ブログで感謝企画💘Valentine特別編🍫➁

*第十二回ブログで感謝企画🍫Valentine特別編①💗の続きです。下記からメインストーリーを再開致します。↓


――――*



 森の中を歩き続けながら、絵梨がため息をついた。『……スイーって、行きたいな……自転車とかで……』と。

 すると、二人は顔を見合わせた。『やってみる?』『うん』と、そう話ながら――


瑠「アイテム召喚、乗り物! 出来れば自転車二台っ!!」


 すると、もくもくもくっと途端、辺りは白いモヤに包まれた。

 『わっ何も見えない……!』と、そう騒ぎながら、二人は白いモヤが引いていくのを待った。 すると次第に、モヤの中から、何かのシルエットが浮かび上がって見えてくる――……


瑠絵「ん??」


 モヤの中へと、必死に目を凝らす二人――……


(〝あのシルエットは……――〟)


 すると、モヤの中から〝ヒヒィィーン!!〟と、鳴き声が聞こえてきた。


瑠絵「へっ?!」


 そして二人の目の前へと、金色の鬣を生やした一頭の黒馬が現れたのだった。


瑠「まさかこの子がっ?!」


絵「……この特徴、この子多分、スパイダーとバンパイアが動物園から、連れ出してた子だよね……」


瑠「〝グルファクシ〟?!」


 すると黒馬がヒヒィンと鳴いて頷いた。 やはり、どうやら本当にグルファクシのようである。


(〝じ、自転車じゃなくて、馬が来た……〟)


 困惑しかない二人であった。


 二人は困惑している。 だがすると、先にオレンジ花リスとハートキャットが、嬉しそうに『チュチュ!!』『ミュゥミュゥ!!』と鳴きながら、グルファクシの背へと乗った。

 グルファも『ヒィンヒィン』と、快く鳴いている。

 ――どうやら、動物たちはもう打ち解けたようである。


 ――そして動物たちの不思議そうな眼差しが、じっと瑠璃と絵梨を見つめた。 彼と彼女らの瞳は言っている。 〝で?? アンタら乗らんの??〟と。


瑠「のっ乗ります……!」


絵「よろしくお願いします。 グルファさん」


 ――こうしてグルファクシの背に乗って、二人はペースを上げていくのだった。


 すると【役目を果たしたなら、そのお馬くんは現実世界へと戻れるよ!】と、ゲームのアナウンスが入るのだった。 ――どうやらそうらしい。


 二人はグルファクシの背を乗りその背を優しく撫でながら、『呼んでしまってごめんね』『来てくれてありがとう……』と、そう話している。


 ――二人はグルファクシの背に乗って、どんどん森を進んで行った。


 すると途中、何かの気配を感じ取ったかのように、グルファクシがピタリと足を止めた。

 グルファクシはじっと、真っ直ぐに森の闇の中を見ている――……


 瑠璃と絵梨、二人に緊張が走る。 ごくりと生唾を飲み込んだ――


 ……――すると暗闇の中から、『さっきは手下たちが世話になったようで』と、そう話しながら、不気味に笑った男が歩いてきた。


瑠「っまさか、さっきの山賊たちの……――」


 そして男の後ろには、やはり他の手下たちもいるようだ。


 するとゲームのアナウンスが【山賊のお頭が現れた!!】と。


 やはり手下を大勢連れたこの男が、山賊のボスのようだ。


 二人はゴクリと生唾を飲み込んだ。


絵「逃げようよっ!」


【お頭を倒さないとクリア出来ません。 本当に逃げますか?】


絵「っ逃げられないじゃん……」


 〝まっまた戦うしかない……〟と、覚悟を決めて、二人はグルファクシの背から下りた。


瑠「グルファ、この子たちを連れて、下がっていて!」


 不安げな顔をするオレンジ花リスとハートキャットをグルファクシに預けると、瑠璃と絵梨は山賊たちの前へと足を動かした。


瑠「よし! またライフルと爆弾を!」


【一度召喚して使ったアイテムは、既に現実世界へと戻っているよ!】


瑠絵「えぇ~?!」


 〝また、レア武器出るまでゴミで戦えと?!〟と、先が思いやられる二人だった。


 二人は顔を青くしている。

 ――だが敵は待ってはくれない。 ボスが『お前たち、やっちまえ!』と、手下たちに声をかける。

 すると、武器を振り上げながら、手下たちが一気に襲い掛かってくるのだった――!!


