。出口は一個だけ、あの先に行けばいいアイテムがあったりしないかな?」
部屋に一カ所だけどこかに繋がっていそうな場所があった。頭だけ出して様子を見て見る。
モンスターの姿は無い。まっすぐな廊下が続いていて、この壁にも光る石があるおかげで明るい。
迷路のようなダンジョンで僕がいた部屋は行き止まりの場所だったのかな?
通路の先には部屋っぽい入り口が二カ所とT字の曲がり角。とりあえず一番近い部屋を目指す事にした。
探索者さん、早く助けに来てください。
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