1 日本の神話に伝わる伝統的方策
「というわけで連れてきたから、兄さん、よろしく」
「そんな理由でひと山越えて来るんじゃありません」
テーブルをはさむソファに妹と向き合って座り、真白は大きくため息をついた。
私は
その事務所に珍しいお客さんが顔を出したのは、ある晴れた祝日の昼過ぎだった。
日野
その隣でソファの上に膝を抱えているのは、
二人が暮らす町からここまでは山を超えてこなきゃならないんだけど、美雪ちゃんの運転する車の中でもずっと布団を手放さずにいたらしい。すごい根性だ。観察していると、クリッとした目がこちらを向いた。
「あんたがオウメガハラ? ほんとに髪が青いんだ」
それで美雪ちゃんも私に気づいて、わざわざソファから立ち上がった。
「クウ先輩、お久しぶりです」
「おひさ、美雪ちゃん! 先輩なんて呼ばなくていいよ~」
「でも高校の先輩ですから」
美雪ちゃんは私や真白と同じ高校の卒業生だけど、時期はかぶってない。それでも敬語を崩さないのだから律儀な子だ。私は紅茶のカップを四人分置くと、真白を隅に押しやってソファに腰掛けた。
「それで、うちの事務所に相談っていうのは?」
「こいつです!」
と、理紗子ちゃんの肩を布団越しに抱きかかえる。
「理紗子ったら昨日も大学サボって一日中寝てたみたいで。今日こそは布団の虫をやめさせたいんです。身内の恥には身内の恥をぶつけるしかないと思い連れてきました。クウ先輩にはお見苦しくて申し訳ないですが……」
「なにさ、恋人を見苦しいだなんて」
「兄を身内の恥呼ばわりするんじゃありません」
「こんないい女つかまえといてなんて奴」
「妹なら兄の登場に合わせて紙吹雪をまくくらいの敬意を持ちなさいよ」
ふてぶてしい顔をした二人が美雪ちゃんの正面と真横から交互に言った。真白の奴、妹の恋人とはほぼ初対面と言っていたのに息がぴったりだ。ソウルメイトなのかもしれない。
「なるほど、布団から出られないんだね」
私がじっと目を向けると、理紗子ちゃんは体の前で重ねた布団の両端をぎゅっと押さえた。放してなるものかというような強いまなざしに、私はニッと笑う。
「引きこもりを招き出す手段なら、古事記にも載ってる。ダンスパーティだ!」
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