(〝絶体絶命!!〟)


瑠「え、何これ?! 今さらだけどコレ、バレンタイン編だよね?!」


絵「っ……そ、そうの筈……! クリスマスに引き続き……空気をまったく読まないブログ世界っ……」


瑠「プロローグっぽい辺りで、まともな恋愛ストーリーを期待していた皆に、どう謝ればっ――! ……」


絵「バレンタインキュンキュンストーリーを期待していた皆様、今回も……――〝謝罪致します〞!!」


 チョコを届ける為に、女たちが死ぬ気で戦う回。 正真正銘、熱い🔥バレンタイン編である。


瑠「フツーはこっちの〝熱い❤️〟じゃないのかな?!」


 ――さておき、ここを出てチョコを届ける為には、この迫りくる敵をどうにかしないといけないのだ。


瑠絵「おっお助けアイテム召喚っ……」


 〝戦うしかないっ〟と、泣く泣くアイテム召喚をした二人だった。

 ――さぁ何が出たかな?


【レア武器レベル2⭐️⭐️! 完結編 Ⅲ より〝椿 弥生作・胸キュン逆ハー恋愛小説〞!!】


瑠絵「どう戦えと~?!」


 困惑しながら取り敢えず小説を掴んだ。

 ――武器を振り上げながら、敵は迫り来る……――


 ――〝何か策でも書いてあるの?!〟と、そんな事を思いながら、パッと小説を開いた。 すると――


\パッパラパッパッパ~~ン!!🎺/


瑠「ぅわっ?! 何何何?! いきなりやたらとめでたい感じの音楽流れ始めたぁ~?!」


【恋愛小説で女子力がUPしたよ!! 魅力数値1→5!!】


 〝だから何のゲームだよ?!〟と、口をあんぐりと開けてしまっている二人だった。


 だがすると……――敵の何人かが、ハッとしたように、ピタリと足を止めた――……


「えっ?! すっすげぇ可愛い女の子たちじゃん!!」


「可哀想で、攻撃なんて出来ねぇよ!!」


「こんなこと、や~めた♪」


瑠絵「「……。 ……」」


(〝そういう事かぁぁ~~?!〞)


(〝つまり、丸腰の女相手に掛かってくるクズばかりだと思っていたら、こっちの魅力数値が1だったからって事ですか?!〟)


 ――こうして数人が『お頭! 自分、女の子いじめられねぇッス!!』と言いながら、去って行ったのだった。


頭「ッ!! あの裏切り者共がぁ~!! ――くっ……だが、仕方がないか。 ――残ったお前たちで、コイツをやっちまえ!!」


「勿論ッス! お頭!!」


 ――だが、敵はまだまだいる。 二人は再び窮地に立たされた。 〝またアイテムを――〟と、思った、その時だった――!!


\ランランラン♪ ラランランラ~~ン♪/


瑠絵「「……もう、驚かないよ……」」


【レベルUP!!✴️助っ人スキル⭐️解放!!】


瑠「ん?! 助っ人?!」


【〝助っ人召喚〟の掛け声で、ランダムで助っ人を召喚出来るよ!! 助っ人として現れる人物は、何かしらキミたちと関わりのある人たちの中から、ランダムで選抜されるよ!!】


(〝あっ、つまり、いつものランダムキャラくじ引き……〟)


 察している二人であった。


 ――その頃、黒幕非モテ男は画面の向こう側で高笑いしているのだった。『アッハハハハ!! だがそう、“助っ人は関わりある人物に限る”ってなぁ!! 誰が出る? ひ弱な女友達かな?? 知り合いのお兄さん?? フン!! 男が出たって、相手は武器を持った山賊さぁぁー!!』と。


 ……――だがその頃、瑠璃と絵梨はと言うと〝何かしら、関わりのある人が出るって?! あっ! 警察とか元暴走族とか裏社会の人とかっ……私たち、強そうな知り合い結構多くないか?! やった!! 強い人出ろ~~!!〟と、このスキルに大変喜んでいるようである。


 ――さぁ、誰が出るかな?……――


瑠絵「「助っ人召喚っ!」」


 ランダムキャラくじ引き、発動である!!


