ラブドールの思惑。*新生活応援キャンペーン*

猫の尻尾

第1話:春日 祐奈の計画。

春日 祐奈かすが ゆうな」23歳。


祐奈には心に思う男性がいる。

その彼は彼女が務める会社の同じテナントビルに勤めている他の会社の男性。


名前は「磯村 壮介いそむら そうすけ」25歳。


壮介は広告会社勤務で主にチラシやポップの統括デザイナーをしている。

なかなかセンスがよく広告組合の会員たちからもその腕は評価されていた。

だから本人はフリーデザイナーになることも考えていた。


祐奈は壮介をビルの中にあるカフェでよく見かけた。

一度も話したことはなかったが祐奈は壮介に密かに思いを寄せていた。

壮介は祐奈にとってドンピシャのタイプだったからだ。


話はしたことはなかったが、祐奈と壮介はビル内で何度かすれ違ってはいた。

ただ壮介は仕事が優先で祐奈のことが目に入ってなかっただけ・・・

他の OLと同じだった。


話をするチャンスもないし自分の気持ちを壮介に告げる勇気もない祐奈。

そうやって悶々と日々過ぎる中で祐奈の脳裏におバカな計画が閃いた。


そのまま壮介がいるカフェに赴むいて気持ちを告白したほうが手っ取り早かった

のに手間のかかることを考え出した。


それは自分がラブドールになって壮介宅に運ばれていって、なしくずしに彼の

マンションに居座ってしまおうって計画。

壮介も男性だから届いたラブドールをゴミと一緒に捨てたりはしないだろう

って祐奈は踏んだ。


まあ、そんな曲がったことを閃く女だから、ちょっと変わっている。

いわゆるヤンデレにメンヘラ・・・ネガティブな上に自虐的。

おまけに直感で動くタイプだから後先構わず突っ走って失敗する。


それだけの為に祐奈は会社に辞表を出した。

身も心も犠牲にして働くに価する会社でもないと思ったし・・・。


さあ、それからはホームセンターに行って人間でも入れるデカめのダンボール

と数枚の板と梱包用のプチプチを買って帰った。

壮介が住むマンションの在り処は、壮介が会社から帰る時、こっそりあとをつけて

突き止めておいた。


祐奈は運輸会社まで行って運んで欲しいものが、ちょっと重いので一人でここまで持ってこれないので玄関先に置いておくから、取りに来てそのまま指定の住所に送ってくださいと料金を払って、帰った。


それから自分の首の後ろにエレキバンを一個貼ってダンボールの半分にだけガムテープを貼ってから、体にプチプチで巻くと手書きのトリセツをを持ってダンボールの中に入って内側から器用に半分だけガムテープを貼った。


息苦しかったから内側から氷を砕く用のピックでもって小さな穴を数個明けた。

しばらくの間の辛抱・・・問題はお漏らししちゃうかもしれないってことだった。


やがて宅配のトラックがやって来て玄関先に置いてあったダンボールをトラックに

積み込んで壮介のマンションに運ばれて行った。


身に覚えのないダンボールが自宅に届いた壮介は首を傾げた。

でも、まあ・・・何が入ってるかを確かめないと知りませんからって持って帰って

もらうのも気になったので、そのまま受け取ることにした。


で、ダンボールを開いたところ・・・中に女が寝そべった状態で入ってるじゃ

ないか?


「げっ・・・死体?・・・まさか?」


プチプチで包まれた女の上に役に立ちそうにない、ちっこいスパナと六角レンチと

取り扱い説明書が乗っかっていた。

そう、スパナと六角レンチは役に立たなくていいんだ・・・それらしく見せるために祐奈が入れたもの。

ラブドールの製造会社の名前は「アンドロメダ工業」・・・聞いたことあるような、

ないような会社名・・・それも祐奈が考えた社名・・・ラブドール専門業者オ◯エント工業をパクったものだった。


壮介は入っていたメモとトリセツを読もうとしてまた首を傾げた。


つづく。


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