五日目

 胸焼けで目を覚ます。

昨日のせいで胃が重く感じる。

夜中にピザのLサイズは流石にきつい…

若い頃はなんでも来いだった。

ラーメン屋のはしごたってしていた。

まぁ、美味かったから良しとしよう。

男は鼻をならした。

水道水を飲み、歯を磨きながら考える。


 昨日は思わぬ邪魔が入った。

CMで願望を書き換えられるとはな。

次からはYouTubeは見ないでおこう。

だが、おかげで分かったことがある。

熱い食べ物も交換できる

無理矢理詰め込まれていたが、

Lサイズでも交換できる

器もイメージすれば器も可

この三点だ。


温度について考えてみるか。

熱いものは、深夜じゃなければ

ラーメンでも鍋でもステーキでも

思う存分に頼みたいところだ。

ということは高級料理も

いけるのではないのか?


サイズについてどうだ。

無理やり詰め込まれていたが

こっちが小さいのをイメージすれば

問題はない。

あのサイズならほとんどいけそうだ。

七面鳥の丸焼きとかじゃなければ

行けそうだな。まぁ、要らないがな。


器については盲点だった。

イメージが受け皿というか

下の台紙みたいなのまでは

イメージしてなかった。

頭に飛び込んできたのは

熱々のピザ、肉、カニ!

このイメージが強すぎた。

あとでCMを見返しながら食べていたが

若干違ったような気がした。

いつもの寿司や水のペットボトルは

もうイメージができているからだろう。

つまり、イメージがあればいいわけだ。

それらを総合すると、

自分に経験や強い印象を持てば

この世の料理は酒一本で食べれるわけだ!


 男は歓喜に震えていた。

今日の晩餐が楽しみで仕方がない。

スキップをしながらゴミを捨て、

冷蔵庫に向き合う。

小さな冷蔵庫はピザのカスが、

ところどころこべりついていた。

ぶつぶつ昨日のCMに文句をつけながら

小さな冷蔵庫を掃除していた。


 今日は休みだ。考える時間はある。

2個の願望を叶えられるか確かめたい。

それに、自分のリクエストが意外と乏しい。

外に出て、世の中の高い食べ物を

見に行くつもりだ。

男は久しぶりの街へ繰り出す。

世間は平日のため人も少なく

出歩くのも苦ではなかった。

平日を休みにしているのはこのためだ。

人混みが苦手すぎる。

行列ができている店は絶対に行かない。

回転率がいい店か、安い店しか行かない。

しかし、今は違う。

昔、疎ましく思っていた行列の店が

今は感謝すらしている。

こいつらは並ばないと食べれない。

しかし、今の俺なら並ばなくても

冷蔵庫を開ければそれが出てくる。

あまりの優越感に心が震えた。

普段見えている景色が違って見えた。

少し行列があるとその店を調べ

写真を撮り情報収集に余念がなかった。

つい、夢中になっていた。

もう3時間以上は歩いている。

自分の本気さに今更ながら

笑いがこみ上げてきた。

昔の俺ならこんな面倒くさいことはしない。

人は変われるんだな、と改めて思う。


 昼を食べていないので、

どこか適当な店に入る。

ほかの美味いものはないか、

酒のアテとして最高の一品を探す。

メニューをスマホで撮影。

他の料理はメニューの名前から考えれば

おおよそのイメージはつく。

しかし、写真がないほうが多い。

そして、実際に高いものを払うのは癪だ。

考えた俺は何回もトイレに行くふりをして

周りの客の料理を眺めていた。

店員に怪しまれたが、気にすることはない。

どうせ二度と来ないからだ。

メニューの中でも安値の品を頼む。

それでも合計1000円を超えた。

気に食わないが、今後のためと言い聞かす。

ゆっくり作るのが手間暇かけてますと

勘違いしてるいるのかやけに遅い。

ますます俺は二度と来ないと誓う。


ウェイターがごにょごにょ言いながら

俺の前に料理を出していく。 

ガーリックトーストと

ラム肉の串焼きである。


ガーリックが脳を刺す。

俺はすぐさま手を伸ばす。

ラム肉を頬張り、

ガーリックトーストをかじる。

何枚でも食いたい。

最初の感想だった。

ラム肉のうまさ、柔らかさ。

ラム肉にかかっているスパイスが

食欲をぶち抜いてくる。

ラム肉のクセのある味と

バターとニンニクのダブルタッグ。

ラム肉のクセをバターとニンニクが

しっかりと旨味を引き出しやがる。

フランスパンの硬さが

柔らかいラム肉を咀嚼させている。

歯に響く食べ応え。まさにパーフェクト。


気づけば料理は無くなっていた。

普段食べないせいか

あの小さい冷蔵庫のおかげか、

気も胃も大きくなっていた。

ウェイターにおかわりと言い

別の気になっていた料理も頼んでいた。

オススメを指差して伝える。

ブルゴーニュ?

猪肉か?なんでもいいうまそうだ。


 俺は今か今かと待っていた。

ウェイターがガーリックトーストや

ラム肉を眼前に置いていく。

そして、おすすめの…と口を開く。

俺は差し出されたものを見て絶句する。


こちら、ブルゴーニュのエスカルゴです。


俺、カタツムリなんて頼んでねぇ……

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