\ランランラ~ン♪/


【鈴菜!!】


瑠絵「「ッ?! ……」」


(〝ちっ違うの……!! すっ鈴菜さんが嫌とかじゃなくてっ……あのつまり――!! 普通の女の子出ちゃったよって……そういう事でっ!!〟)


 ――そして『え?! ここどこ?!』と目を丸くしている鈴菜が目の前へと現れた。 因みに彼女の腕の中には、チョコレートを溶かしたボウルがある。 そう、今日はバレンタイン。


瑠絵「ごめんなさいっ鈴菜さぁぁ~ん?!」


鈴「へ??」


 〝彼女にもっ私たちと同じ思いをさせてしまうなんてっ……〟と、キュッと胸が苦しくなる二人だった。


 ――そして画面の向こう側ではやはり男が笑っている。 『ホラなぁ! やっぱし女友達か! しかもこの女、チョコ作ってやがったな?! ちょうど良い! 一緒にゲームの世界をさまよえ!!』と。


 『かくかくしかじか……と、いう事でして……巻き込んでしまい、ごめんなさい……』と、謝る二人。


 だが鈴菜は目をパチパチとさせた後に、ハッとしたように、顔を赤くして片手で口を押さえた。


鈴「っつまり今から私たち、ちっ力を合わせて戦うのね……!! そ、それって、それって……まさに美しい“友情”……!!」


瑠絵「「……」」


(〝そうだった!? 鈴菜さんって、“友達ほしい人”だった!!〟)


