第5話

 翌日、俺は訓練場に向かった。


「ようこそ、我が第1部隊第3分隊1班へ! 歓迎する! 」


 俺は他の7人の班員とルーク班長と顔合わせした。


「はじめまして、フェリネシス家次男、ホーク・フェリネシスです。よろしくお願いします! 」


「私のことはいいね、班長のルーク・トンガだ」


「私は副班長のセバスチャン・ベルウッドよろしく」


「俺はオリバー・アッシュトンだ。この班の中じゃ、一番の腕っぷしだ」


「ローレンス・モンタギューだ。よろしく」


「ゴドフリー・ハワードだ」


「フランシスコ・ロタードだ」


「レジナルド・フェアファクスだ。よろしく」


「僕はギルバート・ペンブローク。よろしくね! 」


 ギルバートはどうやら俺と同じくらいの年齢ぽかった。それ以外はみんなランドと同じか、それ以上の年齢ぽかった。


「軍では身分などの階級は関係なしに、軍の中での特別な身分で扱われるけど大丈夫かい? 」


「全然大丈夫です」


「それは良かった。では改めて、歓迎するよ。じゃあ、私達は任務があるからこれで。ホークは明々後日から正式に私達の班に合流して同じ防衛の任務に当たってもらうよ」


「わかりました」


 さてさて、これから地獄の3日間のはじまりだ。


 俺は教官室に連れて行かれた。


「さて、お前が新入りか」


「そうです」


 教官室は普通の執務室のような場所で、眼の前には強面のおじさんが座っている。いつかの外科の教授みたいだ。


「では、3日間。この軍隊の基礎となる技術、知識、などを詰め込んでやる。このグリム・リーパー式、トレーニングをすればお前も半人前の騎士になれるだろう」


 うん、地獄の3日間をやっても半人前なのね。このグリム・リーパー式トレーニングはイーグ兄さんから聞いていた。でも、実力は確かで、しっかりと3日間で基礎をつけてくれるらしい。


「それでは早速、走り込みだ」


 はいはい、地獄確定です。


◇◆◇


「疲れた…… 」


 俺は死に体の状態で自分の部屋へと戻った。


「ホーク様。お疲れ様です」


 ランドがマッサージをしてくれた。


「ランドはどうだったんだ? 」


「私ですか? 私はちゃんと執事学校に入学できましたよ。作法とか、料理とか、護身術とか、魔術とか、基礎から学んでいきます」


「そうか……俺はもう地獄の始まりだよ」


「頑張ってくださいね」


「はぁ……魔法のほうが得意なのに…… 」


「そうは言われましても、魔法使いも地獄の3日間は受けると聞いていますよ」


「でもなぁ」


「まあ、料理は作ってあげますから。頑張ってくださいね」


「ランド、頑張れ頑張れ言っている指導者は無能なんだぞ」


「私は指導者でないので大丈夫です。ホーク様の執事ですから。それに、無能ならば夕食も出しませんよ」


「すみませんでした」


「よろしい」


 くそっ、ランドにはやっぱり敵わない。


 それから2日間、俺は地獄の訓練を受けた。剣術ではボコボコにされ、怪我をすると治癒魔法使いに治され、そしてボコられる。うん、生き地獄だ。でも、その3日間を終えると、俺はしっかりと強くなっているような気がした。


「じゃあ、正式に同じ班の一員だ」


 俺は教官から終了書をもらってルーク班長のところへ行った。


「私達の班の任務は今のところ、城壁での監視、防衛だ。二人一組で監視する。まずは私とペアを組もう。そのうち、ギルバートとペアになってもらうよ」


「わかりました」


 そう、王国軍の主な仕事は監視、警備だ。王都、アレクサンドが攻撃されないか常に城壁の上から監視する。一週間に3日間任務、監視をし、2日間訓練、2日間は休みという、週休2日制が取られている。


 これは元の世界のときよりも全然楽だ。兵舎から城壁まで馬で飛ばして5時間だ。朝早くから行って、次の日の朝に交代、そして休暇という感じになるらしい。


 まあ、週2で当直があるような感覚だろう。


 俺は全然仕事がなくて暇なんじゃないかと思いながらルーク班長と城壁に向かった。すると、結構いろいろな事があった。


「さて、ホーク。この城壁の監視で一番注意しないといけないのはなんだと思う? 」


「やっぱり遠方からの攻撃ですか? 」


「いや、最近はそんなことはめったにない。一番注意しないといけないのはあれだよ」


 ルーク班長が指を指した方向を見ると、城壁を登っている人がいた。そう、不法入都者だ。他の国、または領地から王都に仕事などを求めて不法に入都してくる人が結構いる。


 本当は俺達が入ってきた時のように入都審査を受けてから入らなければいけないのだが、その資格がない、ただ働きに来たりする人は違法だとわかっていても不法入都するしかないのだ。


「よし、じゃあ止めに行くよ」


「壁に登っている人をどうやって……」


 すると、ルーク班長は不法入都者がいる城壁の上まで行き、


「【サウンド】不法入都は禁止となっている。これ以上壁を登るなら不法入都者として現行犯逮捕し、法の裁きを受けることになる。すみやかに退去せよ」


 と、拡声魔法を使って呼びかけた。それでも、その人……おじさんは言うことを聞かなかったので、


「じゃあ、ホーク、行くよ」


「どこに……」


「しっかりとロープを身に付けてね」


 そして俺達はその不法入都者のところまで降りていった。そのままロープで身柄を拘束し、拘置所に馬で連れて行く。この人たちはとても弱っていて、簡単に抵抗することもできずに拘束された。


 なんだか可愛そうだ。


「可愛そうだなんて思ってはいけないよ。こうやって入都してこようとする人の中には他の国からの暗殺者もいるから。しっかりと拘束して罰を与えないといけないんだ」


 ルーク班長の眼差しは真剣だった。


「わかりました」


 結構この仕事大変だ。

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