第2話

あの言葉を言ったのは一体誰だったっけ。


遠くない記憶だったはずだ。近しい誰かが言っていたはずだ。そんな簡単な事が分からなくなるくらい、正常とは掛け離れた位置に来てしまった。


これ見よがしに脳裏を過ぎった言葉は、結局なんの役にも立たなかった。



膨大に膨れ上がった欲は自分の手に負えないところまで来ていた。


遠くから見つめるだけでいいなんて、友達としてそばに居られればいいなんて、所詮は綺麗事でしかなかった。


心の奥の底では、そんな風には到底思えなかった。



私を見てほしい。


私に触れてほしい。


私だけを愛して、私だけを欲してほしい。



あの子にしていたように、私にも同じようにしてほしい。





縺れるみたいに身体を抱き締め合って、無我夢中で唇を合わせた。舌を絡ませ、吐息を交わせ、昂ぶる気持ちをそのままぶつけるみたいなキスだった。

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