第25話 エピローグ 怨霊幼女の秘密 その2 (エピローグ最終話)


□ サダの記憶のシェア つづき □


 玲子の家に着くと、中では両親が声を抑えながら言い争っていた。


 要するに玲子が死んでしまった今、この後どうするかで揉めているのだ。

 病院に連れて行くのか、救急車を呼ぶのか、警察に行くのか、それとも……。

 そして時折思い出したかの様に始まる責任のなすり付け合い。


 堂々巡りの言い争いが続く。


 ——アカン! 

 この親、このまま決められずにズルズル行くパターンや……。


 そんな会話を聞きながらサダは玲子を抱えて他の部屋を見て回る。

 父親の部屋に入ると玲子がブルッと身震いしサダの胸に顔を埋めた。

 そこに置かれた拷問道具に気付きサダが目を細める……。


 玲子の死体は別室で布団に寝かされていた。


 サダと玲子はその死体を見つめ暫く無言で立っていたが、唐突にサダが切り出す。

「レイコ、オマエどうしたいんや? オトンとオカンに復讐したいんか?」


 少し間をおいて玲子が答える。

「ふくしゅう……ってなに? おかあさんも……おとうさんも……かわいそう……。わたしの……せい」


「アホッ! おまえのせいな訳あるかい! あのクソ親のしょーもない口喧嘩聞いてたら全部分かったわ! それに今回だけとちゃう! 今までにあいつらオマエに散々……」


「でも……」


 サダは玲子を抱きしめる。

「もう、ええんや! 絶対におまえのせいやない……ないんや……」


 サダはボロボロと涙を流していた。


「あんな、玲子……もし誰かに悪い事してしもたら謝らなアカンやろ? せやけど、おまえの親は謝って無いんや。責任から逃げようとしてるんや。そういう奴らは警察に捕まって刑務所にぶち込まれるか、……死んでから地獄で痛い痛〜い罰を受けるんや! 全部自分らのせいなんや!」


「おとうさん……おかあさん……かわいそう……」


「しゃー無いんや……。酷いことしたからな……。せ、せえけどな、酷いことされたオマエは天国に行けるんや。もう、今までの事は全部忘れていっぱい幸せになるんや! 楽しみやろ〜?」


 玲子は一瞬考えたが、スグに首を大きく横に振る。

 そして懇願するように言った。


「……たすけて……」


「玲子、オマエ……そんな事言うたかてなぁ……。それに天使さんがもうすぐ迎えに来るハズやで」


 玲子は何度も首を横に振った。

「いきたくない……。わたし……たすける……」


「アホ、そんなん無理に決まってるやろ! もう罪が消える事は無いんや……。現世で償って浄化でもされん限り……」


 その時、サダの心にとてつもないアイディアが一気に閃いた。

「あぁっ! あるー! あるがな〜! ……なんか知らへんけどコレでイケるかもしれへん!」


 玲子が呆気にとられているのをよそにサダが続ける。

「ええか、玲子、よー聞きや! まずは怨霊になるんや! 怨霊になったらココに残れるで」


「おん……りょう……?」


「あー、分からんわな〜。そ、そうや、オマエさっき天国にも何処にも行きとーない、みたいに言うてたやろ? ほしたら『この世に居たい』って強く願うんや! 地縛霊や……って、これも分からんわなー。……『恨めしや〜』って話……も知らんか〜」


「……オバケ?」


「おぉー、知っとるか!? そうやオバケや! オバケになるんや! できるかー? う〜ら〜め〜し〜……」


「……う〜ら〜……ら〜……、め〜、し……? う〜ら〜、め〜し〜……?」


「そ、そうや! それでええ……。 ……ま、まぁ、それで、なんとかなるやろ。……あと、ちょっと怒ってみ。プンプンって」


「ぷん……ぷん……? ぷん、ぷん……、ぷんぷんっ!」


「……」


 ア、アカン! 

 やっぱ玲子に怨霊は無理かー!?


「……。あー、ス、スマン! やっぱそのままやと無理そーやわ。……ゴメン、許してな!」


 そう言うとサダはサッと玲子に取り憑いた。


『玲子、分かるか? サダや。さっきの鬼さんや。今お前に取り憑いたんやで。でな、今からワイがお前を怨霊にしたるわ。ええか?』


『……う、うん……』


『よっしゃ! じゃあやるで……』


 サダが詠唱を始める。

『クソジジイ、クソババア、腹立つわー! 好き勝手いたぶりよって、痛いんじゃボケ! この恨み、はらさぜおくべきか〜! 憎い〜、絶対許さん化けて出たる! クソが、殺したる、死ね!』


