白面の陰陽師、まかり通る【KAC20255】
プロエトス
前編 「天下無双は胡散臭い」
――きいぃぃいいいっ! ひぃやあああああああ!
普段であれば
人のものではあろう……が、ひどく
「……これは、また。認識
「山奥とかに移せなかったんですかねえ。とっとと行きましょう」
通りを行く人々が何事かと足を止める中、逆に一組の男女だけ足を速める。
男女……と言っても、体格には親子ほどの差があった。
小柄な娘と長身の男である。
共に和装であることも合わせ、ここまで相当に人目を集めている。
が、どちらも周りを気にする風さえなく、
後に残された通行人たちは、今し方、見聞きしたものが気のせいだったのかというように一瞬だけ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこから程近い、とある邸宅の屋内にて。
モルタル仕上げの壁に取り付けられた
「もう、やめてくれえ。なにが不満だ。どれだけ金を使ってやってると――」
「アタクシは悪くない、アタクシは悪くないわ……そうよ、アタクシは精一杯、母親をやってた。どうしてアタクシだけがこんな目に……アタクシは悪く――」
扉の前、廊下の隅には身なりのいい中年男女が何やらぶつぶつと
そんな様子に
衝撃に耐えきれず枠を外れ、本来の可動域とは異なる廊下側へ小さく開く扉、その中よりヘドロのような
「「ひっ! ひぃいいいいい!」」
そのとき!
――
中年男女の悲鳴とは
瞬間、壁に備え付けられた照明などではありえない無色透明の
「……フッ、火急のご様子ゆえ、呼び鈴もノックもなく失礼しましたよ」
「門とドアの修理費は必要経費に含めさせてもらいますので
呆然とする中年男女の前に歩み寄ってきたのは、やはり一組の男女だった。
見るからに
一方は小柄な娘である。見たところ、義務教育を終えているかもあやしい。
顔には猫科の動物と通じる
もう一方は、隣の娘と比べずとも長身の青年である。
こちらは誰が見ても美男……人によっては「絶世の」と評すほど整った
共に神官とも仏僧ともつかぬ変わった和装に身を包み、現代日本の街中では、さぞや人目を集めてきたであろうことが
「いろいろ説明が必要かと思いますが、まずはそちらのお話から
「道士さま、一仕事終えた気分でいるとこ悪いんですけど、こっちをこのままにしとくおつもりじゃないでしょうね?」
「今のでしばらく大人しくしているでしょう。委細は任せます、
「はいはい、そんなこったろうと思いました」
と、そこでようやく我に返った中年男が口を開く。
「お、お、お前たちは一体……」
「おや、人を呼びつけたのですから、状況からお察しいただきたいものです」
「そ、それじゃあ、
小柄な和装少女が中年男女へ向き直り、演技めいた
「いかにも。
応じて身体の前で
「
そう名乗りを上げた。
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