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「そう、王子様。まあ、小学生の頃に幼馴染に王子様はいるって熱弁したらボロクソに馬鹿にされてね。それで、王子様はいないんだって分かったんだけど」

「幼馴染がいたんだな」

「うん、近くに住んでいた同い年の男の子でね。好きな人だったんだけど、小学4年の時に引っ越しちゃったんだ」


私が昔好きだった、ちょっと意地悪な男の子。

いっぱい意地悪するし私のことを泣かせるくせに、最後には優しく手を引いてくれるような男の子だった。

今思えば、王子様のことをボロクソに悪く言ったのも、彼なりの意地悪だったのかもしれない。


「でもまた会いに来てくれるって約束したの」


私は引っ越し先を教えてもらって手紙だって書いたのに、彼は一回も返してくれなかった。

帰ってこない手紙に、私も便りを送ることを数回でやめてしまったんだ。

いつかまた会いに来るって言ってた約束は、きっともう守られることはないのだろう。


ちょっと感傷気味な気持ちになっちゃう。


「そうか。笹本の友達が言っていた王子というのは、その幼馴染のことなんだな」


関君の相槌を聞きながら、確かに友達がちらっと関君の前でそんなことを言っていたな、と思い出す。



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