男女比が1:5の男が少ない世界で、小物な彼女を振り回す

長月乙

第1話プロローグ

 

 高校の卒業式の日、顔は知っている程度の後輩から呼ばれ、彼女は一大決心をしたような顔つきでこう宣言した。


「先輩!好きです!時給500円でデートしてください!」



 変な告白をする娘だなと思い、俺は面白がって少し意地悪をしてみた。


「それって交通費と食事代は経費で出る?」


 すると彼女は少しパニックになったのか、目を回しながら


「あっ…ええと…自己負担でお願いします!」


 絞り出すように、そう答えた。


 あっ、そこは自己負担なんだ。


 そう思うも、彼女とのやり取りが楽しくなってきた俺は、デートくらいならいいかなと思い、その話を受けることにした。


「わかった。じゃあ来週の日曜日とかどうかな?」


「よよよ、よろしくお願いします!!!」


 そう言うやいなや、彼女は飛び出していってしまった。


 あれ?連絡先とかお互いに知らないけど大丈夫なのかな?と思いつつ、彼女の後を追ってみると…


 そこには辺りの友達に得意げに自慢するも、うっとうしがられていた後輩の姿が。


 馬鹿だなぁと思いながら、どうやって連絡してくるのかを楽しみに、俺は迎えに来ていた母の車に乗り込む。


 道中どうやら自分は、にやけていたらしい。


 運転席の母が言う。


「なにか楽しいことでもあったの?」

「いや。なんでもないよ。」


 そう言いつつ、散っていく桜の花びらを眺めながらこれからのことを想う。


 ──こんなにもワクワクするのは、とても久しぶりだ。


 いつもと同じように吹く風が、今日はやたらと心地よかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る