第6話 戦場に立つ者

 夜が明けると、すぐに次の戦いの準備が始まった。


 私たちの部隊は前線に送られることになった。敵軍が進軍しているという報せが届いたからだ。


 私は槍を握りしめながら、馬車に揺られていた。横ではベルクトが剣の刃を確かめ、ガルスは黙って鎧の紐を締め直している。


(戦場に出るのは、これが二度目……)


 私は深く息を吸った。


「怖いか?」


 ベルクトが私の様子に気づいたのか、ぽつりと声をかけた。


「……分かりません」


「いい傾向だ」


 ベルクトは剣を鞘に収め、薄く笑った。


「最初の戦いは、怖くて当然だ。だが、次の戦いでは考えることが増える。どこで動くべきか、どうやって生き延びるか……そして、どうすれば仲間が死なずに済むか」


「仲間が……」


 そうだ。私は生きるために戦う。でも、それだけでいいのか?


「お前が戦う理由は見つかったのか?」


 ガルスが目を細めた。


 私は答えに詰まる。


「まだ……分かりません」


 すると、ガルスは鼻を鳴らした。


「なら、今は考えるな。戦場に出れば、否応なく答えが出る」


 その言葉の意味を、私はまだ理解できなかった。


◇◇◇


 戦場に到着すると、すでに空気は張り詰めていた。


 向こうの丘に、黒い軍勢が見える。敵軍だ。


 数では、こちらの方がやや劣る。


「前線に立て!」


 指揮官の命令が響く。


 私は槍を構え、ベルクトの隣に立った。


(戦うしかない……!)


 敵軍の先鋒が、こちらへ向かってくる。


「――行くぞ!」


 号令と共に、私たちも駆け出した。


◇◇◇


 戦場は混沌だった。


 私は槍を突き出し、敵の剣を受け流す。肉の感触。骨を砕く鈍い音。


「ぐっ……!」


 敵の剣が肩をかすめ、熱い痛みが走る。


 だが、私は止まらない。


(私は……生き延びる!)


 必死に戦ううちに、ふと気づいた。


(私が戦わなければ、誰かが死ぬ)


 仲間が叫び、倒れていく。


(私がもっと強ければ、助けられるのに――)


 その瞬間、私の中で何かが弾けた。


「うおおおおお!!!」


 私は槍を大きく振り、敵を貫いた。


 気づけば、私は戦場の中心で立ち尽くしていた。


(私は……戦える)


 そう確信した時、私の中に新たな覚悟が生まれた。

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