あの夢を見たのは、これで9回目だった。
風鈴
第1話夢の中へ
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
『あぁ、まただ』
草野春生くさのはるおは、深くため息をついた。
何回見ても最後の所がクリアできない
そうだ、もうかれこれ9回は見ている
ちゃんと数えた事はないが、あと一息で攻略できるのに何故だ、何が悪い?
あれが、クリアできないと最終段階のステージには登れられない。
最後の最後にあれはないよなぁ。
昨日までは居なかったキャラクターが出てくるなんて、それも今まで以上に強い
随分、俺はここに来るまで、努力もしていた。
あのバーチャルゲームにハマって、俺は殆どの夜をあのゲームに取り込まれてしまっている。
日中は、普通に生活することができる。あなたの睡眠時間をゲームに費やすと言う触れ込みだった。ボーナスで専用のVRを買って今年になって始めた。面白くてゲームオタクの血が騒いだ。
始めの方は、本当に会社にも行って仕事もできたから、楽勝だった。それが、2週間を過ぎる頃から昼間の仕事が少しづつケアレスミスが続き、会社の上司と喧嘩して仕事を辞めた
始めは罪悪感に苛まれていたが、段階を上がる毎に、それも忘れて没頭し出した。
今、何月、何日、何時、さえ気になることなくなる状況になってからは、日に一回のコンビニも週一回くらいになった。お腹が空いて困ると言う煩わしさも、俺は死んだのか?時には思うが、あと一回アレをクリアして死にたいと思うのだ。
もう、これで最後の睡眠薬だ、さぁ最後のダンジョンにいくそして、クリアする。
それが、俺の人生の最後になっても良い。
それから、最後のステージに上がった途端夢は闇に変わった。俺は、夢を見なくなった。
気づけば、俺の周りにはたくさんの機械がある。
俺は、ダンジョンの攻略できたのか?
「草野春生さんですね。わかりますか?」
「はい」
「あなたはアパートの家賃を払っていなかったので、大家さんが取り立てに行って衰弱しているあなたを見つけました。ここは病院です」
「俺は、“夢中無双”ってゲームをしていたのに」
「アレの中毒者か、あのバーチャルゲームは配信禁止になりました。アレで本当に死んでる方もいます」
看護師が、答えた。
「えぇ〜っ、配信禁止」
主治医と名乗る男が、話し始める。
「あなたは、大家に毎朝ちゃんと挨拶してくれたのに、このところ会わないことをおかしいと思っていた。出張かとも思ったが、長期の出張の時は連絡するぐらい真面目な人が、家賃の支払いをしなかったのがおかしいと言って、部屋に入ったと聞いています、良かったですね」
「俺は、ダンジョンを攻略できたんだろうか?」
「多分、多くの人が夢の中で最も知りたい事でしょうが、あの配信会社は、あの被害者の親達に襲われてサーバーも何もかも燃えたらしいです。だから、あなたの成績は一生わからないと思います」
「そうですか」
「あなたは、極度の睡眠不足と過剰な睡眠薬の摂りすぎ、栄養失調が見受けられます。後少しは入院が必要です」
俺は、それから、少しずつカウセリングと治療を併用されて、半年後にやっと退院した。田舎から両親が迎えにきてくれた。
田舎での穏やかで、ネットも見ない日々の中で過ごしているとそれでも人は生きていけるのだと思う。
今でも、夢を見るが、あの夢を見ることがない。
しかし、たまにあの10回目の夢は見たのかを知りたくなる
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