あなたにフラれてよかった

なごみ

第1話 危機的状況

「ねぇ、たまには外食しない? わたしのアパートばっかりじゃつまらないわ」



マンネリが一番よくない気がして、気分転換に素敵なレストランにでも行ってみようと思った。



なのに………



「悪いけど出かけたくないんだ。晩めし作るの面倒だったらコンビニ弁当でいいよ。今日は俺、焼肉カルビがいい」



ベッドに寝そべり、コミックを読んでいた尚也なおやは、冷めた口調でそう言った。




ーーー私は知っている。



尚也に二股をかけられているってことを。



だけど、そのことを問い詰める勇気がなかった。



そんなことをしたら尚也は逆ギレして、わたしを捨てるだろう。



「コンビニ弁当は飽きちゃったの。たまには美味しいもの食べに行こうよ〜」



「外食はカロリーが高いだろう。梨沙りさも少しはダイエットしたらどうなんだよ」



コミックから目を離した尚也が、冷たい視線を投げつけた。



「コンビニ弁当だってカロリー高いじゃないの。カルビ弁当のカロリー知ってるの?」



「俺は間食しないんだからガッツリ食べてもいいんだよ。晩めし前からポテチなんか食ってるおまえとは違うからな」



「さっきアイスを食べてたじゃない!」



筋肉質だからなのだろう。代謝のいい尚也は、食べても太らない体質なのだ。



「とにかく俺は標準だからな。デブのおまえに言われたくないね。なんだよ、その吹き出もの。いい歳してニキビか? 完全にオンナ捨ててるな」



「…………」



結局なにも言い返すことができなくなり、お財布とマイバックを持ってコンビニへ向かった。



元々、わたしが尚也を好きになって告白をし、付き合いが始まった。



ずっとわたしのほうが熱をあげていて、付き合い始めて二年になるけれど、これまでその想いが逆転することはなかったように思う。



それでも、付き合い始めた頃の尚也は優しかった。



それまでモテたことのない尚也にとって、女性から告白されるという経験は、やはり誇らしく、ときめくものであったらしい。



誕生日やクリスマスには素敵なジュエリーをプレゼントしてくれたし、美味しいお店を調べては、よく食べにも連れて行ってくれた。



夏は湘南までドライブに行ったり、冬は車にスノボを積んで群馬や長野のスキー場まで足を運んだ。



わたしは本当に幸せだったけれど、尚也だってとっても楽しんでいるように見えた。



だけど、ここ最近は………。



いわゆる、倦怠期に突入してしまったということか。


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