うつ病奮闘記
伊野千景
第1話 きっかけ①
おそらくきっかけはたくさんある。
うつ病は慢性的なストレスによって引き起こされるものだから、今までの人生でかなり長い間ストレスを感じた出来事を挙げるとしたら、2つに絞られる。
1つ目、高校生の時にあった出来事。
高校2年生の16歳。文化祭の前日の夜、家に帰宅してリビングにて父に質問されたことから始まった。
その内容とは、私と同じ高校であり、同じ学年に娘を持つ女性が父と同じ部署らしく、互いの子供の話になったのだが、その同い年の女の子はどんな感じの子なんだ? と。私はその女の子と学年は同じと言えどクラスは違ったのであまり知らなかった。化粧禁止の学校でメイクして登校してきている彼女について怖いと言った。また、私と小学生から学校が一緒の男の子と付き合っているという噂が流れていたからそれを伝えただけだった。
そして文化祭が終わり、翌日の朝休み。私は件の女の子とその友達3人(合計4人)に呼び出された。
その女の子の最初の発言は、
「なんであんな事言ったん?」
だった。
何かそんなにまずいことでも言ったか? と思っていた。だから率直に「何のこと?」と聞いた。するとその女の子は
「男遊びしとるとか」
といったのだ。私は頭の中が真っ白になった。一気に数日前の私の行動が思い出された。とりあえずその場から立ち去りたかったので、テキトーに謝って教室に戻ったのも束の間、廊下から入ってきた所謂陽キャに後ろの席で噂されてしまった。
つまり、この事件の数日前に私が父に言った言葉が、あの女の子の母親に告げ口されてしまったということだ。しかも異常に脚色されており、私が父に言った言葉とはかなりかけ離れていた。これは父が伝えた時に脚色したからか、それとも受け取り手の相手の母親が間違って解釈したかのどちらかになったのだ。
この日のことを私は後日、日記に記している。正直読み返すだけで心が張り裂けそうになる。以下、私の日記から抜粋。ママで載せるため、変換されていなかったり、変な文章になっていたりすることがあります。ご了承を。
『私はそこで崖から落とされたように、がくぜんとした。つまり、クラスの人、それだけでなく、隣のクラスの人まで今回のことを知ってるんじゃないかと。教室では涙をこらえた。歯を食いしばらないと涙がこぼれ落ちそうだった。その日から、他人の、私を見る目がこわくなった。地味でかわいくない、私の方が悪いと皆思うだろう。クラスの皆の事も何もかも、信じることができなくなった。バスで泣いた。大粒の涙はタオルで拭ってもこぼれ落ちて口のあたりまでつたい、私に塩っぽさを感じさせた。
当然、親にも話した。あったこと全て。頭が痛くなっても泣いて、おえつでしゃべれない状態になるまで。明日学校に行けば、皆が私を白い目で見るだろうという想像に耐えられなかった。(中略)次の日からも学校に行ったが、本当に他の人の目を見るのが嫌で、4人を避け続けた。目を合わせて話すことができなくなった。場違いだと痛感した。悲しみと怒りでぐちゃぐちゃになって、授業を受ける場合ではなかった。でも涙は落とさなかった。友人にこのことを話した。私が4人のことを嫌だと言いすぎて「もうやめといたら」と言われた。悲しかった。誰も私に本気でつらかったねと言ってくれなかった。先生にも話さずに毎日学校に行った。胃がおかしくなって、食欲が急激に無くなった。毎日朝、学校に行くことを考えると胃が痛んでセイロガンを飲んでいた。何度も吐いた。朝に吐くことが多かった。でも学校に行った。黒縁眼鏡をバカにする仕草を目の前でされても、通りすがりに悪口を言われても毎日行った。毎日行ったんだよ。くやしくて、くやしくて、どんなに過去が憎くて、自分が憎くても学校に休まず行った。
ある日の夜は、もうこの事実は高校を卒業するまで続くんだって考えて、絶ぼうして、声をおし殺して泣いた。早く高校を卒業したいって思った。3ヶ月後の修学旅行も楽しめなかった。精神的に不安定なままだったから、民泊の夜に泣いてしまって、皆に迷惑をかけた。ごめんなさい。
日記にもある通り、私は4人を避けてその後の1年半を過ごした。そのストレスはとてつもないものだったのを覚えている。
高校生の頃に戻りたいと思うこともあるが、戻りたいのは高校1年生のとても楽しかった時期だけだ。後はなにも思い出せないくらい辛かった。
これは私が悪かったのだろうか。そんなことをずっとずっと考えていた。次第に、「私が悪かったんだ。私が父親にあるなことを言わなければよかったんだ」と自分を責めるようになっていった。なぜ私があんな肩身の狭い思いをして学生生活を送らなければならなかったのが、なぜ臆病にして生きていなければならなかったのかと、ずっと考えた。
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