 鈴菜は溶けたチョコレートの入ったボウルを、地面へと置いた。


 すると『チュチュ♪』『ミュゥミュゥ♪』と嬉しそうに鳴きながら、オレンジ花リスとハートキャットがチョコレートを舐め始めた。 隣でグルファも穏やかな表情をしている。


 ――そして鈴菜は高らかに宣言するのだった。


鈴「彼との同意があれば、バレンタインなんていつだって出来るのよ! 〝バレンタインデート〟って約束して、チョコ渡せば良いんだから!!」


絵「っ?! 鈴菜さん、さすがです」


瑠「っ?! そうよね! 事情を説明して分かってくれないようなバカな男となんて、付き合ってないつもりだし……!」


鈴「けどねぇ……――〝友情が芽生える瞬間のいうものはっ逃したならもう二度、来ないかもしれない〟のよー!!」


 〝たっ確かにその通り?!〟と、納得してしまう瑠璃と絵梨。


 そして鈴菜は画面の向こう側かと思われる斜め上の空中を、ビシッと指差した。


鈴「そこから見ているんでしょう! 非モテ男ー!! アンタ彼女もいないけど、そんなんじゃどうせ、友達もいないんでしょ!!」


 するとまた、ズギシャッ!! と、空中で鋭い音が響いたのだった。 言葉のナイフという名の攻撃である。

 そして案の定、画面の向こう側で男は『ぅっ』と痛む胸を押さえているのだった。


 瑠璃と絵梨は〝鈴菜さんやる~!!〟と、感心している。


 ――だがやはり――


鈴「さぁ! 戦いましょう! 友情の誓いにバトルを! えいっ!! 食らえ! 変な色のキノコ!!」


 鈴菜はむしり取ったキノコを山賊に向かって投げた。 ――すると、スパン! と、キノコは山賊の持っていた剣にぶつかり、真っ二つになったのだった。


鈴瑠絵「……」


 ――ポトッと虚しく、切れたキノコが地面へと転がる。


 ……――するとギロりと、不機嫌な山賊の眼差しが三人へと向いた。


鈴瑠絵「キャャャー?!」


 やはり鈴菜では、山賊に勝てっこないだろう。


 ――そして再び『お遊びは終わりだ!!』と、山賊たちが武器を片手に走ってくる――


 『キャャ~?!』と、大絶叫しながら取り敢えず三人は走る――


瑠「こっ今度こそ……! 裏社会の人とかこい! 助っ人召喚っ!!」


\ランダムキャラくじ引き発動!!/


\ランランラ~ン♪/


【シラー!!】


 すると『あら、ここは一体どこですの?』と、そう首を傾げながらシラーが現れた。


 鈴菜と絵梨は『へっ……おばあちゃん……』『こういう時に限って、男が出ない……』と、顔を青くしている。

 だが瑠璃が『……いや、シラー様、すごいよ……』と。

 『『へ??』』と鈴菜と絵梨。


「おい! 何だババァ、怪我したくなかったらそこ退きなぁ!」


 すると『……あら、何です? 騒がしい』と言いながら、瞳に鋭い光を宿したシラーが、男たちの方へと振り返る。


シ「わたくしと、やり合いますか?――」


 瞬間、シラーはサッと、両袖の中から隠し持っていた暗器の刃を取り出した――


鈴絵「えぇ~?!」


 そして二本の刃を華麗に操りながら、早々と山賊を二人程片付けてしまった。


 絵梨も鈴菜も、他の山賊たちも皆、鳩が豆鉄砲を食らったようになり、固まっているのだった。


瑠「さ、さすがシラー様……!」


シ「これはどういう事です? 柴山さん。 ――けれどまぁ、事情は後で聞きましょう。 今は、この方々をどうにかするのが先のようですね」


鈴「おばあちゃんカッコいい!!」


 『えぇ。 わたしくに任せなさい』とシラー 。だが――……


シ「ぅっ――! はっ……やはりだっダメですわ……! ……こっこれ以上交戦するとっ……こっ腰が――いってしまいそうですわ……はぅっ――」


瑠絵鈴「シラー様ぁぁ~~?!」


 〝やっぱりダメだったぁぁ~?!〟と、シラーをグルファクシの元へと避難された三人だった。


瑠「グルファ! シラー様をお願いね!」


ヒィィン!(任せろ!)


 そしてシラーは座ったグルファクシの隣に寝転がりながら『もうわたしも、若くはないのですね……』などと、ポツリポツリと言っているのだった。


 ――振り出しに戻り、三人は再び、大絶叫しながら山賊から逃げ回っている。


(〝というか何で?! バリバリ動ける青年出ろよ!? うちの男共、こういう時に当選しないで何やってんだよ?!〞)


 ランダムだから仕方がないが、三人に苛立ちが募るのだった。


瑠「三度目の正直っ!! バリバリ動ける青年っこ~い!! 助っ人召~喚!!」


\ランダムキャラくじ引き発動!!/


\ランランラ~ン♪/


【翠玉!!】


(〝敵じゃん?! あっけど、もしかしてこの人、戦える人??〞)


 すると『あれ?? ここどこですかぁ~?? 黄玉さぁ~ん?? 皆ぁ~??』と、困り顔で翠玉がやって来た。


翠「え……うそ……また私、はぐれちゃった?? う~ん……けどいつの間に、森に迷ったんだっけなぁ……」


瑠絵鈴「……」


(〝え?? この人、可笑しな世界に飛ばされた事に、気がついてない?!〟)


 『あ、あの……』と声をかけると、『わっ!!』と言って翠玉がバッと振り返った。


(〝え? この人、私たちいることに気が付いてなかった?! この人大丈夫かなぁ?!〟)