『しね?』


『アホ! お前はこんな怨み節は憶えんでええんや! 耳塞いどき! 聴いたらアカンで!』


 玲子は心の中でコクリと頷いた。


 再びサダが詠唱を繰り返していると、暫くして玲子の身体のそこかしこに青アザが浮き出てきた。


『よっしゃ、成功や。——って、なんじゃこのアザは……。あー、クソジジイがぁー! マジでクソやな……。……と、とにか成功や! 怨霊になれたで、玲子!』


 サダは玲子から離脱し彼女の目の前に立った。


「う、うん……ありがとう」

 そう言いいながら玲子は身体のそこかしこに浮きでた青あざを見たり、それに触れたりしていた。


「ごめんな、玲子、いやな事思い出させて……。ホントごめんな……」

 サダはもう一度玲子を抱きしめた。


「だいじょぶ」

  そう言いって玲子はサダの背中をポンポンと優しく叩いた。


 サダは涙ぐみながら苦笑する。


 少しして、ふと何かを思い出し玲子の肩を持って言い聞かせ始めた。

「玲子、それでな、後で天使さんが迎えに来ると思うけど、絶対なんにも喋ったらアカンで! 天使さんはな、たぶん優しそ〜なエエ人やと思うけど、もし話ししてもたら玲子を天国に連れてってしまうさかい……。だからな、知らんフリしとき!」


「う、うん」


「ほな、今から練習や! 喋ったらアカンで」


「うん」


「ほら、しゃっべったらアカンって!」


 玲子はハッとして手を口に当てコクッっと頷きかけたが、それもなんとか制しサダの目をじっと見つめて黙りこくった。


「よし、それでエエ! ほんなら、こないだ千造ハンが……あの千造おじちゃんが玲子を見つけたって言う屋根の上へ行くで! 連れてって」


 玲子の案内で例の屋根の上に飛んで移動する。


「オッケー、ここやな。よし、ほんならな、まだけっこう何日もかかると思うけど頑張ってここで待てるな?」


 玲子はゆっくりコクリと頷いたが、どこか不安そうな目でサダを見つめていた。


 サダが玲子の両肩を掴み勇気づける。

「大丈夫や! スグとちゃうけど、本当の千造おじちゃんがいつか必ずここへ戻ってきて、玲子を見つけてくれるから! そしたら、お父さんとお母さんの事も助けてくれるハズや」


「う、うん」

 今度は勇気を振り絞り玲子がコクリと頷いたように見えた。


 閻魔女王様が説明してくれはった計画やと、この世で罪を犯した人々を生きてる内に閻魔法廷にかけ、刑罰を与えて魂を浄化させてから現世に戻すって言っとったさかいな。


「あと、ええか、今日ワイと話した事も、ワイの事も、絶対内緒や。誰にも言うたらアカン。分かったか?」


「わかった!」


「ほしたら、天使さんが来るまえにワイは帰るな。でも、毎日覗きに来るさか。あ、せやけど今度おうても知らんフリやで。ほなな!」


「わかった! がんばる!」


  サダが屋根から飛んで去っていく。


 玲子は小さくバイバイをしながら、遠ざかるサダをいつまでも見送っていた。



□□□ サダの記憶のシェア おわり □□□



「……とまぁ、こんな具合でワイと玲子は別れたんですわ。もちろんその後も毎日、様子は見に行ってましたんやで。せやけど、もう次の日から女神の姉さんが来て一緒に居てはったんで、ワテは遠くから見守ってただけなんですけど」


「……そ、そうだったんだ……」


「玲子、ゴッツ強い子でしょ?」


「……ああ……強い子だね……」


「千造はん、ワテの事、怒ってはります?」


「え? なんで?」


「勝手なことしたし……。黙ってたし……」


「……えっと……」


 一瞬迷ったが、スグにサダの肩をポンと叩いて言った。

「いや、超ファインプレーっしょ!」


「え? ほ、ほんまでっかー!?」


 そしてサダにがっつりハグした。

「ありがとう! ありがとう! マジ、ありがとう!」


「ちょっと千造さん、なんかコソバイわ〜!」


「ハハハハ——」


 ——ガチャ——

 そこに、ニーナとゲツが帰ってきた。


 そして俺たちを見るなり、二人揃って言い放つ。

「「わ、キっモっ!」」


「「——え……?」」


 あ!

 俺はすっかり忘れていた。


 今、俺の死体ボディと霊魂ボディが二人で仲良くハグハグしてしまっている状況だという事を……。



 〜 エピローグ終わり 怨霊幼女編 完 〜



————————————————

死に損ないの世なおし 〜怨霊幼女編〜 

【閻魔の代理執行人 改変・再構成版】



本編:全22話、エピローグ:全2話、全24話


*蛇足1〜4話も投稿予定です。



…………



※本作品を最後までお読みいただき本当にありがとうございました。


この再構成版はオリジナル版完結後に気になっていた部分について修正してみたものです。


本作品に関しましては、後日、今回と同程度のボリュームで次編を書きたいと思っております。

 その他にも書いてみたい別作品がいくつかありますので、まずはそれらにチャレンジしてみます。


今後共どうぞ宜しくお願い致します。


まこマZ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る