子ライオンと優等生
剛 快伽
第1話 エピローグ side:勝村
思い出はいつの日も雨。
といわれるほどに小学校のイベントは、毎回豪雨に見舞われてきた。
しかしながら、今日の、中学校の卒業式は、暖かい日差しに恵まれ、多くの人が穏やかな表情をしている。
となりに並んだ平倉さんも、つぶらな二重を細めて、薄ピンクの触り心地が良さそうな唇の口角をあげて微笑んでいる。
そのあまりの美しさに見惚れていると、平倉さんは、いたずらっぽい笑顔をこちらに向け、跳び跳ねるようにこっちへ寄ってきた。遅れてフワッと柔らかい匂いがする。好きだ。
「ねぇ、茶銀。最後まで下の名前で呼んでくれないの?」
「…っ、」
下の名前で呼ばれるのは初めてだ。私は当然のように、平倉さんのことを下の名前で呼んだことはない。だけど、
「…ん、そうだっけ、 優…さん。」
「照れてるし。呼びすてにすら出来てないじゃん。まあ、名前覚えてただけで良いか。」
仕方ないだろ。私は今まで誰も呼びすてにしたことはない。 ちゃん付けすらもなんかチャラいといわれ、やってこなかったんだ。
という不満げな気持ちを込めて、軽く平倉さんの腕を殴る。すると平倉さんは小さな声で
「…可愛いな 子ライオンみたい。」
「なんでライオン?」
可愛いなは聞くの恥ずかしいのでスルー。
「ヒョウでもチーターでもないし…。」
…猫科の猛獣であることは確定なんだな。
「…大きくなって再会したら、がおーっと、襲うかもしれない。」
「ふふん…私の身長を抜かせるかな?」
私と平倉さんの身長差は10cm弱、抜かせるわけがない。
「…なるから。手懐けるなら、今だよ。」
平倉さんを真似して、いたずらっぽい笑顔をつくってみる。
「もう十分懐いてるくせに。」
二人、顔を見合わせて、にへらぁっと笑う。
昔は何にも興味がなかったのではないかと我ながら思うほどに、何も思い出がない。でも、今は違う。これからも。あなたに出会った時から変わったんだ。
春らしさはない、ちょっと冷たく、きりっとしたかぜにつつまれ、思い出と共に歩き出す。今日でさよなら。この場所よ。
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