 翠玉は『ん? 誰??』と言いながら首を傾げている。


 ――だがその時『また可笑しな術で人を呼びやがったな!!』と、そう言いながら山賊が切りかかってきた。


 四人はハッとする。

 ――そして『キャャ~?! 何ですかアナタたちはぁぁ~?!』と、叫びながらも翠玉が剣を抜いた――


 〝おぉぉ~!!〟と、思っている瑠璃と絵梨と鈴菜。 そして翠玉は――


翠「嫌ぁぁ~?! 来ないでぇ~?! キャャャ~ー!!」


 ――と、泣きべそをかきながらも剣を振るい、ズギシャ! ズギシャ! ズギシャ! と、山賊を倒している。


瑠絵鈴「おぉぉ~!! すごーい!!」


鈴「頼もし~い!」


瑠「気が楽になった~!」


絵「現実世界に戻ったなら、この人が敵なんて~!」


瑠絵鈴「〝気が重くなった~!〞」


 ……――そして数十分後、依然泣きべそをかいてはいるが、山賊のお頭以外を翠玉が全員倒したのだった。


 〝おぉぉ~!!〞と、興奮気味でパチパチと拍手をする三人だった。 そして翠玉は――


翠「ぅっ……こ、怖かったぁ……」


 と、言いながら裾で涙を拭っている。 ――が、地面へと伸びている山賊の手下たちに『お……お前がな……』と、ツッコミを入れられている。


 ――そして残る敵は、お頭ただ一人である。


 キュッとしっかりと涙を拭うと、翠玉はサッと、お頭へと剣を向けた――


翠「――どうやら、アナタがこの人たちのリーダーのようですね。 私と、勝負しますか?――」


「……っ――良いだろう。 勝負してやろうじゃねぇか、小娘――!」


翠「手加減はしません。 アナタのようなリーダーは、一度痛い目に遭うことをオススメ致します」


 『何だと小娘!』と山賊のお頭が声を荒らげる。

 ――すると、彼女の目尻に溜まっていた涙が、キラリと光って見えた――


翠「……――“アナタのようなリーダー”には言って良いでしょう。 まったく好感が持てませんもの。 手下たちが全員やられてしまうまで、アナタはそこで、何をしていたんです?――」


 『黙れ生意気な奴め!』と言いながら、山賊のお頭も剣を抜いた。


 こうして勝負は一騎討に――


 ――互いに剣を構えると、二人は駆け出した――


 ――彼女の瞳は、しっかりと相手の剣を見切っていた――



(――大違いですね。 私の、好きな人とは――)



 ――そして、サッと振るった刃が、標的をとらえた――


 山賊のお頭は地面へと倒れ、そこに立っているのは翠玉である。


 ――彼女は剣をおさめ、振り返った。


 そこで見ていた三人と、順番に目が合う。


 瑠璃と絵梨、鈴菜は『ありがとうございました』と――。

 すると翠玉は、ふっと柔らかく口元を綻ばせたのだった――



 ――こうして山賊の一味に勝利した瑠璃と絵梨は、動物たちと助っ人たち、皆と一緒にゴールである宝箱の元を目指した。


 ゴールはもう、目と鼻の先だ。


 ――そしてついに、宝箱を見付け、一同は足を急がせた。


 ――宝箱を開くと、〝ゲームクリア〟の文字が表示される。


 途端、彼女たちは目映い光に包まれた――……



 ……――彼女たちは強い光から逃れるように、ギュッと強く目を瞑っていた。


 だが次の瞬間、〝ドンッ!! ガシャン!!〞という凄い音が響き渡り、彼女たちはびっくりしてとじていた目をひらいた。


 すると――


瑠「へ?! ここどこ?! 誰の家?!」


 訳が分からずに、彼女たちはキョロキョロと部屋を見渡した。

 知らぬ部屋だ。 だが、この部屋の雰囲気を見る限り、ここは“現実世界”だろう。


 ――すると彼女たちは、そこで口をあんぐりと開け固まっている、例の非モテ野郎の存在に気が付いた。

 どうやらここは、現実世界の彼の家のようだ。


 瑠璃と絵梨は男を指差しながら『あぁー~!!』と。


 だがすると男も顔を青くして指差しながら『あ?! あぁ~!!』と。

 男が指差している方向は、瑠璃と絵梨を飛びこえた向こう側である。

 『え? なになに?!』と言って、彼女たちは男の指差している方向を振り向いた。 すると――


「ヒヒィーーン!!」


一同「!!」


 一緒にゲームの世界から帰ってきたグルファクシの前足の下に、無惨な姿に成り果てたテレビがある。


 彼女たちは『グルファ、良くやった!』と。

 そして男は『なんて事を?! この馬っ――』と言って、キッとグルファを睨みつける。

 ――だがすると、フンと鼻を鳴らしたグルファに、男はギロりと睨まれる。

 思わず怯む男。

 グルファは一声鳴くと、前足を振り上げた――。 そして、ドン!! バキッ!! と、家の床を破壊した。


 頭を抱えながら『あぁ~?!』と、更に顔を青くする男。


 『なんてお利口なお馬くんなのかしら!』と、〝もっとやっちゃえー!!〞と思っている女たち。


鈴「グルちゃん! やっちゃえ! 家電家電! 全家電破壊の刑!!」


「ヒィーン!!」


 バキーン!! グシャッ!! ドーン!! バキン!!


