糸の形
◯qb2高校に通うようになってから1か月。
結梨は更に明るくなっていた。
今日も、楽しそうに笑顔を見せている。
「いらっしゃいませー」
「お化け屋敷どうですかー?」
「たこ焼き無料券ありますよー」
大学内は、どこもザワザワとしていてまさにお祭りの気配だ。
さくらの通う大学では、2日間に渡り、文化祭が開催される。
今日は、2日目で結梨と紗也、司が遊びに来ていた。
「さくら!」
「結城」
結梨たちと校内を歩いていると、結城に声をかけられた。
「どうしたの?園田先輩に呼ばれてなかったっけ?」
「終わったよ。さくらを探してた」
「レポートのこと?」
「ううん、一緒に回れないかと思ったけど先約があったんだな」
そう言いながら、結城が司に目を向ける。
どうやら、司を彼氏だと誤解しているらしい。
「司は彼氏じゃないよ、従兄弟なの」
「そうなんだ?身内と一緒に回る方が楽しいよな。俺、やっぱり山本たちと回るよ」
「え?私は別にー」
さくらが言い終わる前に、結城が歩き出した。
(…ひどいこと、しちゃったかな)
「お姉ちゃん、さっきの人が結城さん?」
「うん、そうだよ。よく一緒課題してるんだ」
結梨に聞かれて、軽く答える。
いい友達だと思っているけれど、向こうは違うのだろうか。
(難しいな)
お化け屋敷をやっている教室に差し掛かった時、角を曲がって来た少女とぶつかりそうになった。
「あ、ごめんさない。大丈夫ですか?」
「私もごめんなさい。…さくらちゃん?」
「え?」
名前を呼ばれて少女を見ると、どこか見覚えがあった。
結梨の友達だろうか。
「…未緒!」
「お久しぶりです、さくらちゃん」
「本当に、久しぶりだね。引っ越してから会わなかったけど近くに住んでるの?」
「ここからバスで15分ほど行ったところに住んでます」
「割と近いのね。今日は、結梨に誘われて来たの?」
「はい!さくらちゃんの通ってる大学の文化祭があると聞いたので」
ニコニコ笑う未緒は、以前会った時と少しも変わっていなかった。
(相変わらず、可愛いわね)
「未緒も一緒に回りましょうか。どこ行きたい?」
「いいの?ありがとう、さくらちゃん」
未緒も入れた5人で文化祭を回った。
「どこ行きたい?」
「お腹すいたから、ご飯食べたいな」
「楽しかったなあ。皆、今日はありがとう」
出し物にたこ焼き、サークルが出している屋台など色々見て回ってとても楽しかった。
(こんなに楽しかったの久しぶりかも)
大学を出て、バス停に向かいながらしみじみ思う。
「未緒、来てくれてありがとう。会えて嬉しかったよ」
「私も楽しかった!さくらちゃん、ゆうちゃんもまたね」
手を振りながら未緒がバスに乗り込んでいく。
バスが遠ざかって行くのを見送ってから、帰路に着く。
「未緒、元気そうだったね」
「そうでしょ?前に会った時も変わらず、可愛かったんだよ」
「うん、そう思うよ」
嬉しそうに笑う、結梨を見てから、紗也と司を振り返った。
「2人も来てくれてありがとう」
「ううん。私も楽しかったし!さくらちゃんの、通う大学が見られて良かったよ」
「それは良かった」
3人とも満足そうに笑っていた。
(この子たちと文化祭を回れてよかったな)
結城には悪いけれど、結梨たちと未緒と回れて楽しかった。
友達と回るのとはまた違う楽しさがあったのだ。
「不思議だね。人との出会いってまるで、糸みたい」
「運命の赤い糸みたいに?小指に結ばれている、引き寄せられるってこと?」
「うん。そうだね、赤い糸とは違うけど。…出会うべくして出会う。意味のない出会いなんてない、みたいな」
「…意味なく、出会う人はいないんだね。自分を導いてくれる人、助けを求めている人、支えてくれる人」
沈黙を貫く結梨と司の間で、紗也が小さくささやいた。
さくらは、軽く頷く。
「うん、うんそうだよ。今日、未緒と会えたのも、きっと意味があるの。…多分、結梨に関係しているはず」
「え?私?」
「そう。イトも白夜さんも、未緒も、紗也たちも結梨を支えてくれてるじゃない」
結梨はピンとこないらしく、首を傾げていた。
「俺、言っただろ」
司が結梨の肩に手をかけて、ゆっくりと言う。
「白猫は、いい人を引き寄せるんだって。イトも、白猫だろ?だから、白夜さんに出会って未緒ちゃんとも再会できたんだ。…さくらさんが言いたいことは、そういうことだよ。イトが来てから、結梨は明るくなった。それはきっと、彼らと出会えたおかげだ」
「そうね、私もそう思うわ」
さくらも、結梨の反対の肩に手をかけて笑う。
白猫がいい人を引き寄せると言うのなら、結梨は誰かを明るくすることができる。
その一生懸命な姿に、心を動かされるのだ。
(私も、そう思ってるけど、結梨は自覚がないのよね)
「そうだよ!赤い糸とはまた違う色の糸が、私たちに付いてて、その糸が巡り巡っていいことを引き寄せてるんだよ!白夜さんは結梨に頑張る勇気をくれたんでしょ?それに、結梨も白夜さんにとって、大切だと思うよ」
紗也が後ろから、結梨に抱きついて言う。
結梨は驚いたように目を丸くしていたけれど、紗也の腕を抱きしめた。
「…うん、うん…ありがとう、皆」
柔らかく笑う結梨の隣で空を見上げた。
ー結梨がずっと笑っていますように。
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