第3話 2人の馴れ初め

今やキャンパスの名物カップルとなった2人が付き合い始めたのは、それほど昔からではなかった。


同じ保育園から始まり、小学校、中学校、高校と一緒なのが当たり前だった。それでも互いに過ごす時間も徐々に少なくなり、すれ違う事も多くなってから慣太は幼馴染を好きだと自覚する。


高校2年生の秋、慣太からレンに告白した事により長い幼馴染としての関係から恋人同士の関係へとステップアップした。2人の両親は当事者以上に騒ぎ、やれ式はいつにするだの孫の顔を早く見たいだの、先の早い事だ。


付き合い始めてから1週間ほどで2人は心も身体も結ばれ、慣太は幸せ絶頂だった。一緒に受験した大学も無事2人とも合格。双方の実家から少し離れている事もあり、両親たちの提案もあり大学に入ったら同棲を始める事になった。


付き合ってから何もかも上手く行っている、と思っていたが…それは慣太がまだレンの秘密を知らなかっただけであった。


彼女の浮気…他の男との肉体関係を知った時にはおかしくなりそうだった。大学の友人から、レンのホテルへ入る瞬間を見たと聞かされ「ちゃんと確かめた方がいい」と言われた。


恐る恐るレンに尋ねると呆気なく認めた。ただ本人としてはただの遊びで、彼氏は今も昔も慣太だけだと言う。


一度の過ちぐらいは許そう…俺たちの繋がりはこんな事で切れるほどやわじゃないはずだ…そう言い聞かせた。しかし2度、3度…レンの浮気は止む事がない。


募って行く怒りのやるせなさに慣太の我慢は決壊してしまい、ある日突然他の生徒のいる前でレンの浮気の糾弾を始めた…これがキャンパス名物誕生の秘話である。


皮肉な事に、大勢の前で大声で糾弾を行った事が慣太のストレス解消に役立つこととなり、結果2人が別れる事なく今日まで続いてきた要因だ。


そして今日もまた慣太と大声が響き、レンが抑揚なく返すというやり取りが始まるのだった。

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