 グルファクシにより全家電破壊の刑に処された男は、戦意を喪失し、床へと崩れたのだった――。 〝成敗〞である。


瑠「これに懲りたらもう二度と、こんな事をしないことね!」


絵「――今回は特別に、警察にも元暴走族の友人たちにも、突き出さずに済ませてあげます」


鈴「――そうね。 今回だけ特別に、裏組織の知り合いたちに突き出さずに済ませてあげるわ」


 〝っ……――え、なんだコイツら?! そんなにヤバそうな知り合いがいる奴らだったのか……?〟と、男はまた顔を青くしている。

 〝今回は突き出さずに済ませてあげる〟と、瑠璃、絵梨、鈴菜。 だが次の瞬間、彼女たちがニッと悪い顔で笑いながら、サッとシラーと翠玉を差し示した――


瑠「……まぁ私たちが黙っていてあげても――」


絵「……裏の組織に属しているシラー様と翠玉さんに、アナタを許す気がなかったのなら――……」


鈴「私たちの慈悲なんて、何の意味なんてないけどね~? ――怖~い人たちに、怖~い事されちゃうかもね~?」


 『ギャャ~~?! ごめんなさぁ~い?!』と、顔を真っ青にしながら頭を下げた男だった。


 そしてシラーと翠玉はと言うと、何故かゲームの中から抜け出てきてしまっていた、オレンジ花リスとハートキャットをモフモフしていたところである。

 『なんて可愛らしい! モフモフですね!』『連れて帰りたいわ!』と翠玉とシラー。 そして笑顔で振り返り――


シ「こんなクズ男でも、この子たちの生みの親なのですね」


翠「良いでしょう。 今回は多めにみましょう。 この子たちの生まれた世界を守る為にも、ゲームの作り手であるアナタは必要です」


 ――こうして、オレンジ花リスとハートキャットのお陰で命拾いをした男だった。


 そして彼女たちは『っ……待ち合わせが!』『早く帰らないと……』と、そんな事を話しながら、この家を去る――


瑠「じゃあね! キノコのデザイン微妙なくせに、モンスターのデザインは最高な非モテ男!」


「っおいお前たち、そっちは玄関じゃないぞ!」


一同「えっ??」


「ヒヒィーン!!」


 ――ドカーン!!


絵「あ、“玄関そっちじゃない”って教えてくれて、ありがとうございました」


鈴「けど、お気遣いなく! 本当の玄関ではなくてもたった今……――!」


一同「グルファが前足で、玄関に変えてくれましたから!!」


 『……もう本当にっ……早く帰って下さいっ……涙が止まりませんっ……』と、ズタズタになった我が家を前に、彼女たちを泣いて帰したがっている男であった。


 ――彼女たちは急いで男の家を飛び出し、時計を見る。 そして目を丸くした。

 ――空を見上げて見ればそこには、駅の前までやって来た頃と同じ、徐々に暗くなり始めた空があった。

 何時間もゲームの中にいた感覚は確かにあったのに、あの世界で過ごした時間は、現実世界の時間の中では、ごく僅かな時間だったのだろう――


 『……やった……間に合う』と、呆気取られながら、瑠璃と絵梨は顔を見合わせる。


 すると鈴菜は『ならまた、チョコの材料買って帰ろうかな』と、皆に別れを告げると、近くのスーパーマーケットへと走って行った。


 シラーはまず『グルちゃんのことは任せて下さい。 部下に元の場所へと帰しておいてもらいますから』と。 ――そして『――バレンタインは本来、男性から女性に花を贈るのが主流なのです。 ――私も部下を呼び帰ります。 あの人が何を用意してくれているのか、とても楽しみですもの』と、そう話して口元を綻ばせていた。


 瑠璃と絵梨は〝部下が来るまでもう少し待つ〟と、そう話すシラーと、そして翠玉に別れを告げると、また駅を目指して走り始めた。 ――バックに手を入れて、そこにちゃんとチョコレートがあるのを確認して、ワクワクと胸を踊らせながら――


 ――そして翠玉もシラーに『では――』と、そう一声掛けると、足を動かし始める。

 少し歩いた場所で彼女は一旦足を止めると、内ポケットから、ラッピングしたクッキーを取り出す。

 じっとそれに視線を落としてから、彼女はため息混じりに、クッキーを内ポケットへと戻した――。

 彼女の背中は、暗くなり始める街の中へと消えていったのだった――……



 ――夜はこれから。 今夜はバレンタイン。


 好きな人へと、形にした愛を、伝える日――


 ……――どうか今夜は、いつも伝えきれない私のこの気持ちが、アナタへと全て、余すことなく、伝わりますように――




♡――【Valentine特別編・end🍫】――♡




 ありがとうございました。 ではまた、第十三回と本編でお会い致しましょう✨



2022/2/13

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る